植物園の役割は まず第一に「生きた植物と標本や図書資料の収集」である。
そして「植物学の研究と教育」が続き、「植物や植物学の知識の普及公開」も行えれば三つの役割がすべて果たせることになる。

小石川植物園は 1887年(明治10年)に東京大学附属となると同時に、一般の来観を認めており、公開という点でも極めて歴史が古い。

予算的な面から 市民サービス第一ではないが、植物に親しんでもらうために公開しているのであるから、休憩施設や 売店 ・トイレ・水飲み場など 必要な設備は供えている。
そして植物園の最大の特徴は、一部を除いては自由に歩け、敷物を敷いて寝そべることができる事にある。 六義園や後楽園のような「観賞庭園」では、整備された芝生には柵があって中には入れず、単に見て廻るだけのお庭に過ぎない。

少ないように見えて 実は色々な所にある休憩スポットを、正門から奥への順に掲載する。 撮影は 特記以外は 2011年4月から5月 にかけて。



後編 ⑥~⑮ は「上の段」。  
まず最初に、休憩施設ではないが ⑯ 「柴田記念館」を取り上げる。
 
ベンチなど の 位置 と 名称
WC3 イチョウのトイレ イロハモミジの並木 本館玄関前のベンチ
展望ベンチ 桜広場 その2 ヒマラヤスギのベンチ
高台の東屋 ツツジ園のベンチ 桜広場 その1
クスノキのベンチ 売 店
黄緑色は 芝生広場


⑯ 柴田記念館
柴田記念館は昔の実験・研究室で、竣工は 1919年(大正8年)。 現在、園内最古の建物である。
本館前のヒマラヤスギを右に折れて、さらに奥まった所にある。

記念館の名前の由来
当時植物園内にあった 東大植物学教室の「柴田桂太教授」を顕彰したもので、館内にあった説明を以下に掲げる。

 柴田桂太先生の ”植物界におけるフラヴォン体の研究” に対して、大正7年(1918年)5月 帝国学士院から恩賜賞が授与された。 先生はその賞金 1,000円に、友人今村繁三氏の寄贈金を合わせて、東京大学に 金5,000円を寄付した。 よって大学は 理学部植物学教室に接したこの地に独立の建物として、24坪の植物生理化学実験室を新築し、大正8年(1919年)9月15日に竣工した。 当時の金額として 5,061円70銭を要したと記録されている。
 爾来、昭和9年(1934年)の植物学教室本郷移転までの15年間、ここで先生およびその門下の研究が行われた。 なお、教室の本郷移転後もこの建物は取毀されず、さらに戦災をも免れて、誰からともなく柴田記念館と呼ばれ、今なお植物園における研究に貢献し続けている。       昭和53年7月 

建物は2005年に改装された。 小石川植物園後援会 の事務局があり、書籍・パンフレットや絵葉書が販売されている。 もちろん入会の受付も。
数は少ないが 参考図書の閲覧も可能である。

記念館は休憩所ではないが、是非立ち寄っていただきたい。 なお、前には2本のベンチがある。




後編 ⑥~⑮ は「上の段」の10番通りに ほぼ沿って点在する。

ベンチなど の 位置 と 名称
WC3 イチョウのトイレ イロハモミジの並木 本館玄関前のベンチ
展望ベンチ 桜広場 その2 ヒマラヤスギのベンチ
高台の東屋 ツツジ園のベンチ 桜広場 その1
クスノキのベンチ 売 店
黄緑色は 芝生広場

⑥ 本館玄関前のベンチ
メインの坂を登っていくと カーブを過ぎて本館が見えてくる。
本館の前を通る時は 園内見学のスタートの時が多いので、つい通り過ぎてしまうが、玄関前に園内で一番お洒落なベンチが用意されている。

その一つはミニサイズの子供用。 左側はテーブル付きで、もちろん雨に濡れることもない。





⑦ ヒマラヤスギのベンチ
玄関の向かい側、ヒマラヤスギの奥に長いベンチが見える。 ほかとは違って ここも屋根付きである。
2011.5.4 無料公開のこの日は大盛況で 8名も座っているが、普段は人が少ない。
2004年に整備された施設で、裏にある作業小屋を補修した時に 一体で新設された。 左手に回り込んで見るまでは、作業小屋には気が付かない。
上の段の「屋根付きベンチ」は、一番奥の東屋まで行かないと無いので、貴重な雨宿り場所である。 
どこにいっても蚊が多いのには変わりがないが・・・・。



