コレクション

科 名 : ツバキ科 Theaceae
属 名 : ツバキ属 Camellia Linn. ( 1735 )
ヤブツバキ: Camellia japonica Linn. (1753)

10番通りのツバキ園に行く前に、10番通りのスタート地点に植えられている、三色椿を見よう。

@ : 様々な色の花を付けるツバキ      2011.3.5
作業車の車庫前から 北方向を見ている。 ツバキの木に名札は無い。 白い杭が 「11番」で ツバキ園へのモミジのトンネルが続く。 
赤から白まで 何でもござれ    2014.3.9.


そして、もみじのトンネルを抜けた右手に「ツバキ園」がある。 
ロープが張られているが一部が開いていて、自由にはいることができる。

1月下旬に咲き出すツバキ園だが、3ヶ月遅れても まだ咲かない品種が。



ツバキ園には ツバキの園芸品種、サザンカ(ツバキ属 Camellia sasanqua)の園芸品種、その他のツバキ属の植物がコレクションされている。

名札に学名が付いているものは別に取り上げることにして、ここでは 園芸品種の名前と「葉・つぼみ・花」のリストを掲載する。  スケールは一定していない。

ツバキの園芸品種

名称 葉・つぼみ・花
明石潟
アカシガタ
2011.3.27

直径11cm以上
開花途中は、花弁のサイズが不均等に見える

咲いてしまうと丸い 
阿賀の里
アガノサト

2011.3.27
秋の山
アキノヤマ

2011.3.29

アケボノ

2011.1.29
代表的な「京ツバキ」のひとつ

12月上旬から咲く
東 絞
アズマシボリ

2011.3.27
天の川
アマノガワ

2011.3.27
荒獅子
アラジシ

20011.3.27
淡路島
アワジシマ

2011.3.20
岩根絞
イワネシボリ

2011.3.20
白い部分は少ない方がよい

「江戸ツバキ」の代表的な品種のひとつ
羽 紅
ウコウ

2011.2.3
空 蝉
ウツセミ

2011.3.20
雲龍椿
ウンリュウツバキ

2011.2.8
枝がうねる物を
 「雲龍」と呼ぶ
Emilly Wilson
エミリ・ウィルソン

2011.1.25
近江衣
オウミゴロモ

2011.2.22
乙 女
オトメ

2011.3.27
オランダ紅
オランダベニ

2011.3.20

名称 葉・つぼみ・花
角葉珍山
カクバチンザン

2011.3.20
角葉 といっても、幅が広くて やや反り返っているので、四角く見える
賀茂本阿弥
カモホンアミ

2011.2.22
代表的な「京ツバキ」のひとつ
唐 糸
カライト

2011.3.27
寒陽袋
カンヨウタイ

2011.4.7
Gigantea
ギガンテア

2011.4.9
葉だけではなく、花も大きいのが命名の由来
菊更紗
キクサラサ

2011.1.29
菊 月
キクヅキ

2011.1.25
最初に咲き出したもののひとつ

どうしてこれが
菊月か ?
菊冬至
キクトウジ

20011.2.3
黄覆輪弁天
キフクリンベンテン

2011.3.27
葉の周囲などに
緑の斑入り
君が代
キミガヨ

2011.3.27
京 錦
キョウニシキ

2011.3.1
玉牡丹
ギョクボタン

2011.3.27
玉の名の通り、開くまでは丸い形
金魚葉椿
キンギョバツバキ

2002.3.21
江戸ツバキ

変り葉椿の代表
「金魚椿」とも
銀 竜
ギンリュウ

2011.3.1
葉の一部に斑がはいっている
孔雀椿
クジャクツバキ

2011.3.13
葉と花弁が細長い

枝垂れた様子を孔雀の尾に見立てたものか
熊 坂
クマサカ

2011.4.28
黒 椿
クロツバキ

2011.4.1
最強の黒!

