ヒイラギ 柊
Osmanthus heterophyllus P.S. Green (1958)
← Ilex heterophylla G. Don (1832)
科 名 : モクセイ科 Oleaceae
属 名 : モクセイ属
   Osmanthus Lour. (1790)
中国名 : 冬樹 dong shu
英語名 : Chinese holly, false holly, holly osmanthus, holly- olive
原産地 : 本州・四国の暖帯林、九州・屋久島・西表島・台湾の高地
用 途 : 耐寒性が弱いために、暖地で庭園樹とされる。邪鬼の進入を防ぐために、節分に枝葉を戸口に挿す。別名 オニオドシ。

小石川植物園では モクセイ科の植物が70番通りに沿って植えられているが、ヒイラギの場所は上の段、標識36番の近く。

@: 樹形         2012.11.27.
3本の木が一カ所に植えられている。高さは3m程度で低い。花が咲いているのだが、香りもキンモクセイほど強くないので、近づいても目立たない。
事典には10mになる とあるのは、暖地で生育が良い場合だろう。

@:裏側から       2012.11.27.

幹の様子

新 葉         2011.6.5.
分類標本園。すでに伸びきっていて色が青くなりかけているが、新しい枝の赤紫が美しい。雌雄の別は不明。

@:葉の様子      2012.11.27.
「ヒイラギの葉」のイメージとは似てもにつかない丸い葉。老木や梢の葉にはギザギザの鋸歯が出ない。外敵を防御する必要がなくなったからか? @番の木は 98%以上が 丸い葉となっている。

葉の形とは別に、ヒイラギの葉は虫に食われやすい。この写真は 食われていない所を選んで撮っている。

葉には 丸とギザギザの中間タイプもある。

@:満開の花と葉の様子    2012.11.27.
ほとんどすべての葉に鋸歯は無い。木が古いということだ。

花の様子        2001.11.30.
大阪で。子房が小さいので雄花だろう。

@:花の詳細       2011.11.27.
花弁は後ろに反り返る。大きな葯を付けた雄しべが二本、中央には雌しべと子房がある。@番の木は雄株だとばかり思っていたが、花粉が出ておらず 雌しべがしっかりしているので 雌花の可能性がある。
しかし 実を見た記憶が薄い。

できたての実       2008.12.3.
植物園で撮った写真だが、分類標本園かも知れない。まだ柱頭などが残っている。

 
ヒイラギ の 位 置
写真@: C5 b    30番通り 標識36番の右手
写真A:    分類標本園、井戸側 5列目 左側

名前の由来 ヒイラギ Osmanthus heterophyllus

ヒイラギ 柊 : 
鋭い葉のトゲに触るとヒリヒリする、「ひひらぐ」ことから。
名詞形 ヒヒラギ が、イ音便化して ヒイラギ となった。

漢字「柊」は「疼木 ひひらぎ・き」の二文字合成されたもの。新暦で11月に咲くことから、冬の木の意味も込めている。なお 疼の現在の読みは「うずく」である。

種小名 heterophyllus : 異種の葉がある の意味
尖った葉と丸い葉があることによる。

Osmanthus 属 :
ギリシア語の osme (匂い)+ anthos (花) に由来。
ヒイラギも香りがするが、「とても良い匂い」とまでは言えない。好みにによるが・・・。
 
モクセイ科 Oleaceae :
モクセイ科の基準属は オリーブ属 Olea である。由来は、オリーブの古いラテン語名による とも、ギリシア語の名前 elaia によるとも言われている。意味は「油質の」のようだ。
オリーブ
 モクセイ 木犀 :
モクセイの中国での名は 桂 (グイ)、あるいは 木犀(mu zi ムーシー)と呼ぶ。日本では 木犀を音読みして、モクセイとした。
木犀は、モクセイの樹皮が動物の「犀 サイ」に似ているところから。
ギンモクセイ

英語名 Chinese holly, false holly, holly osmanthus など :
holly とは モチノキ属の総称である。
English holly セイヨウヒテラギ Chinese holly ヒイラギモチ
Ilex aquifolium、筑波植物園。
クリスマスの飾り付けはこれ。西アジアからヨーロッパ南部、アフリカ北部に分布する。ヒイラギと同じように、成木、ことに枝先ではトゲがなくなる。花は雄花。
Ilex cornuta、小石川植物園。
中国揚子江の中・下流地域から朝鮮半島南部まで分布。
ヒイラギモチも成木では全縁に近い形になる。花は雌花だが、両性の可能性も。
初めに命名した ジョージ・ドンが モチノキ科の Ilex モチノキ属に分類したこともあって、holly の名称が付いた。
モチノキ属の多くは赤い実を付けるが、ヒイラギなどのモクセイ属の実は 成熟すると青黒くなる。



植物の分類 : APG II 分類による ヒイラギ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、など
中核真生双子葉類 ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
  シソ目  モクセイ科、イワタバコ科、ゴマノハグサ科、ゴマ科、
 キツネノマゴ科、クマツヅラ科、ノウゼンカズラ科、
 シソ科、キリ科、など
モクセイ科  トネリコ属、オリーブ属、モクセイ属、ハシドイ属、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

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