|
||||
![]() |
科 名: | ウルシ科 Anacardiaceae | ||
基準属 Anacardia はカシューナットノキ | ||||
亜科名: | Spondiadoideae 亜科 | |||
属 名: | チャンチンモドキ属 | |||
中国名: | 南酸棗 nán suán zăo | |||
原産地: | 日本(鹿児島県・熊本県)、台湾、中国南部、東南アジア、インド東北部、ネパール、ブータン | |||
備 考: | 雌雄異株。小石川の3本はいずれも雄株で、トップの写真は雄花序。 1属1種。 |
|
|||||
筑波実験植物園に「雌株」があるので、後半で取りあげる。 |
小石川植物園の雄株 |
崖線の下の60番通りに沿って植えられた3本は、いずれも大木である。成長が早くて、40年で 20mにもなるそうだ。 |
①②は60番通りの左側、③は右側にある。 |
② ①:2本が並び立つ 2013.1.29. |
![]() |
10年以上前の写真なのでずっと大きくなっているはずだが、見た目にはわからない。 |
.2025.2.4 ①②:南から | ②①:北から 2011.1.5. |
![]() |
![]() |
左写真:根元部分は重なっている。奥にメタセコイア林。 高さを測りにくいが、3本とも20m以上ある。 |
③:60番通りの際に生えている 2025.2.16. | |
![]() |
![]() |
南から 60番通り. | 西から |
3本とも 空間のある西側・南側に、側枝を大きく伸ばしている。 |
① ②:幹 2024.11.10. | |
![]() |
左写真:手前が① 右写真:60番通りから見下ろしたところ。 手前が② |
![]() |
左写真:手前 ①の山側に伸びた側枝は、20年以上前にすでに 折れていた。 |
支持根 |
![]() |
傾いている側、大枝が伸びる側の 地際の根の上部が肥大して、倒れないように踏ん張っている。 |
樹 皮 | ||
![]() |
![]() |
樹皮は粗く不規則に縦に裂けて長く残るが、最後には剥げ落ちる。樹皮の深さによって割れ方が異なって、メッシュ状になることもある。赤いところは幹がどんどん生長している部分。 |
若い枝の樹皮 | |
![]() |
![]() |
①の折れた枝の基部から伸び出したもので、皮目が多い。太さは5cm強。夏は日陰になるので成長が悪く、折角伸び出しても枯れるものが多い。 |
冬 芽 2024.11.10. |
![]() |
まだ落葉前 11月の状態。ツタウルシ(ウルシ)属のハゼノキなどには頂芽があるが、本種は明らかに茎頂を脱落している。春には頂側芽が伸びて代伸するが、枝はほぼ直線となる。勢いのある枝では下位の側芽も伸びることが多い。 |
芽吹き 2004.4.3. | 参考:チャンチン 2010.4.22. | |
![]() |
![]() |
和名の由来。芽吹きの様子が チャンチンに似ているため。左写真は、若い枝の頂芽だけが伸び出したもので、すべて栄養枝。 |
開花前 2007.4.29. |
![]() |
遙かかなたで 何百となく芽吹いた新梢。黒く見えるのは花序と蕾のかたまり。 |
雄花序群 2011.5.4. |
![]() |
冬芽は混芽で、低出葉や下位の普通葉の腋に花序がつく。何万という雄花が咲いても雌株がないため果実はできないが、蜜を分泌するそうなので、虫の役には立っていそうだ。 |
花序のつく位置 2012.5.16. |
![]() |
下向きの枝から伸びた新梢。早落性の低出葉の腋から4本、普通葉の腋に2本の円錐花序がついている。花は一斉には開花せず、落花したものとまだ硬い蕾が混在している。 |
雄 花 2014.5.8. | |
![]() |
![]() |
事典によると 萼・花弁ともに5個だが、右写真の萼は基部で合着しているようにも見える。雄しべは10個。径は3~4mm程度。花後は花冠が一体で落ちる。 |
落 花 2012.5.23. |
![]() |
無数の花が落ちる。その大きさをわかりやすく、と思って「ヘビイチゴ」のつもりでその葉と一緒に撮ったのだが、ヘビイチゴやヤブヘビイチゴの葉は三出複葉、オヘビイチゴは五出掌状複葉である。このつる植物の名がわからない。 |
新 緑 2014.5.24. |
![]() |
②①を北から見ている。葉は天空を覆い尽くす。 |
奇数羽状複葉 2024.11.10. | |
![]() |
![]() |
小葉の数は11~13枚、葉の大きさは 約 30cm(もっと少なく小さいものもある)。小葉は大きいもので10cm程度。短い小葉柄があり、縁は波打つことが多い。葉裏は少しだけ白味がかる。 |
