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科 名: | ツバキ科 Theaceae、チャノキ連 | |||
属 名: | ツバキ属 Camellia Linn. | |||
異 名: | Camellia chrysantha | |||
中国名: | 金花茶 jin hua cha | |||
原産地: | 中国、ベトナム | |||
用 途: | 観賞用。 | |||
トップの写真は 名古屋市 東山植物園 温室 |
キンカチャと言えば クリサンサ。1965年に発表されたもので、黄花のツバキとして有名になった。それがなぜ、異名になってしまったのだろうか? 後半の「命名物語」で考察する。 |
キンカチャの特徴 | |
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ツバキ属では珍しい 黄色の花 春と秋に伸長する 『APG 原色樹木大図鑑/北隆館』 (自生地での生態だと思われる。小石川での春の伸びは無い。) 秋には頂芽だけでなく、複数の側枝の伸びもある グランサムツバキと 「節」レベルで同じグループ: ツバキ属、原始ツバキ亜属、Archecamellia 節 |
.2021.12.2 樹 形 | |
メインスロープを登り始めてすぐのクランクを過ぎた左側。スダジイの大木の下の、陽がほとんど当たらない場所に植えられている。高さ 約 2.4m。幹の太さは 二股の少し下で 3cm。 |
蕾 2021.12.2. | 蕾 2007.1.6. |
東山植物園 温室。すでに咲いているものもあった |
花のつく位置: 秋に伸びた枝のほか、旧年枝にもついているので、着花位置は一定していないようだ。 芽鱗の腋につくグランサムツバキと「節」レベルで同じであり、右写真のように一か所に2個つくこともあるため、頂芽あるいは側芽の芽鱗の腋につくと考えられる。 |
成長した蕾 2023.3.9. |
年によって、あるいは蕾それぞれで成長の違いはあるだろうが、前掲左の2021年12月からは約3カ月後。蕾は楕円形に成長しているが、まだ開花していなかった。 花柄に張り付く苞葉は先になるほど大きくなるが、5個の萼片は楕円形でサイズも異なり、苞葉とは明確に区別できる。 |
花は一見 葉腋についているように見えるが、前記「花のつく位置」を念頭において基部をよく見ると、小さな腋芽らしきものが見てとれる。 |
左右の写真は同じ葉腋を左右から撮ったもの。 腋芽が小さいことと、花柄が成長して太くなったために、まるで葉腋から伸び出したように見えるものと考えられる。 |
参考:グランサムツバキ | |
2022.8.18 |
2018.10.25 |
頂芽の第1芽鱗の腋につく、グランサムツバキの蕾。 |
花の構成 2023.3.14. |
多数の雄しべ 2023.3.14. |
ようやく 小石川での開花の写真を撮った。花弁は9~11枚で、外側の花弁は艶のある小さな円形(半球状)のものから、順次大きくなる。内側の5個の花弁は、ほぼ同じ大きさで外側よりも薄手。周辺は波打って水平に反り返る。 |
落 花 2023.3.30. | |
花弁や雄しべは基部で合着しており、一体で落下する。 落ちてから かなり時間が経っているようだ。 |
幼果? 2023.4.13. |
結実して種子ができるかと期待したが、まもなく全て脱落してしまった。 |
2023年7月1日現在、新梢の伸びは見られない。 |
.2022.9.1 表 と 裏 | 頂芽 と 側芽 |
左:大きな葉は18cmにもなる。葉柄は短い。 右:秋に伸び始めた頂芽と側芽。 |
芽吹き | 大きな節間の伸び |
共に 2022.10.23 |
小さかった芽鱗が伸び出すと長大な低出葉が現れる。その節間が大きいのは、ツバキ類の特徴である。。 |
.2022.10.23 新 葉 2021.12.2. | |
秋の伸びの出始めは濃い銅色。長楕円形の葉は両面とも毛が無く、特に表面はつやがある。葉脈が凹んで「リーフパイ」のようになり、暗い場所では反射光が真っ白になって凸凹が目立つ。 |
キンカチャの 位 置 |
E 14 cd | ● | メインスロープ左側、植え込み内 |
名前の由来 キンカチャ Camellia petelotii | |
キンカチャ 金花茶:黄色の花が咲くチャノキ | |
中国名の音読み。最初の命名時ではなく、(二度目に)発見された旧広西省での地方名だった。 | |
それまで ツバキ科で黄色系の花が無かったため、戦後20年も経った 1965年に発表されたときには、大変な話題となった。ほかにも近縁種が数種発見され、一時「キンカチャ節(セツ)」が設けられたが、現在は「原始ツバキ亜属内の Archecamellia 節」に移された。グランサムツバキと同じグループである。 | |
属名 Camellia:人名による | ||
