ヒメサザンカ 姫山茶花
Camellia lutchuensis T. Ito (1899)
科 名: ツバキ科 Theaceae、チャノキ連
属 名: ツバキ属 Camellia、後生ツバキ亜属
節 名: ヒメサザンカ節 Theopsis
原産地: 沖縄、中国 広西壮族自治区、香港、台湾
中国名: 台湾連蕊茶 tai wan lian rui cha
用 途: ツバキ科の中では最も香りが良いので、交配種作成の親として使われる。
『園芸植物大事典』より
タイトルが水色の写真は、10年以上前の撮影(過去の様子)であることを示す。


本種は ツバキ園北側に植えられている。10番通り奥の右側にもあったが、枯れてしまったようだ。



① 樹 形        2024.9.8.
ツバキ園北側入口を入った目の前。大きくなったために剪定されたようだ。左はアッサムチャ、右はヤナギバサザンカ。
① 横から      2011.11.15.
ツバキ園の中に入って振り返ったところ。左側の植え込み内に「精子発見のイチョウ」がある。

② 樹 形    2014.4.10.
通路側に傾いてしまっていたため、はみ出した枝は切られていた。2022年の夏までは元気だったのだが、枯れたためか、今は根本からバッサリ切られてしまっている。
② の幹     2014.4.10.
今はもう無くなった幹の様子。この時の太さは 約6cm。
② の花       2014.4.10.
花は多くの頂芽・腋芽の芽鱗の腋につく。芽が伸び出しているので春の伸びはあるはずだが、写真がない。
葉          2022.8.23
葉のサイズは極めて小さく、3~4cm。乗せてある茶色い葉はサザンカで 長さ約7cm。
新梢の伸び     2024.9.8.
今年の2回目の伸びなのかどうか、観察不足ではっきりしない。
新葉の色は赤い。
枝の毛         2024.9.8.
前回の伸びの枝にも長毛が残っている。
蕾         2024.10.13.
ツバキ園の個体で、蕾の数は極 少ない。大きさはまだ5mmほど。附近の芽は伸びていない。
果 実       2019.10.8.
果実の数も極めて少ない。
紅葉 ?    2011.1.5.
赤い葉がそのまま残って、全体が赤く見えることがある。


 
ヒメサザンカ の 位 置
B9d ツバキ園 北側入口の目の前
B5ab 10番通り奥の右側。枯死か?、伐採された


名前の由来 ヒメサザンカ Camellia lutchuensis
 和名:ヒメサザンカ
葉・花・実 ともに小さいことから。
ただし、後生ツバキ亜属に共通した特徴である。
 種小名 lutchuensis: 琉球の
命名者 伊藤篤太郎(1868-1944) は鹿児島で教職についていた時に、当時の琉球の植物調査を行った。その時に採取した本種を、『東京帝国大学理学部紀要』第12巻 (1899) に東大松村任二教授と共に寄稿した「Tentamen Florae Lutchuensis 琉球植物の試み」332ページに新種として記載したもの。
注) tentamen = temptamen 試験、試み、誘惑
タイトルページ の一部
論文のタイトルからして「Lutchuensis」である。
本種の記載部分

以下 略
6種を記載したツバキ属の中で、唯一新種として命名したもの。
同書の別ページに
 L Û T C H Û
と記されている部分がある。

不明の種の採集地を「りゅうきゅう」 としたもので、これを形容詞化したものが「lutchuensis」である。
Kew のデータベース『INDEX KEWENSIS Ver.2.0』で調べてみると、lutchuensislutchuense の種小名はいくつもあるが、ほかはすべて1900年代の命名で、本種が つまり伊藤の命名が最初のようだ。
なお 伊藤は同書でもう一種、Euonymus lutchuensis
ニシキギ科 リュウキュウマユミ を記載している。
 中国名:台湾連蕊茶 tai wan lian rui cha
Flola of China では 「台湾の連蕊茶」としている。
「連蕊茶」 は 雄しべが合着しているチャの意味で、多くのツバキ類の特徴だが、中国では C.cuspidata を指す。
 属名 Camellia:人名による
キンカチャの「名前の由来」の項を参照のこと。

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