キンギョバツバキ 金魚葉椿
Camellia japonica 'Apucaeformis'
科 名 : ツバキ科 Theaceae Mirb. nom. cons.
属 名 : ツバキ属 Camellia Linn. ( 1735 )
原産地 : 園芸品種 または 栽培品種
基になった種(しゅ)はヤブツバキ。
用 途 :
 
観賞用
江戸時代から栽培されているという。
園芸品種名 apucae の意味は不明。


10番通り もみじのトンネルを抜けた右手に「ツバキ園」がある。 
ロープが張られているが一部が開いていて、自由にはいることができる。



多くの品種やサザンカ類、チャなどが植えられているので、キンギョバツバキを探し出すのは大変かも知れないが、一見の価値がある。

樹形
高さは 3m弱。 木が混んでいるので どうしても細長くなる。
園路のすぐ近くだが、かなり近付いても金魚の葉を見つけにくい。

3種類の 葉の形
このツバキは、通常の葉の形以外に、2種類の突然変異の葉を持っている。
右側が 「琉金」や「出目金」などの 尾ヒレ が付いて、金魚そのものの形。
左側には、先端が分かれて さかなの尾ビレのように変化した葉。

金魚葉の表側


中央脈が 葉の途中で突き抜け、その先に尾鰭がぶら下がる。

 
側面


もう一つのタイプは、中央脈が先端部が分かれるもので、3本が多い。
2本や 3本以上のこともあり、この葉の割合は約4割。








3本










4本




3本






2本





7本

花は極めて平凡な ぼやけた赤色である。
ヤブツバキの形に似ているが、色がうすく、良く開き 見栄えはしない。

花はともかく、葉は一年中茂っていますので、是非一度 ご覧ください。

 
キンギョバツバキ の 位 置
C10 a 10番通り右、 ツバキ園内

名前の由来 キンギョバツバキ

キンギョバツバキ : 金魚葉椿
葉の形が金魚にそっくりのため。
ツバキ : 
常緑で厚手の葉が光沢がある所から、「ツヤハキ(艶葉木)」あるいは「ツヤバキ」が短縮されたもの。
古語は「ツバ」で、同じく光沢があるさまをいう。
Camellia 属 : 人名による
17世紀後半 チェコに生まれ、フィリピンで宣教活動と動植物の研究を行った Georg J. Kamel (1661-1706)を顕彰したものであるが、リンネは頭文字の K を C としている。 ラテン語では K を使うことがほとんどないためであろう。
ツバキ科 Theaceae : 
ツバキ科の基準属は Camellia属であるが、科名は ツバキ属の チャ 茶 tcha から生じた thea が保留名として使われている。
保留名となった経緯については チャ の項を参照。
中国ではツバキ属は 山茶属 あるいは茶属である。
「椿」の字は 国字(和製漢字)であり、中国では、
   香椿 : センダン科 チャンチン
   臭椿 : ニガキ科 シンジュ・ニワウルシ
に使われる。

 参 考

Camellia japonica ツバキ を命名したリンネは、カジノキと同じように ケンペルの 『廻国奇観』 (原題 Amoenitates Exoticae)を参考にしている。(下図)

カジノキのケースと違うのは、種小名に廻国奇観での名称 「椿 tsubaki」は使わずに、japonica としたことである。
「ツバキ」が一般名 という事を知っていたのだろうか。




植物の分類 APG II 分類による チャ の位置

ツバキ科は 雄しべが合着して円心状なる特徴から、クロンキストの分類では 比較的早くに分化したビワモドキ亜綱のツバキ目として位置付けられていたが、APG分類では、キク目群という 遅くに分化した位置となった。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所  ツバキ目  フタバガキ科、ツバキ科、マタタビ科、オトギリソウ科、など
ツバキ科  モッコク属、ヒサカキ属、サカキ属、ナツツバキ属、ツバキ属、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、サカキ科、カキノキ科、ツツジ科、など
ツバキ科  ツバキ属、タイワンツバキ属、ヒサカキサザンカ属、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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