ヘツカニガキ 辺塚苦木
Sinoadina racemosa Ridsdale (1978)
← Adina racemosa Miq. (1890) 園の名札
← Nauclea racemosa Siebold & Zucc.(1846)
別 名 : ハニガキ 葉苦木
科 名 : アカネ科 Rubiaceae
属 名 : ヘツカニガキ属
   Sinoadina Ridsdale (1978)
中国名 : 鶏仔木 ji zai mu
原産地 : 四国南部、九州、西南諸島
台湾、中国南部、ミャンマー
用 途 : 材は極めて硬く、沖縄ではかつて 墓の扉などに使われた


メタセコイアの先、60番通りと70番通りの間に植えられている。自生地としては四国南部が北限だが、高さ約10mとよく育っている。

樹 形           2012.7.17.
メタセコイヤの所から奥を見ている。地面は平らなのだが、木は西側に傾いている。ちょうど花の時期。

枝振り           2012.1.11.
午後2時半、西方向を見ている。南方の樹木なのに落葉が遅い。

落 葉       2012.1.25.
もう2月に近いというのにまだまだ葉が残っているので、半落葉なのかと思ってしまうが、事典には「落葉樹」としか書かれていない。黄緑色のまま落ちる葉も多い。

幹の様子
樹皮は剥がれにくいタイプで、裂け目は深くなる。


芽吹きの様子         2007.4.29.
落葉が遅いだけに? 芽吹きは遅め。


新葉の様子    2011.5.18.
葉が出始めてから 一ヶ月近く経っている。枝先に花序が。

伸びてきた 花序                2011.6.16.
それぞれの花序の付け根には「托葉 」、花柄の中程に「苞 」があるが、すぐに落ちてしまう。葉柄は赤い。

花の頭が出現               2012.6.26.

つぼみがはっきりしてくる             2012.7.15.

満開の花                  2012.7.22.


ふたたび冬の姿               2008.1.4.
園の奥からメタセコイア林を見る。

黄緑色にあせた葉の色は さらに 赤さび色がはいる。

葉の落ち跡        2012.1.11.
埴輪の形、ヘルメットを付けた潜水夫? に見える。

 
ヘツカニガキ の 位 置
F12 b    60番通りと 70番通りの間

名前の由来 ヘツカニガキ Sinoadina racemosa

ヘツカニガキ 辺塚苦木 : 発見した場所にちなむ
ヘツカニガキの学名を初めに記載したのは シーボルト・ツッカリーニである。採取地は標本などには記載されているはずだが、不明。日本ではない可能性もある。

その後牧野富太郎が 大隅半島の辺塚 (佐多岬に近い南大隅町) で発見したもの。同定を依頼したロシアのマキシモウィッチから、Adina racemosa だという解答を得て、1890年(明治23年) 学会誌に「ヘツカニガキ」の名で発表した。

しかし、なぜ「ニガキ」の名を付けたかは謎である。

ニガキは ムクロジ目 ニガキ科で、ウルシ科やセンダン科が近縁であることから、ニガキ科の「ニガキ」を指すのではなく、単に「苦みのある木」ということだろう。ヘツカニガキの別名が 「ハニガキ」であるのことが、それを示しているような気がする。(推定事項) ニガキについては後日 取り上げたい。
ニガキ    2002.4.14.
分類標本園

種小名 racemosa : 総状花の の意味
総状花とは、多数の花が花序軸にほぼ均等に付き、花に柄があるのが特徴である。
1総状花序     2穂状花序
福岡教育大学 福原教授のテキスト より
ヘツカニガキは 総状花序
ヘツカニガキは 初め Nauclea 属として記載された。同属は日本では見られないため、事典にも載っていない。代表的な種 Nauclea orientalis を見てみると、花は葉腋にひとつだけ付けている。
ヘツカニガキは 現在は別属となっているが、命名時はNauclea 属と考えたために、「総状花」を特徴として 種小名にしたものである。
Nauclea orientalis
中国 雲南省で

以前の属名 Adina 属 : 密集する の意味
ギリシア語の「adinos 密集している」で、花序が球状にかたまっていることに由来する。
植物園の名札は 以前の この属名のままである。

Sinoadina 属 : 中国の Adina 属
sino は sina 支那 で、中国のこと。ヘツカニガキは日本以外にも分布する。
命名者の Ridsdale については詳細がわからないが、すでに Adina属に記載されているものを、新属に変更するにあたって「中国の」としたのだから、もとの標本が中国で採取されたものだったのだろう。



植物の分類 : APG II 分類による ヘツカニガキ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、など
中核真生双子葉類 ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
参考 ムクロジ目  ムクロジ科、ウルシ科、ニガキ科、センダン科、ミカン科 など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
 リンドウ目  アカネ科、リンドウ科、マチン科、キョウチクトウ科、など
アカネ科  タニワタリノキ属、コーヒーノキ属、ヘツカニガキ属、など多数
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
以前の分類場所 アカネ目  アカネ科、ヤマトグサ科
↓後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