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科 名: | ツバキ科 Theaceae、チャノキ連 | ||
属 名: | ツバキ属 Camellia、ツバキ亜属 | |||
別 名: | ヒマラヤサザンカ | |||
中国名: | 落瓣油茶 luo bàn you cha | |||
原産地: | 中国南部、インド、ブータン、ネパール、東南アジア | |||
用 途: | 種子から油を採取 | |||
備 考: | 和名は、『園芸植物大事典』および 筑波植物園目録 2018 による。『原色樹木大図鑑』と「Y-List」はヒマラヤサザンカだが、命名者の記述に従えば、ネパールサザンカの方がふさわしい。 |
初めから分類の話になってしまうが、本種は ツバキ亜属の トガリバサザンカ Paracamellia 節で、サザンカが属する サザンカ Oleifera
節ではない。しかし ごく近縁で、サザンカと同様に子房に毛があるのが特徴のひとつであるため、和名に「サザンカ」が付くことに問題はないと考える。 |
.2024.9.8 樹 形 | 樹 形 2011.2.3. | |
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.←. | ![]() 高さ2m弱で 開花中。 |
ツバキ園の奥、この右後ろに「精子発見のイチョウ」、左側にトイレがある。 枝折れが何カ所もあって、不格好な形になってしまっている。風の影響は少ない場所なので雪害だろうか。 |
幹 |
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根元附近の径 約6cm。 |
開花の様子 2011.2.3. | |
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花は枝の先だけでなく、様々な部分に多数の蕾がつく(右写真の右側)。1月から咲き始めるが、チャノキは前年のうちから、ヤブツバキは通常2月からなので、特に早いとはいえない。 花弁の数は5枚が多いが、それ以上のこともあるようだ。 |
花は冬芽の芽鱗の腋に | ||
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2012.1.12 | |
小さな芽鱗の基部につくため、写真を撮りにくい。 | ||
子房には毛がある | ||
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柱頭は3裂。右側は花弁が落ちかかった状態。 |
サザンカの葉との比較 2022.8.23. |
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茶色いのがサザンカの落ち葉で 長さ 7cm。本種の葉は、確かに先が尖っているものが多い。サザンカとの違いは、中肋に沿って内側に湾曲していること。また、表面がつや消し気味で波打っておらず、鋸歯の切れ込みも浅い。 |
幼 果 2022.8.25. |
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子房は3室。まだ十分に充実していない。 |
花 芽 2024.9.8. |
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頂芽、腋芽に多くの花芽がつく。複数つくこともある。 |
トガリバサザンカの 位 置 |
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①: | B9 d | ● | 精子発見のイチョウの右、トイレの手前 |
名前の由来 トガリバサザンカ Camellia kissi | |
トガリバサザンカ | |
本種は ツバキ亜属の サザンカが属する サザンカ Oleifera 節に近縁の トガリバサザンカ Paracamellia 節で、サザンカと同様に子房に毛があるのが特徴のひとつであり、その葉の先がサザンカよりも尖っているため。 |
中にはさほど尖っていない葉もある。このためか、本種の和名を ヒマラヤサザンカ とする考えがある。 | |
属名 Camellia:人名による | |
キンカチャの「名前の由来」の項を参照のこと。 |
中国名 落瓣油茶 luo bàn you cha: | |
油茶 ユチャ C. oleifera は、その名の通り種子から油がよく取れる。しかしその分類はサザンカと同じ サザンカ Oleifera 節に属し、本種の トガリバサザンカ Paracamellia 節とは少し異なる。 また「落瓣」つまり「花弁が落ちる」の由来・意味するところがわからない。どんな花でも、花弁が落ちるのは当たり前のことである。もし 油茶よりも種子(たね)が落ち易いのなら、「落种」となろう。 |
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種小名 kissi : ネパールの現地名 | |
本種を記載したのは ウォーリッチ。 |
Nathanael Wallich (1786-1854)は オランダ生まれ、インドで働いた植物学者・外科医。 当初はカルカッタ近郊のオランダの入植地で、次にオランダの東インド会社、その後イギリスの東インド会社で働いた。 カルカッタ植物園の初期の発展に関わり、多くの新種を記載し、膨大な数の標本を採取した。その標本はヨーロッパにも送られている。 |
Wallich |
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ウォーリッチが、1818年11月に当時のカルカッタ植物園園長に宛てて、本種について記載・報告したもの (下図 標題部分)。それが、1820年になってAsiatic Society of Bengal の機関誌『Asiatic researches, ~』第13巻 429ページに掲載された。 |
中略![]() |
その文の中でウォーリッチは、さかんにチュンベリーの『日本植物誌』(1784) のサザンカとの類似性と相違点を述べている。 |
そして彼が繰り返し使っている「Napal tree」の種小名を kissi とする理由が明記されている。 |
それは緑の下線部分で、「Newar (ネパール盆地に住むネワール人) が使っている名前 Kissi または Kissi-Soah による」としている。ただし kissi の意味は書かれていない。 |
このことから、別名は ヒマラヤサザンカ よりも、ネパールサザンカ がふさわしいと考える。 | |
いつの時からかこの Kissi が人名と誤解されて、命名規約の人名の記述方法に倣って kissii とされてしまった。 以下の事典類で誤用されている。 |
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『園芸植物大事典』、『原色樹木大図鑑』、「YList」 「Flora of China」 |
小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ |