トピックス 単心皮 と 多心皮 |
被子植物での心皮と雌しべの関係は? また 混乱しやすい 多心皮と多心皮類の違いを説明する。 |
まずは、心皮とは。 そしてその種類 から。 |
心 皮: | |
心皮はほかの花の構成要素(萼片・花弁・雄しべ)と同様に 葉に由来したものと考えられ、袋状になって雌しべとなる。 | |
雌しべは 子房・花柱・柱頭で構成されるが、植物の進化・分類では 「いくつの心皮でできているか」が重要である。 | |
単心皮:雌しべがひとつの心皮でできている。 | |
多心皮:ひとつの雌しべが複数の心皮でできている。 | |
多心皮の雌しべでは心皮どうしが離れているか、合着しているかで違いがある。 | |
離生心皮:複数の心皮が離れている。 | |
合生心皮:心皮どうしがくっついている。 |
単心皮 |
1本の雌しべが1つの心皮でつくられる場合、単心皮(単心皮性)の雌しべという。『植物用語辞典/清水建美』 |
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サクラの胚珠(種子の元)は一つだが、マメ科では複数あり、縁辺(葉の縁に相当する心皮の腹側)に交互に付く。 | |||||
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複数の単心皮:モクレン科 モクレン属 シナユリノキ | |
![]() 花軸の周りに多数の雌しべが付く | ![]() それぞれは単心皮 |
![]() Liriodendron chinense |
![]() 果実は痩果で大きな翼があり、 果軸を残して(右写真)バラバラに落ちる |
複数の単心皮:バラ科 バラ属 ハマナス | |
![]() 窪んだ花托筒の中に、多数の雌しべ (写真右)種子のように見えるそれぞれが痩果 | ![]() Rosa rugosa |
多心皮 |
1本の雌しべが複数の心皮でつくられる場合を多心皮の雌しべと呼ぶ。『植物用語辞典/清水建美』 | |
心皮の数が少ない場合は、2心皮、5心皮などと 具体的な数をつけて呼ぶ。 |
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離生心皮 |
複数の心皮が合生することなく離れている場合。 | |
心皮が一つしかない場合(単心皮)は、「お互いに離れている」という表現ができないので、離生心皮とは言えない。 | |
5心皮 - 離生心皮:アオイ科 ゴウシュウアオギリ属 パナマツリー | |
![]() 雌花、単花被花で萼のみ | ![]() 心皮が5つあるようには見えない |
![]() Sterculia apetala | ![]() 5心皮が離生し、種子は縁辺につく |
5心皮 - 離生心皮:アオイ科 アオギリ属 アオギリ |
![]() Firmiana simplex |
合生心皮 |
複数の心皮がひとつの雌しべをつくる場合を合生心皮という。子房内に隔壁があれば子房室の数は心皮の数になるし、柱頭が合着しない種もあり、形態は様々である。 |
多心皮 - 合生心皮:ミカン科 カラタチ属 カラタチの花と果実 | |
![]() 花柱と柱頭は ひとつ、子房室は多数 |
![]() Poncirus trifoliata |
多心皮 - 合生心皮:ツバキ科 ツバキ属 肥後つばきの柱頭と幼果 | |
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ツバキ属は通常3室だが、肥後ツバキは4〜5室ある。花柱は5本。 |
多心皮類 |
被子植物の心皮に関しては、 多心皮 → 単心皮、 離生心皮 → 合成心皮 のように進化したといわれている。つまり原始的な種では、多数の心皮が離生していることになる。 しかし、初期のものでも そうでない種はたくさんある。 |
離生心皮のうち、初期に分化した原始的な種群を 特に「多心皮類」と呼ぶ。前述した用語「多心皮」と混同しないように、注意が必要で、『植物の世界/朝日百科』が使っている、木本性多心皮群・草本性多心皮群を使うことにする。 |
木本性多心皮群については、別項で詳述する。 |
多心皮類:モクレン科 モクレン属 シナユリノキ | |
![]() 花軸の周りに多数の単心皮雌しべが付く |
![]() 果実には翼がある |
多心皮類 - 離生心皮:キンポウゲ科 キンポウゲ属 セリバオウレン | |
![]() Coptis japanica cv. dissecta |
![]() まるで風車、クルクルと回りそうだ |
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