アメリカハリグワ アメリカ針桑
Maclura pomifera C. K. Schneider (1906)
← Ioxylon pomiferum Rafin.(1817)
科 名: クワ科 Moraceae
属 名: ハリグワ属
 Maclura Nutt. (1817) nom.cons.
英 名: osage-orange、hedge-apple
原産地: アメリカ合衆国、オクラホマ・アーカンサス・テキサス州
用 途: 米国では昔 生け垣として植えられた。
材は硬く、かつて 弓・戦闘用のこん棒・線路の枕木・杭として、根は黄色の染料として、実は防虫剤として使われたという。
備 考: 園外植物。小石川植物園には植えられていない。京都植物園で見たことがある。
撮影地 : フランス 、ポルトガル  

2009年のことだったが、エッフェル塔の足元に「アメリカハリグワ」が植えられていた。
グーグルのストリートビューで確かめると、現在は無くなっている。オリンピックの会場になったこともあるだろうが、それ以前に整備されてしまった可能性もある。
特記以外は すべて2009年9月〜10月の撮影。

大 木       2009.9.26.
遠くからも黄色く色付いた実が生っているのが見えた。木の周りは大きく柵で囲われて近づけなかった。
たまたま質問した人が パリに住む植物好きのアメリカ人で、名前を教えてもらい、とてもポピュラーなものだということを聞いた。
なぜ北アメリカの しかも刺のある木が、よりによってパリのシンボル エッフェル塔の下に植えられているのか? 何か言われがあったに違いない。

圧倒的な大きさだった。20mぐらいあったのではないだろうか。
中央の幹は、左右の幹とワイヤで繋がれていた。3本相互に結ばれていたのかもしれない。倒壊の危険 という理由で撤去された可能性もある。
周囲からの徒長枝が生えている様子はなかった。
黄緑色の果実
鈴生りではないが、ある程度まとまってテニスボールのような実が生っていた。
尋ねたアメリカ人が 近くにも別の木があると教えてくれて、間近に見ることができた。
別の場所のアメリカハリグワ
人の大きさと較べると、これもかなり大きな木だ。この木はまだ残っているかもしれない。
樹上の果実
褐色の長い毛がついている。雌しべの名残だろうか?
 
数日後、リスボンの ポルトガル大学植物園でも見かけた。
灌 木    2024.10.1.
ここには名札があり、学名を確認できた。同じように実がたくさん落ちいてた。
一年生枝 二年生枝
よく伸びる枝は少しジグザクになっている。葉のサイズは 18〜20センチ。2年目は葉が束生し、イチョウと同じような短枝となる。これらの枝にはトゲが無かったが、別の枝ではハリグワと同じようなトゲがあった。

短 枝 参考:イチョウの短枝
左:リスボンの木の枯れてしまった枝。上部には「短枝が長枝化」した痕跡がある。
右 イチョウ:芽鱗痕が何回もの伸びがあったことを示している。


花は終わって実ばかりだったので、花の写真を アメリカの『Bioimages』のホームページからお借りする。(商業利用でなければ利用してもよいとなっている。)
雄花 の 様子
Bioimages のデータベースより
私が両国で見たのは共に雌株だが、『Mabberley's Plant- book』には「単為生殖の」という記述があったので、雌株だけでも果実が大きくなると思われる。
ポルトガルではたくさんの実が落ちたまま放置されていた。
腐りかけたものには種子ができているので、単為結実だけではなさそうだ。

名前の由来 アメリカハリグワ Maclura pomifera
 和名 アメリカハリグワ:アメリカ原産のハリグワ
ハリグワは中国原産。
 Maclura属:人名による。 保留名
「アメリカ地質学の父」と言われる William Maclure (1763-1840) に、属名の命名者 ナトールが献名したもの。マクルールはスコットランド生まれでアメリカ合衆国に帰化した実業家、地質学者、社会教育家。
 保留名となった経緯については ハリグワ を参照。
 種小名 pomifera:檎果を有する
単に丸いというだけで およそ「リンゴ」とはかけ離れている。イメージはむしろ「ミカン」の方が近い。
種小名を名付けたフランスの学者 Rafinesque (1783- 1840)は、天才と言われて植物学以外の他分野でも活躍した人物である。Maclura属よりも先に Ioxylon属を定義して命名したが、結果的に「棄却名」となった。
まさか リンゴを知らなかったわけではないだろうから、単に「丸い」という意味と考えればよいのだろう。
 英語名 hedge-apple:垣根リンゴ
ここでも「リンゴ」が使われている。 
「垣根」は、19世紀に生け垣として本種がよく使われたところから。ドゲがあるので、列植して適度な高さに刈り込めば侵入防止になるだろう。
 英語名 Osage-orange:オセイジ・オレンジ
こちらは「オレンジ」である。
「オセイジ」はミズーリ州のアメリカインディアンの名前、あるいは地域名で、本種の自生地の中心だろうか。
ただし、Osage そのものの意味・由来は不明。
 クワ科 Moraceae:mor (黒の意) から。
クワに対するラテン古名に由来する。そのもともとの語源はケルト語の mor で、熟した時の黒いクワの実からきている。 
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