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科 名: | ツバキ科 Theaceae、チャノキ連 | |||
属 名: | ツバキ属 Camellia、ツバキ亜属 | |||
別 名: | タイワンサザンカ | |||
異 名: | Thea tenuiflora Hayata (1911) | |||
中国名: | 短柱油茶 duan zhu you cha | |||
原産地: | 中国南部、台湾 | |||
用 途: | 種子から油を採取 |
以前の名札は タイワンサザンカ で、学名は異名の C. tenuiflora だったが、最近新しいものに取り替えられ、学名も正しいものになった。 |
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「筑波植物園目録 2018」および「Y-List」は、以前からシマサザンカだったが、早田文蔵が台湾で観察した種に名付けたものであり、また「シマ」の名は一般に「沖縄や奄美」を想起させるため、筆者は「タイワン」の方がよいと考えていた。 | |
括弧内に別名が併記されているのは、「ほんとうはタイワン」にしたかった」という思いではないだろうか。小石川植物園の名札で別名併記は珍しいことである。 | |
「名前の由来」の項で この経緯を考えてみた。 | |
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本種は ツバキ亜属の トガリバサザンカ Paracamellia 節で、サザンカが属する サザンカ Oleifera 節ではない。しかし ごく近縁で、サザンカと同様に子房に毛があるのが特徴のひとつであるため、和名に「サザンカ」が付くことに問題はない。 |
本種は、下の段、メタセコイア林の手前のツバキが植えられている所と、上の段、ツバキ園の北の端、トイレのすぐ近くの二ヵ所に植えられている。 |
シマサザンカの 位 置 |
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樹 形 ① 2024.8.25. | |
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70番通り側から東方向を見ている。夏は周りも緑一色なので わかりにくい。左隣の木がなくなったせいか、横枝が広がっている。上部は以前からチャンチンモドキの大枝と交錯している。 |
弱っているわけではないのに、地際から何本もの ひこばえが伸びている。 |
.1999.12.11 | 横から 2013.1.27. |
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左:25年ほど前。後ろの太い木は チャンチンモドキ。 右:10年前。横から北方向を見ており、右奥がメタセコイア。 |
樹 形 ② 2024.8.25. | |
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ツバキ園の北の端、トイレ(白い建物)の手前。 左:カラタチ(左) と カメリア・クスピダータ C. cuspidata に挟まれて、内部では枯れてしまった枝も多い。幹は太く、根元附近で 約11cm。 |
2002.1.26. |
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20年以上前の姿。前掲写真とは違って東の空き地方向を見ており、手前にカラタチが無い。ツバキ園にカラタチがあることを不思議に思っていたが、この後に生えた実生なのか? |
花のつく位置 2019.1.25. |
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腋芽についた例。第一芽鱗の腋についている。 |
.2019.1.25 | 2011.11.10. |
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左:腋芽の芽鱗の腋に2花がついた例。 右:頂芽についた例。花径は小さく、25mm程度。 |
花後に伸び出した新梢 2011.3.29. |
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葉のサイズ 2024.8.25. |
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近くのサザンカの下で拾った葉を乗せて。葉のサイズも小さく、3~4cm程度。 |
シマサザンカの葉を陽に透かす | ツバキ(園芸品種) |
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サザンカ類 か ツバキ類 かを判別する方法のひとつは、葉を陽にかざしてみること。ツバキは葉脈が透けて黄緑色に見えるが、サザンカはそれがない。 ただし、ツバキが必ず透けるとは限らないようだ。 |
幼 果 2024.8.25. |
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子房の縫合線は ははっきりしない。 伸びた頂枝と側枝の色は早くも濃い茶色となっている。 |
シマサザンカの 位 置 |
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①: | F14c | ● | 70番通りの右手、グランサムツバキの手前 |
②: | B9 d | ● | 精子発見のイチョウの右、トイレの手前 |
名前の由来 シマサザンカ Camellia brevistyla | |
シマサザンカ | |
初めにも書いたように、以前の名札は タイワンサザンカ で、学名も異名の C. tenuiflora だった。本種と異名の元の名前はともに早田文蔵が名付けたもので、 Thea brevistyla (1908) Thea tenuiflora (1911) これらは 1916年にツバキ属に分類し直された。 |
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1988年から1990年にかけて刊行された『園芸植物大事典』の「ツバキ属の主要分類」トガリバサザンカ節に、 シマサザンカ C. brevistyla Cohen-Stuart タイワンサザンカ C. tenuiflora Cohen-Stuart の両方が載っている。 |
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すなわち、1990年頃までは両者は別種と考えられていたことになる。 その後に両者が同一種であることが判明し、先取権のある C. brevistyla、和名 シマサザンカが正名となった。 |
和名を タイワンサザンカ にしたくても、brevistyla にはすでに 固有の和名 シマサザンカ が付いていたのである。 | |
別名 タイワンサザンカ:台湾山茶花 | |
前述したように、最近まで別種とされていたと思われる C. tenuiflora の和名である。早田文蔵が、台湾で採取された標本に対して命名したため。 |
C. brevistyla の子房は4室だが、植物園の個体の子房は3室のようなので、以前はこちらの名が使われていたと考えられる。 |
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属名 Camellia:人名による | |
キンカチャの「名前の由来」の項を参照のこと。 |
種小名 brevistyla:短花柱の | |
命名者の早田文蔵の記述に「花柱はごく短い」とある。 それまで知られていた近縁の サザンカ(1784)、ユチャ(1818)などに較べて、花柱が短いことに注目したもの。 |
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右は C. brevistyla を記載した『台湾山岳地帯の植物相 FLORA MONTANA FORMOSAE』(1908) の図の一部。 | |
『命名物語』の①を参照。 | |
中国名 短柱油茶 duan zhu you cha: | |
まさに 種小名と同じである。ただし、これがいつから使われているのかは不明。 |
中国は ユチャ とともに本種の原産地であるため、早田の学名が記載された1908年の はるか以前から使われていた可能性が高い。 |
参考:ユチャ 筑波植物園. |
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シマサザンカ の命名物語 |
は正名、 | は異名、 | ||
図版は主に、Biodiversity Heritage Library より 肖像写真は Wikipedia より |
本種のふたつの種小名 brevistyla(正名) と tenuiflora(異名) は、いずれも 早田文蔵が記載したものを コーエン-ステュアートが訂正し、最終的には両者が同種ということになる、という珍しい経緯をもつ名前である。 |
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年 | 学 名 | 命名者 | 備 考 | ||||||||||
① | 1908 | Thea brevistyla | 早田文蔵 | 異名 本種の元の名 | |||||||||
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年 | 学 名 | 命名者 | 備 考 | ||||||||||
② | 1911 | Thea tenuiflora | 早田文蔵 | 異名 | |||||||||
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年 | 学 名 | 命名者 | 備 考 | ||||||||||
③ | 1916 | Camellia brevistyla | コーエン-ステュアート | 正名 | |||||||||
④ | 1916 | C. tenuiflora | 同 上 | 異名 | |||||||||
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いつ、誰が、そしてどのようにして ① と ② が同一種と判定したのかは不明。 | |||||||||||||
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