子房の位置、 新しい呼称の提言

筑波大学 生命環境学群 生物学類のホームページに、子房の位置のひとつに対して、新しい呼称がつけられている。


植物用語を調べるときには、まず 清水建美氏による『植物用語事典』を開ける。
その III章 が「花」に関する用語で,子房の位置は分類群ごとに一定していて、亜綱から科レベルの分類形質にもなりうる重要な形質とされている。
子房の位置の種類には、
  子房上位、 子房下位、 子房中位、 子房周位
の4つが示されており、これはほかの事典でも同じ。

子房上位: superior ovary。上位子房ともいう。子房がほかの器官(萼・花弁・雄しべ)よりも上にある。

ツバキ科 ツバキ属 ヒゴツバキ、園芸品種
子房中位:花托筒が子房の中位まで合着する。
子房下位: inferior ovary。花托が子房を取り囲んで癒合しており、ほかの花葉よりも子房が下にある。

スイカズラ科 ツクバネウツギ属 栽培品種 ベニバナツクバネウツギ

ここまではよいのだが、上記に倣って「子房周位」を説明すると、「子房が周位にある」となってしまう。
昔から、変な呼び方だと思っていたのだが、筑波大学 生命環境学群 生物学類のホームページに、
  中心位子房 central ovary
という呼称が載っていた。まさに 我が意を得たり、である。
子房中心位

バラ科 サクラ属 エドヒガン
咲き終わって落下した小花。花弁は落ちてしまっている。
この筒を萼筒と呼ぶことがあるが、それは間違いで「花托筒」が正しい。なぜなら、萼の先に花弁や雄蕊が付くことはないため。


バラ科 バラ属 ハマナス
花托が壺状となり、中に多数の雌蕊(子房と花柱)がある。このため、種子のように見えるひとつひとつが果実(痩果)である。



この項の参考文献
『植物用語事典/清水建美』
『BotanyWEB』筑波大学 生命環境系 中山 剛 准教授
小石川植物園の樹木 高橋俊一 五十音順索引へ