G. J. Kamel | ||
Georg Joseph Kamel (1661-1706)を顕彰したもの。 カメルは現在のチェコ生まれの宣教師、植物学者。イエズス会からマリアナ諸島やフィリピンに派遣され、植物や鳥類の記録を主にイギリスに送った。 |
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Wikipedia より | ||
命名者は カメル没年の翌年に生まれた リンネ (1707- 1778) で、ケンペルが Tsubaki としていたものを、 Camellia
として『植物の属』(1735)に記載した。 ただし、本来そのまま使うべきである人名(固有名詞)の頭文字 「K」 を、「C」 にしてしまったのは問題である。 これは、ラテン語では K で始まる言葉がほとんど無かったためかもしれない。 |
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命名規約上有効な属名となるのは、『植物の種』(1753) に同じくケンペルの報告をもとに記載した、C. japonica ツバキ属 ヤブツバキ 1種 である。 | ||
種小名 petelotii:人名による | |
本種の最初の命名者 Elmer Drew Merrill (1876-1956) の元に、ベトナムから大量の植物標本を送っていた、昆虫学者の
A. Petelot 博士を顕彰したもの。 Dr. A. Petelot についての詳細は不明。詳しくは、以下の「命名物語」で。 |
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旧種小名 chrysantha:黄花の、黄金色花の | |
花の色による。 |
キンカチャの 命名物語 |
Camellia petelotii ← Camellia chrysantha |
特にAPG分類になってから、科名や属名が変更されることがよくあるが、これまで使われていた種小名が変わってしまうとは、どんな経緯があったのだろうか? |
は正名、 | は異名 | ||
内は 推定事項 | |||
図版は、Biodiversity Heritage Library より |
年 | 学 名 | 命名者 | 属名・備考 など | ||||||
① | 1924 | Thea petelotii | メリル | 本種に対する最初の命名 | |||||
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② | 1949 | Camellia petelotii | シーリー | 現在の正名 | |||||
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年 | 学 名 | 命名者 | 属名・備考 など | ||||||
③ | 1965 | Teopsis chrysantha | フー | 本種の異名 | |||||
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④ | 1975 | Camellia chrysantha | 津山 尚 | 本種の異名 | |||||
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本種ではないかと推定した ①のタイプ標本と、③との DNA判定などを行い、今回の新事実を見つけ出した人物は誰なのか?学会では報告があっただろうが、一般人にはわからない。 その功績がわかるように、名前を出す方策を考える必要があるのではないか? |
参考までに: 筆者が参考にしているGRINに登録されている「~金花茶」は、本種を含めて4種のみである。 C. chrysanthoides (1979) 薄葉金花茶 C. fascicularis (1991) 雲南金花茶 C. petelotii var. microcarpa (1993) 小果金花茶 |
アメリカ・イギリス・中国 の多くの組織によって管理されているデータベース『Flora of China』ではもっと多く、上記のほかに下記の7種があり、さらに
多くの変種も載っている。 C. euphlebia(1949) 显脉金花茶、 小石川植物園 : オオバキンカチャ C. flavida (1981) 淡黄金花茶 C. huana (1993) 貴州金花茶 C. impressinervis (1979) 凹脉金花茶 C. indochinensis (1939) 檸檬金花茶 C. micrantha (1988) 小花金花茶 C. pingguoensis (1980) 平果金花茶 |
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