ヘラノキ 箆の木
Tilia kiusiana Makino & Shiras. (1900)
科 名 : シナノキ科 Tiliaceae
APG分類: アオイ科
属 名 : シナノキ属 Tilia Linn. (1781)
英 名 : Japanese lime , Japanese linden
中国名: 日本椴、華東椴
原産地 : 本州西部(紀伊半島、中国地方)
四国(愛媛県)、九州の低山地
用 途 :


精子発見のイチョウの裏にある「ボダイジュ並木」にはシナノキ科の樹木が集められている。ヘラノキは 並木道から左右に離れた所にある。

2010.10.11           ①:樹 形             2011.1.5
同じ木だか、見ている方向が 90度違う。高さは 約 22m。

もともと ほうき型に枝分かれする樹形だが、木が混んでいるために よけい幅が狭くなっている。

        ①:幹の様子  2010.10.11    ②:秋の様子 2011.12.2
      
 .
 
幹は縦にひび割れて、軽くささくれ立つ。

二度にわたる雪の被害で ②の木は大枝が折れ、瀕死状態となってしまった。
②:幹だけとなった   2014.4.1.

                  ヘラノキの若葉            2011.4.15
真っ赤な托葉が美しいが すぐに落ちてしまう。

ヘラノキの葉 シナノキの葉


小石川植物園
HP 『神戸・六甲山系の森林』より / 掲載許可取得済み

ヘラノキは シナノキによく似ているが、次のような違いがある。

部位 ヘラノキ シナノキ
葉の形:  卵型 ~ 広い卵型  心臓型(ともに先は尖る)
葉の柄:  短い  長い
花序の柄:  短い  長い

植物園では花を観察できていないが、 『神戸・六甲山系の森林』のホームページからお借りする事ができた。
ヘラノキの花序 シナノキの花序


小石川植物園
HP『神戸・六甲山系の森林』より / 掲載許可取得済み

右側 シナノキの写真では 柄の状態がわかりにくいが、葉と同じく 花序にも長い柄がある。これに対してヘラノキの総苞と枝の間は ほぼ無いに等しい。

実もぶら下がる
『神戸・六甲山系の森林』より / 掲載許可取得済み


 
ヘラノキの 位 置
写真① : C 9 a 精子発見のイチョウの裏側
D 8 c 標識23先から 標識34への斜めの道 右側
写真② : D 7 c 30番通り右側 標識34 と 35の間、 2本

名前の由来 ヘラノキ Tilia kiusiana

ヘラノキ : 
シナノキ属の特徴である「総苞」が、細長い「ヘラ」の形をしているため。 

HP 『神戸・六甲山系の森林』より / 掲載許可取得済み
シナノキ科で国産種は 「シナノキ」、「オオバボダイジュ」、「ツクシボダイジュ」、「マンシュウボダイジュ」などがあるが、国産に限らず 花序には似たような「ヘラ」が付いている。 その意味では固有の特徴ではなく、代表名のひとつである。 シナノキの「別名」としては最適である。

本種は 「長葉シナノキ」、「九州シナノキ」、「南部シナノキ」 などとするのがよかったと思う。
 
種小名 kiusiana :
「九州の、九州産の」 という意味。
命名者の牧野富太郎が 九州で観察したもの。
 
シナノキ属 Tilia 属: シナノキ科 Tiliaceae
「縛る、結ぶ」という意味のアイヌ語「シナ」に基づく。
                  『日本国語大事典』
樹皮から採れる繊維で「シナ布」やロープをを作るためである。
漢字は「科の木」、建築材としては「榀」が使われる。

その他の説として、
樹皮がシナシナするため、信濃の国の木、などがあるが 俗説のようだ。

学名は、シナノキ類の古代ラテン名による。
                  『園芸植物大事典』
あるいは ギリシア語「tilos 繊維性」による。
                 『植物学名事典/牧野』
         シナノキ   2003.5.17
筑波実験植物園

中国名 日本椴 :
ダン」 の意味は日本では「トドマツ」であるが、中国では「シナノキ」を指す。シナノキの総称が「椴樹」である。

中国にも様々なシナノキが自生しており、例えば代表的な種 「華椴 hua duan 」(簡体では 化の下に十) Tilia chinensis Maxim. (1890) は、甘粛省・河南省・湖北省・陝西省・四川省・雲南省 などに分布する。
 
英語名 Japanese lime :
「ライム」の意味としては、まず「石灰」 それから「鳥もち birdlime」。よく使われるのは「柑橘類のライム」で、”レモンのような” が由来となっている。

それが lime tree で「シナノキ」となる理由は未解明。

日本では かつて、モチノキ や ヤマグルマから鳥黐を採った。

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