⑧ サクラ広場 その1
ソメイヨシノがまとまって植えられている場所で、いくつかベンチもある。
円形の「中央十字路」の北側 ⑪番の方が、芝や草が生えていて座り心地がよいが、花見の時期にはここも混雑する。
魔法瓶持参で野点を楽しむ人が!  客のうち二人は着物姿である。
2011.4.5。 この年は花が遅く、東京では6日に満開宣言が出された。
 

先へ進むと 左手に売店が見えてくる。



⑨ 売 店
もちろん 園内唯一、 飲物の自動販売機もここだけ。 テーブル上部は藤棚となっていて気持ちがよい。 ということは、雨の日は濡れてしまうことになるが、 まあ 雨の日に来る人は少ない。
人気商品は やはり「ソフトクリーム」。 
それから 数量限定で販売している弁当。 これが おいしい!! 

東大生協にも納入している、仕出し・割烹『山喜』製である。
夏の木陰



ベンチなど の 位置 と 名称
展望ベンチ ツツジ園のベンチ イロハモミジの並木
高台の東屋 クスノキのベンチ 桜広場 その2
黄緑色は 芝生広場



⑩ イロハモミジの並木
東京の紅葉はその年の気候によって大きく違い、とても綺麗な時とガッカリする時とがある。                        2010.12.2

     一部にサクラも混ざるが、長さ 約150mのモミジのトンネル。

     新緑ならば、そのきれいさは 毎年 間違いがない。
                                         2011.4.26

     数えてはいないが、背もたれ付きも含めて 10脚 程度のベンチがある。
新緑の後、若い種子の赤い色も美しい。            2011.5.12

四つ葉のクローバーではないが、
三つ葉のイロハを見つければ、
幸せになること 間違いなし。


     これが10番通り最後のベンチ。 
     ツバキ園を過ぎると、一番奥の東屋までベンチは無い。



⑪ サクラ広場 その2
上の段のメイン・ストリート 20番通りの右側は芝生広場となっていて、保育園の遠足 あるいはママ友グループのお弁当は、ここで食べるのが決まり となっている。                         2011.4.7

                                         2011.5.15

    花見時以外は空いているので、木陰を選んでのんびりと・・・。
                                         2011.5.4

    さすがにゴールデンウィークは人出がある。 20番通りの左側は土が多い
    が、サトザクラの多い場所で 最後までお花見ができる。

グッド フレンズ ベンチ
サクラ広場の一画に 2台ある グッドフレンズベンチ。 ミサワホーム・他の寄贈 となっている。 そういう制度があるのなら もっと宣伝して、寄付・寄贈してもらったらよいのに・・。 
海外の植物園ではよく見かけたことがある。 何かの記念や誰かのメモリアルとして名札が張られている。



⑫ ツツジ園のベンチ
花の時期以外は足を踏み入れない ツツジ園。 網の目状の園路の中央に、ひとつだけベンチがある。
20番通りから 30番通り方向を見ている。 右奥に旧養生所の井戸。



⑬ クスノキのベンチ
ツバキ園の中の大楠とともに ツツジ園の先の3本楠は巨大である。
その間に古びたコンクリート製のベンチがある。
設置後相当時間が経っているようで傾いており、座の高さも低い。 寄付を募るなどして、背もたれ付きの座り心地の良いベンチが欲しいものだ。



ベンチなど の 位置 と 名称
高台の東屋 展望ベンチ WC3 イチョウのトイレ
黄緑色は 芝生広場



トイレ その3 イチョウのトイレ
上の段で唯一のトイレ。 精子発見のイチョウの裏にあって見えにくく、サクラ広場から小さな子供がひとりで行くには不安があるので、初めはお母さんが同伴する。 男子の中に 車いす対応の洋式便器がある。
2011.8.4
今年になって 大きなピクトグラフ(トイレのマーク)が立てられた。



⑭ 展望ベンチ
サクラ園付近を過ぎると後は園の奥までベンチなどはない。 20番や30番通りを歩いていくと 次の東屋にはたどり着けるが、このベンチの位置はわかりにい。 
ご覧のような傾斜地にあり、通路の一画だが人通りはほとんどない。
場所は 標識37番から階段を下りた所で、どこにあるのか 一番探しにくいお休み処だが、そこからの眺めは園内随一である。
                                         2011.9.14




⑮ 高台の東屋
カリン林を抜けて 針葉樹林内を 心持ち下っていくと、最後の東屋が見えてくる。
梅林の東屋と違って木造で 座り心地も良いのだが、テーブルがないのが残念だ。


崖の縁に建っているだけあって ここからの眺めもよい。 はるか下に見える日本庭園に下りるには、長い階段となる。


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