シラハトツバキ 白鳩椿
Camellia fraterna Hance (1862)
科 名: ツバキ科 Theaceae、チャノキ連
属 名: ツバキ属 Camellia、後生ツバキ亜属
原産地: 中国中部、安徽省・浙江省・福建省・河南省・江西省・江蘇省 など
中国名: 毛花連蕊茶 mao hua lian rui cha
用 途: 矮性ツバキを作出するために栽培されるという。
備 考: 本種はヤブツバキなどが属す ツバキ亜属とは異なる、後生ツバキ亜属に属す。


植栽場所        2022.3.3. 樹 形  2022.10.27.
左:メインスロープの最初のクランクを過ぎた左側。
こんもりと繁ったヒサカキサザンカの陰に隠れている
右:道から離れた場所ではないので、近づけばすぐにわかる。
樹 形    2001.3.4. 現在の樹形   2024.3.7.
左:20年以上前の姿。植え込みの中に入って、奥からメイン通路方向を見ている。この時は陽が差し込んでいた。右隣がヒサカキサザンカ(別掲)。
右写真:撮影方向が90度異なる。左側がメインスロープ。
奥のヒサカキサザンカが太く成長しているのに較べると、本種はほとんど変わらなく見える。フラッシュ使用。
幹     2024.3.7.
幹の太さは、二叉に分かれた上部で 約5cm。
葉               2022.8.25.
枝は細く、葉は小さい。長さは大きいもので5cm程度。
花の様子        2001.3.4.
頂芽や多くの腋芽に花がつく。ひとつの芽にふたつつくこともある。
花        2001.3.4.


 
シラハトツバキの 位 置
E14 d メインスロープ左側、植え込み内


名前の由来 シラハトツバキ Camellia fraterna
 和名:シラハトツバキ 白鳩椿
小さな花だが、よく開いた姿を鳩に擬えたものだろう。
2001年の時点では、植物園の名札に和名は書かれていなかった。
 中国名:毛花連蕊茶 mao hua lian rui cha
「連蕊茶」 は カメリア・クスピダタで、本種と同亜属、同じ節である。花弁に毛があるクスピダタのことになるが、本種の花弁が有毛なのかどうかは未確認。
 種小名 fraterna: 親近の
種の特徴を表すべき種小名に「近親の」は不適当だろう。
ハンスはなぜこの名を付けたのか?
Henry Fletcher Hance (1827–1886) はイギリスの外交官。中国各地の副領事、領事を務め、余暇に植物を採取した。
ハンスはフランスの雑誌『Annales des sciences naturelles. Botanique』シリーズ4 第18巻に寄稿した「Plantarum Novarum, potissime Chinensium 主に中国の新植物」218-219ページに記載している。
Hance

当時 ツバキ属は Ternstroemiaceae モッコク科に属していた。
本種を 新種 sp. n. として記載。採取地は 福建省・福州のようだ。

219ページに解説があり、
C. caudata、kissi (トガリバサザンカ)、salicifolia (ヤナギバサザンカ)、assimilis (ユカリツバキ)= caudata に似ている。
sed (しかし) 以降にわからない部分があるが、「特に子房に毛がないことで」とあるので、これらとは異なる、ということだろう。
この記載から、ハンスが「近親の」を使ったのは、既知の4種(現在は3種)と似ているため、だと思われる。
頂芽や腋芽につく蕾が2個なので「兄弟の」の意味で名付けた、という説を見かけたが、蕾はひとつのことも多い。
以下は ハンスが似ている、とした種。
参考:トガリバサザンカ C. kissi 、ツバキ亜属
花が小さくて数が多い点は似ているかもしれないが、葉はサイズ・質ともにまったく異なる。
参考:ヤナギバサザンカ C. salicifolia 、後生ツバキ亜属
本種と同じ亜属。花は杯咲き、葉は細長い。
参考:ユカリツバキ C. caudata 、後生ツバキ亜属
葉は これもかなり細長い。

 属名 Camellia:人名による
キンカチャの「名前の由来」の項を参照のこと。

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