細長い花弁には丸みがある
源氏唐子
ゲンジカラコ

2011.3.27
光 明
コウミョウ

2011.4.9
侘助以外では数少ない一重
古今欄
コキンラン

2011.3.6
赤花も咲く
御所車
ゴショグルマ

2011.4.7
胡蝶侘助
コチョウワビスケ

2011.2.16
花が小さい上に開かない
小紅葉
コモミジ

2011.3.27
花弁に微妙な濃淡がある
崑崙黒
コンロンコク

2011.4.7
ちっとも黒くない

名称 葉・つぼみ・花
盃葉椿
サカズキバツバキ

2011.4.28
凹レンズ状にへこんだ葉に、雨が溜まった。
葉が硬く尖り先端が痛い!
花も盃の型。
桜 鏡
サクラカガミ

2011.2.22
ジャイアンティア

2015.3.22
精子発見イチョウの植込み内

赤い花の方が多い
衆芳唐子
シュウホウカラコ

2011.4.5
春曙光
シュンショッコウ

20011.2.3
昭和侘助
ショウワワビスケ

20011.2.3
代表的な「京ツバキ」のひとつ

11月から咲く
白拍子
シラビョウシ

2011.1.29
白侘助
シロワビスケ
柴田記念館の裏
草紙洗
ソウシアライ

2011.3.29

名称 葉・つぼみ・花
大城冠
ダイジョウカン

2011.2.22
宝 合
タカラアワセ

2011.3.20
Duchess of
Sutherland
ダッチェス・オブ
サザーランド
2011.4.1
玉 垂
タマダレ

2011.3.27
枝が細いために枝垂れる

江戸ツバキ
手向山
タムケヤマ

2011.1.29
このたびは
 幣もとりあへず
  手向山
紅葉の錦
  神のまにまに
    菅原道真
太郎冠者
タロウカジャ

2011.2.23
朝鮮椿
チョウセンツバキ

2011.2.5
月の都
ツキノミヤコ

2011.3.20
 
名称 葉・つぼみ・花
鳴海潟
ナルミガタ

2011.1.25
日本の誉
ニホンノホマレ

2011.1.29
後瀬山
ノチセヤマ

2011.3.27
淡〜い 桃色

『椿花集』(1879)
による江戸五木のひとつ

名称 葉・つぼみ・花
白乙女
ハクオトメ

2011.5.3
少ないつぼみがようやく開花したが虫に食われている

ほかの花ではこんな事はない
白 雁
ハクガン

2011.4.5
白 鶴
ハクツル

2011.3.20
淡いピンク
初 嵐
ハツアラシ

2011.1.29
 京ツバキ
柊葉椿
ヒイラギバツバキ

葉の鋸歯による
2011.1.25
光源氏
ヒカルゲンジ

2011.3.1
「江戸ツバキ」の代表的な品種のひとつ

名前負けか?
評判はいまいち
覆輪一休
フクリンイッキュウ

2011.3.27
絞りは一部だけ
ほとんどは赤花
紅唐子
ベニカラコ

2011.3.8
代表的な「京ツバキ」のひとつ

そうですか?
紅麒麟
ベニキリン

2011.3.27
紅千鳥
ベニチドリ

2011.4.1
紅牡丹
ベニボタン

2011.3.27
紅侘助
ベニワビスケ

2014.3.9
柴田記念館の裏

サイズは小さい
Ben Parker
ベン・パーカー

2011.2.16
精子発見イチョウ
の植込み内にも
ある
卜 伴
ボクハン

2011.3.20
柴田記念館の裏
代表的な京ツバキのひとつ

雄しべの先端が
 小さく白く 花弁化
本所の月
ホンジョノツキ

2011.3.27


名称 葉・つぼみ・花
Mathotiana Rubra
マソチアナ・ルブラ

2011.3.13
精子発見イチョウの植込み内にもある
松 笠
マツカサ

2011.3.13
三浦乙女
ミウラオトメ

2011.3.20
眉間尺
ミケンジャク

赤 2011.3.13
2011.3.29
赤一色が多い
2本ある木の片方は絞りが出る
Mrs. Charles Cobb
ミセス・
チャールズ・コッブ

   2011.3.29
精子発見イチョウの植込み内にもある
Mrs. White Field
ミセス・ホワイト・
フィールド

2011.4.7
わずかに赤線がはいるものが・・

精子発見イチョウの植込み内にもある
峰の雪
ミネノユキ

2011.3.27
藻 汐
モシオ

2011.3.29
江戸椿の名花

『椿花集』(1879)による江戸三木のひとつ


名称 葉・つぼみ・花
