ガビアオキ 峨眉青木 
Aucuba chinensis Bentham (1861)
別 名: シナアオキ『園芸植物大事典』
APG分類: ガリア科 Garryaceae
  または アオキ科 Aucubaceae
旧科名 :  ミズキ科 Cornaceae
属 名 : アオキ属 Aucuba Thunb. (1783)
中国名 : 桃叶珊瑚 tao ye shan hu
原産地 : 中国中部・南部、台湾、ベトナム
海抜300〜1,000mの森林内
用 途 :

以前は ビワバアオキ の名がついていたが訂正され、名札も新しくなった。ただし、命名者名が間違っている。

正しくは Benth.(George Bentham)で、1861年に『Flora Hongkongensis』に記載した。


正門を入って少し坂を登った右手、ロウバイが植えられている場所の右奥である。植えられてから20年以上が経ち、木が混んできてしまって目立たず、ほとんど見る人がいない。

樹 形      2007.3.11.
この時点では3m強だった。現在は4m以上に成長している。全部で4本ある。

根元       枝振り 2010.12.25.
アオキ属は以前 ミズキ科に分類されていたので、枝振りがミズキに似ている、としていた。ところが遺伝子分類ではガリア科 あるいは独立してアオキ科としてもよいことになり、ミズキとは関わりが無くなってしまった。
枝振りの写真は下から見上げているので、白っぽい葉裏ばかりが写っている。

葉の様子        2000.3.18.

表 と 裏        2000.3.18.
長さは15〜20cm。葉裏が白い。

雌 花         2007.3.11.
  ↑鋸歯の先端がトゲ状になっている。
日本のアオキの花の色は紫褐色だが、本種は淡い黄色。アオキ属は雌雄異株で、果実が生ることから、雄株もあるはずだ。
 
若葉 と 幼果       2007.4.10.
枝の先端に花が付くので、新芽がその脇から出てくる様子はアオキと同じ。

成長した実  2010.10.17. 色付いた実  2010.12.26.
2010年には理学部による人工授粉の実験が行われ、そのお陰か 多くの実が生った。12月になって ようやく色付いてきた。


 
ガビアオキの 位 置
F15 c ロウバイの奥

名前の由来  ガビアオキ Aucuba chinensis
中国名:桃叶珊瑚 tao ye shan hu
中国では、桃叶(葉)珊瑚はアオキ属やアオキ科の名称にもなっており、本種が中国でのアオキ属の代表種であることがわかる。
「珊瑚」は赤い実に由来することは間違いないが、波打つ鋸歯があり、厚手で大きな葉なのに「桃葉」と付く理由が解らない。なお、「叶」は 「葉」の簡略体。
「珊瑚」がアオキ類を指すわけではなく、〜珊瑚 あるいは珊瑚〜 という組み合わせで、アオキ属を含めた様々な植物や海のサンゴの名称となっている。例えば「草珊瑚」はセンリョウ、「珊瑚櫻」はナス科のフユサンゴ、「珊瑚花」はキツネノマゴ科のサンゴバナ、「珊瑚樹」は、レンプクソウ科ガマズミ属のサンゴジュ、などである。
ガビアオキ:中国四川省峨眉山に産するアオキ の意味
『Flora of China』や『GRIN』によると、四川省以外にも5〜6つの省があげられており、峨眉山が特産地ではなさそうだ。
『園芸植物大事典』の和名は、種小名に基づいて「シナアオキ」となっている。
種小名 chinensis:中国原産の という意味
Aucuba:アオキ 青木 属
1775年に長崎出島の商館医として来日し、江戸へ参府して将軍にも謁見したツュンベリーが命名したもの。
当時の呼び名 アオキバ(青き葉)に基づいているが、意図的にか、あるいは聞き違えたものかはわからないが、「アオキバ aokiba」と「アウクバ aucuba」ではかなり綴りが違う。 
アオキ属はヒマラヤから中国、日本に3〜4種あり、アオキ A. japonica Thunb. は日本固有の種で、中国名も「〜珊瑚」とせずに 「青木」である。

Garrya Douglas ex. Lindl. (1834):ガリア科 ガリア属
APG分類でアオキ属がガリア科に分類され、初めて「ガリア」という名を知った。 
これまでの植物事典を見直してみるとミズキ科の次に並べられている。ガリア科はガリア属の1属のみで 15種が アメリカ西海岸のワシントン州からパナマにかけて生育するそうだ。
ガリア属の一種
Wikipedia より
この写真は恐らく Garrya ellipptica で、尾状に垂れ下がる姿が美しく、欧米では観賞用に栽培されるそうだ。
『朝日百科/植物の世界』
ガリアの属名は、スコットランドの植物学者である D. ダグラス(1798-1834)が、友人である N. Garry にちなんで名付けていたものである。しかしダグラスは1834年に、探検中のハワイで事故のために若くして亡くなってしまい、代わりに リンドレイが ミズキ科としてガリア属を記載した。
David Douglas
Wikipedia より


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