フ ウ 楓
Liquidambar formosana Hance (1866)
別 名 : タイワンフウ
科 名 : マンサク科 Hamamelidaceae
属 名 : フウ属 Liquidambar Linn. (1737)
英 名 : Formosan gum
原産地 : 中国中南部、台湾
用 途 :



街路樹・公園樹・緑陰樹、建築材


精子発見のイチョウから続くボダイジュ並木の先、ユリノキの近くにフウが3本ある。一本は10番通り寄りで、少し離れている。随分昔には、30番通りの震災記念碑の先にあったはずだが、今はない。

園外で撮った写真も多用して掲載する。

@:ボダイジュ並木の2本 A:10番通りに近い1本
ともに新緑の様子。@では 手前の二本がフウ。本来の樹形はもっと枝が横に張る形だが(高知の写真 参照)、大木に囲まれて日照状態が悪いため、3本とも上ばかりに伸びている。

日本には享保年間(1716〜1735)に伝えられたといい、東京でも街路樹に使われている。

樹形 街路樹
高知市内 渋谷区千駄ヶ谷 外苑西通り
街路樹は剪定された細長い樹形となっている。

枝振り
高尾 多摩森林科学園
事典の記述では、幹は「灰褐色・平滑で横走するしわがある」となっているが、太くなると、下右の写真のように鱗状に割れているものが多い。

昆明の木の幹 幹 と 葉
三つに分かれた葉だが、切れ込みは少ない。

         雄 花    2011.4.5           雌 花    2011.4.7
雌雄異花。左の雄花(雄花序)は上向きに成長している最中で、花弁はなく雄しべだけである。
右の写真で下向きにぶら下がっているのが雌花で、鈎状の柱頭はピンク色。これもたくさんの花が集合している花だが、花弁はない。


葉 と 若い実の様子  昆明植物園
このあと冬になって、葉が枯れてきてもなかなか実は落ちない。
集合果の直径は 2センチ程度。

紅葉の様子 京都植物園
2000年11月11日 2006年11月25日
京都植物園のこの木は大木で、右の写真では右下に二人の人物が写っているのでスケールとなる。フウはよく成長すると、40mにもなるそうだ。寒さに遭わないとこのようにきれいな紅葉にはならないため、東京では難しいようだ。

昆明植物園 7月の様子
中国 昆明植物園にあったフウの並木道。中国南部が原産であるためか、100m以上にもわたって植えられていて、気持ちの良い散歩道だった。


 

フウ の 位 置
写真@ : C7 a ボダイジュ並木の先、右側。 2本
写真A : B7 d 10番通り 近く
枯れ死

名前の由来 フウ Liquidambar formosana

和名 フウ : 中国名の音読み
中国名 : 楓 または 楓香樹
発音は Feng 、 または Feng - xiang - shu

「楓」をカエデと読むのは日本でのことで、葉の形が似ているうえに紅葉するところからか、「カエデ(意味は蛙手)」に 楓 の字を当ててしまった。

中国故事や漢詩に出てくる「楓」は本種 「フウ」のはずである。

種小名 formosana : 台湾の の意味 
原産地のひとつ を表す。
では、なぜ台湾のことを「Formosa」と呼ぶか。

英語の辞書『英辞郎』によると、
「15世紀に船から台湾を見たポルトガル人が イラ・フォルモサ!( Ilha Formosa !=美しい島 ) と叫んだことから」ということである。
植物の学名では、多くの種小名に使われている。

Liquidambar フウ属 : 
ラテン語 liquidus 流体の + アラビア語 ambar 琥珀 の合成。フウ属の ある種から、芳香のある樹脂が採れることか

マンサク科 Hamamelidaceae :
花の形や実の形が異なる属が含まれる科で、フウ属、マンサク属のほかに、トサミズキ属、マルバノキ属、イスノキ属などがある。
APG分類の考え方以前から、マンサク科の中の「フウ亜科」を独立させて、「フウ科 Altingiaceae」とする考え方があった。
マンサク Hamameris japonica
2月25日 小石川植物園
折りたたまれていた花弁に 皺が残っている。
マンサク属はフウ属とは違って、ひとつの花に雄しべと雌しべがあり、4枚の花弁もある。

マンサクの由来には2つあって、
  @ まず咲く の意味
  A 満作 の意味
と、まるで異なる説である。
「まず咲く」説は、開花が現在の暦で2月〜3月、つまり旧暦では正月を迎えてから「真っ先に咲く」、あるいは 葉が出る前に「まず 咲く」ところから名付けられた、というものである。
花に関しては「ウメ」の方が 早いように思うし、葉が出る前に咲く花と言えば「サクラ」だと思うのだが・・・。
「満作」説は農民の「忌み言葉」によるものである。

春の山に早くから咲く花は美しいかも知れないが、マンサクはあまり実を付けないために、「シイナ花」と呼ばれた。「シイナ・粃」は実の入らないモミのことで、「凶作」に通じるということから嫌われて、反対の言葉である「満作」になった、というものである。

イネとは直接関係がないが、「アシ」が「悪し」に通じることから、「ヨシ」という別名が付けられている例もあるので、十分にあり得ることである。

 参考 トウカエデ
フウの葉の形は、カエデ属の中ではトウカエデがよく似ている。
こちらも、中国東部 と 台湾が原産である。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