雪見車
ユキミグルマ

2011.3.27
江戸ツバキ

『椿花集』(1879)
「三妻」のひとつ
百合椿

2011.3.20
孔雀椿の葉に
よく似ている
百合姫
ユリヒメ

2011.2.22
淀の朝日
ヨドノアサヒ

2011.4.26
雄しべが花弁に変化している様子がわかる

 
ツバキ園 の 位 置
C 13 d 三色 @ : 標識11番
B10 bd 〜 C10 ac 10番通り右、 精子発見のイチョウ横

名前の由来 ツバキ ・ サザンカ

ツバキ : Camellia japonica Linn.
別名 ヤブツバキ。

常緑で厚手の葉が光沢がある所から、「ツヤハキ(艶葉木)」あるいは「ツヤキ」が短縮されたもの。
古語は「ツバ」で、同じく光沢があるさまをいう。

日本で使う漢字「椿」は国字(和製漢字)で、「春に花が咲く木」の意味。
中国では別種で、
   香椿 : センダン科 チャンチン
   臭椿 : ニガキ科 シンジュ(ニワウルシ)
に使われる。

ツバキは中国にも自生し、中国名は「山茶 shan cha」または 紅山茶。 
 
ヤブツバキ             2009.2.21
園内には 鮮やかな赤はむしろ少なく、ピンクがかったものが多い。
品種として シロヤブツバキ がある。
 
サザンカ : Camellia sasanqua Thunb. ex. Murray
日本特産にもかかわらず、ツバキの中国名「山茶」の音 shan cha、あるいは サンサに「花」を付けた 「山茶花 サンサカ」 が転訛した名である。

サンサカ が発音しにくいために、山茶花 を 茶山花 に変えて サザンカとした という説もあるが、発音の変化が先で、文字は後からではないか?

なお、ツバキ、サザンカ、チャ はすべて同じ「ツバキ属」に含まれる。
 
Camellia 属 : 人名による
17世紀後半 チェコに生まれ、フィリピンで宣教活動と動植物の研究を行った Georg J. Kamel (1661-1706)を顕彰したものであるが、リンネは頭文字の K を C としている。 ラテン語では K を使うことがほとんどないためであろう。
 
ツバキ科 Theaceae : 
ツバキ科の基準属は Camellia属であるが、科名は ツバキ属の チャ 茶 tcha から生じた thea が使われている。

中国ではツバキ属は 山茶属 あるいは茶属である。

 参 考

Camellia japonica ツバキ ・ヤブツバキ を命名したリンネは、カジノキと同じようにケンペルの『廻国奇観』 (原題 Amoenitates Exoticae)を参考にしている。

カジノキのケースでは、種小名に廻国奇観に記載されていた名称 papyrifera を採用したが、ツバキでは 「Camellia tsubaki」とせずに、 japonica としたところに違いがある。
「ツバキ」は一般名称でもあり Camellia tsubaki では、日本語としては どんなツバキかが特定できない。 リンネはその事を知っていたのだろうか。


描かれているツバキの花弁に模様があるところから、本種はヤブツバキではなく、園芸品種 だと思われる。


植物の分類 APG II 分類による ツバキ の位置
ツバキ科は 雄しべが合着して円心状なる特徴から、クロンキストの分類では 比較的早くに分化したビワモドキ亜綱のツバキ目として位置付けられていたが、APG分類では、キク目群という 遅くに分化した位置となった。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所  ツバキ目  フタバガキ科、ツバキ科、マタタビ科、オトギリソウ科、など
ツバキ科  モッコク属、ヒサカキ属、サカキ属、ナツツバキ属、ツバキ属、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、サカキ科、カキノキ科、ツツジ科、など
ツバキ科  ツバキ属、タイワンツバキ属、ヒサカキサザンカ属、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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