ソメワケハギ 染め分け萩
Lespedeza japonica ' Versicolor '
科 名 : マメ科 Fabaceae
属 名 : ハギ属 Lespedeza Michx. ( 1803 )
原産地 :  - (シラハギの 栽培品種)
用 途 :
 
庭木として植えられる



 

植物園の下の段、標識75番から島池に沿って「ハギ園」がある。

ハギ属はアジアと北アメリカに 40種類ほどがあるそうだが、ハギ園に植えられているのは数種類だけである。

ハギ園 の 四季

冬のハギ園                2012.1.28
低木のハギは木本だが、今年伸ばした枝のほとんどが枯れてしまい、翌春に根元から新しい芽を伸ばす。 このため、庭園ではたいてい地面近くで剪定するために、なにもなくなってしまう。

2000.5.14 2000.6.17
前掲写真とは反対方向(正門側)を見ている。 左側が島池。

花の時期                 2010.10.3
毎年枝が伸びて、右側の通路などは通れないほどになってしまう。




初夏の様子             2011.5.4

              たちまち大きく            2011.5.13
新葉の展開             2011.5.13
葉は次から次へと出現する。 3出複葉で、小葉の中心で半分に折りたたまれた状態が続き、次第に広がってゆく。 葉裏には毛が多くて 展開する前は特に白いため、離れた所から見ると 先端部が白く見える。

水をはじく             2011.6.11
表面にもごく短い毛があって、雨は水玉となる。 小葉のサイズは、長さ 約 3~4センチ。 長い葉柄がある。

葉の表と裏 (シラハギ)       2013.11.20
自宅の シラハギ の枝葉を撮影。 完全ではないが 90度に近い互生で、枝には稜がある。

葉裏の毛 (シラハギ)

葉の付け根の托葉 (シラハギ)

染め分け 咲き分け 絞り
花の色は様々である。

 
ソメワケハギ ・シラハギ の 位 置
写真① : F7 ac 標識75番の先 および 島池のほとり

名前の由来 ソメワケハギ Lespedeza japonica 'Versicolor'
 
和名 ソメワケハギ : 紅白の花が咲くため
栽培品種名 Versicolor : 変色の、斑色の
もともと 白一色である「シラハギ」の中から、紅紫が混じったものを見つけて栽培したもの。
 
 ← ハギ
毎年春に 古株から勢いよく芽を出す「生え芽(はえぎ)」から。
ハギは万葉集にも多く詠み込まれ、日本の秋を代表する花であるが、一般名称であって単に「ハギ」という和名はない。 それだけ注目・栽培されていて、個別に名前を付けた結果である

市民投票で選ばれた仙台市の 市花 が「ハギ」となっている。 正確には宮城県の「県花」と同じ、ミヤギノハギのようだ。 

センダイハギ(先代萩、仙台萩)としてもよかったと思うが、別属の Thermopsis lupinoides である。
センダイハギ
種小名 japonica : 日本の という意味
シラハギ Lespedeza japonica L. H. Bailey (1916)
シラハギ自体も 栽培品種(園芸品種)である。 その元となる種が何なのかは不明のようだ。 エゾヤマハギの品種 あるいは変種という説もあったが、GRIN ではそれらは異名として挙げられている。

学名が付けられたのは20世紀になってからだが、ミヤギノハギとともに 栽培品種に独立した学名が付いているのは珍しい。 命名後に、栽培品種であることが判明したのかも知れない。

日本に自生する 代表的なハギの命名年を調べてみた。 国外にも自生する萩の命名は 19世紀だった。
和名 学名 命名年 命名者     備 考
ミヤギノハギ  Desmodium
   thunbergii
 1825  ド・カンドル  栽培品種
   L. thunbergii の異名
ヤマハギ  L. bicolor  1840  ツルチャニノフ  日本以外に 朝鮮半島・中国・
  アムール地方にも
キハギ  L. buergeri  1867  ミクエル  日本以外に 中国にも
マルバハギ  L. cyrtobotrya  1867  ミクエル  日本以外に 朝鮮半島・中国にも
ケハギ  L. patens  1923  中井  日本特産
ツクシハギ  L. homoloba  1923  中井  日本特産
ミヤギノハギ  L. thunbergii  1927  中井  ド・カンドルの命名を訂正
L . は Lespedeza の略。 ほかにも「亜種」となっている国産種が多数ある。


Lespedeza 属 : 人名による
1776年のアメリカ独立宣言後、フロリダはイギリス統治となったが、1784年からの約40年間は ふたたびスペインが統治した。

属名は 1784年から 90年まで、その総督であった スペイン人のセスペデス Vicente Manuel de Céspedes y Velasco を顕彰したもの。

命名者は フランスの植物学者で探検家の ミショー ( André Michaux 1746-1802 ) で、アメリカの植物誌だけでなく、イギリス・スペイン・フランスの植物も収集・研究した。

属名の発表は 1803年で、ミショーの死後だったためか、判読ミスあるいは出版時の誤植の校正ができずに、セスペデスの頭文字「C」が 「L」になってしまった。 『植物の世界』によると、「国際植物命名規約では学名の付け間違いは訂正できるが、頭文字だけは変更できない」そうだ。
ミショー
Wikipedia より

マメ 科 : Fabaceae , ( Leguminosae )
クロンキストの分類では花の形態・構造の違いから、ジャケツイバラ科 ・ネムノキ科 ・マメ科 に分けられていたが、APG分類ではそれ以前のようにひとまとめになった。 
マメ亜科は10本の雄しべの内 9本の基部が合着していることから、他の2つよりも後からできたと考えられているのだが、遺伝子的には大きな違いがなかった、ということだ。

非常に大きな科で、約 650属、約 18,000種があるという。
ジャケツイバラ亜科
Caesalpinioideae
ネムノキ亜科
Mimosoideae
マメ亜科 Faboideae
シラハギ。 翼弁と竜骨弁は引き下げてある。

 

シラハギ Lespedeza japonica L. H. Bailey (1916)

ハギ園には シラハギもある。 筆者は白い花が好きで、シラハギを道路際に植えたのだが、毎年 枝が道側にはみ出して困っている。

シラハギ                 2012.10.3
葉で隠れてしまって見えないが、裏側に島池がある。

花                2010.10.3

花は散っても白いままで、かえって風情が出る。

以下は 自宅のものを撮った花の詳細。
小さいながらも蝶形花                    2013.11.21
ひとつの花の大きさは 長さ 15ミリ強。 竜骨弁が一番長く 翼弁は短い。
ハギ属の特徴は、萼の基部に 一対の小さな苞(鱗片状の葉)が付くこと。


命名者は アメリカの園芸家 ・植物学者で、アメリカ園芸学協会の設立者のひとりである バイレイ( L. H. Bailey 1858-1954) である。
バイレイ
Wikipedia より



植物の分類 APG II 分類による ハギ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
  マメ目   キリァイア科、マメ科、スリアナ科、ヒメハギ科
マメ科   アカシア属、ネムノキ属、エンジュ属、 ハギ属 など多数
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