ハクウンボク 白雲木
Styrax obassia Siebold et Zucc. (1839)
科 名 : エゴノキ科 Styracaceae
属 名 : エゴノキ属 Styrax Linn. (1818)
別 名 : オオバジシャ
中国名 : 玉鈴花 yu ling hua
原産地 : 日本全国。 朝鮮半島、中国
用 途 : 庭木、公園樹として植えられる。
器具材。

ずっと以前には 売店近くの管理地横に大きな木があった。枝が枝垂れて園路に張り出していたが、いつの時か伐採されてしまった。弱っていたようには見えなかったのだが・・・。
現在は その管理地内に二本と 分類表本園(トップの写真)にある。

かつての光景    2001.4.28.
こんなすてきな光景と香りが楽しめた・・・。右奥が売店。

①:管理地内    2011.10.12.
白い名札が付いているのがハクウンボクで、奥のイロハモミジ側は枝が少ない。手前は剪定されているようだ。
①:冬の姿    2013.1.9.
前掲写真とは 90度違う角度から。

②:もう一本のハクウンボク




50番通り。売店下の標識51番から、管理地の柵に沿って北方向へ。
柵のすぐ近くで、岩にへばり付いている。
落ちた種からの実生が大きくなったものだ。幹は20センチぐらいの太さがあるが、周囲に木が多いので苦戦している。

自然樹形      2013.1.5.
筑波植物園。高さ10m弱で、もっと大きくなりそうだ。

幹の様子   2000.6.11..
北大植物園、太さの記憶はなくなってしまった。
成長の度合いが少ない場合は全体に灰色だが、急に幹が太ると細かな割れ目ができる。

枝の様子         2013.1.8.
対生に付く葉ごとに 枝がジグザクになっている。

様々な 幹・枝の表情         2013.1.5.
筑波植物園の冬。
まず 太い枝の樹齢はわからないが、まだ若くて平滑、黄土色。↑

次に 細い枝に付けた符号、①は 昨年伸びた一年目の枝、②は より下が二年目の枝を示す。
一年目の枝は赤い樹皮に包まれている(①a)。一年目の樹皮だけは特別で、冬にそっくりはげ落ちる。(①b)が剥げかけた状態で、すべて取れたのが (①c)である。
二年目以降はこのようなことはなく、枝が太ると表面に細かな割れ目ができる。


葉の様子        2011.7.1.

若 葉          2013.4.8.
粗い毛は すぐに落ちる。つぼみも同時に出てくる。

つぼみ          2013.4.8.
花は 初めは均等に四方に向いているが、後で下向きになる。

葉の裏は白い        2009.5.8.
詳しく観察をしていないが、星状毛があるそうだ。大きい葉は 長さ20センチ以上となる。部分的に尖る(歯牙状と呼ぶ)。

重なり合う葉       2001.4.28.
晴れた日に見上げると 薄手の葉が重なった部分が色が濃くなり、丸い葉に模様ができる。

花の様子         2011.5.4.
花序は 新しく出た枝の先端に付き、水平から少し下を向いて湾曲する。花の数は通常 20程度で下向きに咲くが、写真の花序には 23個の花が付いている。花弁は合弁花だが、深く5つに切れ込んで離弁花のように見える。
雄しべは 10本。割と果実ができやすく、花は下向きに咲くのに 果実は上向きとなる。

若い実             2011.5.31.

ふくらんだ果実       2011.7.1.
葉の裏と同じように、びっしりと短い毛が付いている。

たくさん落ちる種子      2008.2.8.
琵琶湖水生植物園で拾ったもの。果皮ごと落ちるものが多い。
希に ひとつの果実に2個の種子がはいる。



 複 芽 について

ハクウンボクの葉柄は基部が広がっていて (部)、冬芽を完全に包んでいる。
落葉すると冬芽が見えるが、特徴的な「複芽」となっている。

側 芽 茎頂直下の側芽
大きいものを主芽、小さい二つを「複芽」と呼び、枝に対して縦に並んでいるので「縦生複芽」である。なお、茎頂は毎年脱落する。

主芽が痛んでしまった時に、代わりに複芽が伸び出す。

伸びた複芽
が 折れてしまった主芽。        ↓枝の先方向

複芽で有名?なのが、ジャケツイバラである。
ジャケツイバラの縦生複芽     2012.4.6.
とても「葉腋」とは言えないような離れた場所。両方ともこれから咲く花芽だが、まず大きい方が伸びて咲く。

ケヤキの小枝       2013.1.20.
並生複芽


 
ハクウンボク の 位 置
 過去に生えていた木
写真①: E11 b 管理地内
写真②: F10 c 50番通り 右側 管理地内すぐのところ
写真③: E10ac 分類標本園 井戸側 4列目 左端

名前の由来 ハクウンボク Styrax obassia

ハクウンボク 白雲木 : 花の咲く様から
文句なく、たなびいている。


種小名 obassia : 大葉萵苣 に由来
シーボルトが来日時(1823~28) に聞き取ったもの。
同じ属のエゴノキがチシャノキと呼ばれていたので、葉の大きなハクウンボクは 大葉チシャ と呼ばれていた。
  オオバチチシャ → オーバッシア
は、十分許容範囲である。
 
ハクウンボク と エゴノキ の葉の比較

 ← チシャノキ(エゴノキの別名)
エゴノキの由来は、葉や果皮のアクが強くてエグいため。
恐らく、昔のチシャが今よりもえぐくて、エゴノキの「味」が似ていたために付いたのだろう。ということは、エゴノキの若葉を食用としたのだろうか?
エゴノキの 花と葉           2004.5.13.
エゴノキの花は ハクウンボクとそっくりだが、花序の形が異なり,葉が極めて小さく、大きくても8センチ程度。なお、エゴノキの学名 Styrax japonicus もシーボルトが命名したものである。

属名・科名 Styrax 属 : はっきりせず
一説によると エゴノキ属のある種の 古代ギリシア名にちなむと言われている。



植物の分類 : APG II 分類による ハクウンボク の位置
エゴノキ科は、クロンキストの分類ではバラ亜鋼よりも前に位置付けられた「カキノキ目」にあったが、APG分類では ずっとあとから分化した場所に変更された。分類された「ツツジ目」そのものも、以前はエゴノキ科と近い位置にあった。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所 カキノキ目  アカテツ科、カキノキ科、エゴノキ科、ハイノキ科
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、サカキ科、カキノキ科、エゴノキ科、など
エゴノキ科  ヘイルジア属、アサガラ属、エゴノキ
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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