アワブキ  泡吹き
Meliosma myriantha Sieb. & Zucc (1843)
科 名 : アワブキ科 Sabiaceae
属 名 : アワブキ属 Meliosma Blume (1823)
中国名: 泡花樹 pao hua shu
原産地 : 日本 (本州、四国、九州)
朝鮮半島南部、中国
備 考: 2019年秋の大風で倒れてしまい、一部だけが生きながらえている状態で、掲載している写真のほとんどは、今は見ることができない。

分類標本園の西側、立ち入り禁止の柵内に生えているが、枝が園路まで伸びてきているので、花時には甘い香りが漂う。

@:樹 形 高さ 約10m       2011.5.27.
分類標本園の中から 正門方向を見ている。

西方向に倒れた幹      2019.10.8.
大風からおよそ1ヶ月後の様子。この後 伐採処分された。左側の枝が、倒れながらも生き残った部分。本当に 残念・・・。

 2012.4.18                 幹の様子                 2005.7.31
日光植物園
枝振り    2006.9.24.

 芽吹きの様子
初めは上向き    2012.4.13. 葉柄が曲がって、
2004.410.
葉が弓なりになってくる。

枝先に花序が見えている。
開花までには2ヶ月近く
かかる。

2012年が寒かったことが
わかる。
多摩森林科学園         2007.4.15.

展開を完了した葉         2012.4.30.
下から見上げると、薄くてしなやかな葉が透けてきれいである。 アワブキの葉はビワモドキの葉によく似ている。

一年目の枝        2011.5.22.
葉の表面の毛は落ちても、枝の毛は残っている。

 開花まで
甘い香りを嗅ぎたくて、つぼみが大きくなってくると 今日は咲いたか?と見に行くのだが、なかなか開花しない・・・・

新葉の展開とともに小さなつぼみが見えてくるだけに、いっそう長く感じる。
@:立派な花序    2008.5.6. まだまだ黄緑     2011.5.11.
一週間後・・・        2011.5.18.
つぼみが少し大きくなってきた程度。
さらに4日後        2011.5.22.
もうすぐ開花か?
まだ 開かない         2011.5.24.
満 開         2011.5.31.


花の詳細
花弁は5枚だそうだが、外側の3枚は「Y字型」に開き、内側の2枚は極めて細い「線形 」である。雄しべにくっついているのか?
黄緑のが雌しべ。開花前から突き出ている。

2本雄しべは 中央の「入れ物」から、扉が開くように飛び出す。
ほかに3本の不完全な雄しべがあるそうだが、見えない。

若い実         2011.7.5.
あれだけたくさん花が咲くのに、できる実は少ない。これでも、いつもより多いくらいだ。

熟した実   2007.10.6.
直径5ミリ。中は 核(硬い殻)があり、種子はひとつ。

2010.10.8          来年用の芽は毛に覆われた裸芽         2013.12.4
早くから芽が見えていたが、10月からでもあと半年はこの状態で。

黄 葉         2013.12.4.

樹形は決して良くない

 
アワブキの 位 置
.写真@: E11 bd  40番通り 標識42番の先 左側、柵内
A : D7 a  標識34番の先に小山(園の最高地点)があり、
 そこを下りた所右側
D8 b  標識34の西側、斜面の途中で分かりにくい

名前の由来 アワブキ Meliosma myriantha

アワブキ : 泡吹
この枝を火にくべると、小口(切断面) から泡を吹くためで、それだけ、枝の中の樹液が多いということ。
 
種小名 myriantha: 「花の多い」という意味
花序のサイズに対して花数が多いということだが、同じアワブキ属の ヤマビワも 同様に花が多い。
 
Meliosma アワブキ属 :
Meliosma はラテン語の mel (蜂蜜)+osme (臭い)で、アワブキの花に甘い香りがあることに由来している。

属名の通り、アワブキの花の香りはすばらしい! 蜂蜜のようにねっとりとした甘さではなく、さわやかな甘さで、嫌みがない。 5月末の花時に、是非一度 嗅いでみて下さい
 


植物の分類 : APG II 分類による アワブキ の位置
アワブキ科は古い分類ではムクロジ目に分類されていたが、APGでは位置が変わった上に 「アワブキ目」が新設された。それだけ分類が難しかった と言えるだろう。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
以前の分類場所 キンポウゲ目  クロンキストの分類
 キンポウゲ科、アワブキ科、メギ科、ツヅラフジ科、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
アワブキ目  アワブキ科
アワブキ科  アワブキ属、アオカズラ属、Ophiocaryon属
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
以前の分類場所 ムクロジ目  エングラーの分類
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
「アオカズラ属は花粉を持つ雄しべが5本あってほかの2属とは異なることから、Sabiaceae をアオカズラ科とし、ほかの2属を Meliosmaceaeアワブキ科とする考えもある。」
『Mabberley's Plant-Book 3rd edition』/ D. J. Mabberley

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