筑波植物園の雌株 |
筑波実験植物園の標高は25mで、小石川植物園の上の段と同じだが、緯度が高いためにずっと寒い。本種の自生地は暖帯・亜熱帯なので、その分成長が遅いと考えられる。 |
樹 形 2024.11.19. |
![]() |
入口から続くメタセコイアのプロムナードのすぐ横に植えられている。奥に見えるのが大温室で、ほぼ北方向になる。 |
2011年10月 | 幹 2014.11 | |
![]() |
→ |
![]() |
残念ながら幹のサイズや樹高を測っていない。 根元から伸びたものが、13年間でかなりの太さになっている。 |
奇数羽状複葉 2011.11.8. |
![]() |
ひこばえの葉の中には 11対 23枚の小葉がつくものがあった。 |
開花終了直後 2012.6.2. |
![]() |
雌花は 新梢基部付近の葉腋にひとつずつつく。当時は高いところにしか咲かず、詳細はなし。今なら、下枝にも咲くかも知れない。6月なので ごく小さな幼果である。 |
幼 果 2012.9.1. |
![]() |
結実率は高い。果実と同じくらいの長さの果柄がある。 |
落 果 2024.11.19. |
![]() |
黄変せずに落ちるものもある。表面には褐色のしみがつく。大きさは 高さ25~30mm、径25mm程度。熟すと外果皮はすぐに破れる。 |
石 果 2011.10.9. |
![]() |
筑波の観察セミナーで採取。中果皮は柔らかくベトつく果肉で、洗うと硬い内果皮、面白い形の石果が現れる。 ウルシ科の果実は通常1心皮だが、本種は珍しく5心皮で、別属の根拠となっている(6心皮のことも多い)。 |
内果皮は極めて硬くて裂開は不可能であるため、発芽孔を突き破って発芽するのだろう。撒いてみるべきだった。 |
樹上の果実 2012.2.4. |
![]() |
2月になっても まだ落ちずに残っているものがある。 |
チャンチンモドキの 位 置 |
![]() |
写真①②: | F14 a | ●● | 60番通り メタセコイア林の手前左側 |
写真③: | F13 c | ● | 60番通り 右手に2本、3本共 雄株 |
名前の由来 チャンチンモドキ Choerospondias axillaris |
和名 チャンチンモドキ 香椿擬き : | |
本種、チャンチン とも似たような羽状複葉で、芽吹き時に赤味がかかるところから、「チャンチンに似た」という和名としたもの。 |
チャンチンモドキ | チャンチン | |
![]() |
![]() |
好みにもよるが、チャンチンの方がピンクがかってきれい、と言う人が多い・・・。 | |
← チャンチン 香椿 Toona sinensis : | |
中国の "春の木" は「椿 chūn」ひと文字でセンダン科のチャンチンを指すが、現在では一般に「香椿 xiāng chūn」と標記される。新芽に香りがあり、摘んで料理にも使うとのことだ。 | |
ツバキは日本独自の読みで、和製漢字(国字)である。 | |
中国名 南酸棗 nán suán zăo: | |
酸棗 suán zăo は、クロウメモドキ科の サネブトナツメ Ziziphus jujuba var. spinosa である。 本種の実の形がナツメに似ており、原産地が中国南部であるために名付けられたものだろう。別の言い方をすれば「サネブトナツメモドキ」ということになる。 |
|
種小名 axillaris:腋生の の意味 | |
雌雄共に 花・花序が新梢の腋につくため。 | |
最初の命名者 ウィリアム・ロクスバラ W. Roxburgh (1751-1815) は、本種をウルシ科 Spondias タマゴノキ属とした。タマゴノキ属やウルシ科の植物は一般的に茎頂に花序をつけるが、本種は葉腋につくのを特徴と捉えて種小名としたもの。 | |
属名 Choerospondias:不明 | |
この属名は Choero-spondias で、元になったのが以前分類されていた Spondias ウルシ科タマゴノキ属に、接頭語 choero-を付けたものである。 Spondias は、牧野の『植物學名辞典』によると「一種のスモモの木」とのこと。S. dulcis や S. pinnata は食用となり、その実をプラムに擬えたもののようだ。しかし接頭語の choero の意味がわからない。 |
本種の果実は食用になるようなものではないので、「- モドキ」や「イヌ -」と同じような意味かもしれない。 | ||||
|
小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ |