ホオノキ 朴の木
Magnolia ovovata Thunberg (1794)
科 名 : モクレン科 Magnoliaceae
属 名 : モクレン属 Magnolia Linn. (1735)
異 名 : M. hypoleuca Sieb. & Zucc. (1845)
古 名 : ホオガシワ
英語名: Japanese whitebark magnolia
原産地 : 日本全国
用 途 : 材は均質で軟らかく加工しやすい。収縮や反りが少ないため、刀の鞘・ピアノの鍵盤・下駄の歯・製図板・金銀研磨用の炭などに使われた。
葉にミソを塗って火であぶる「朴葉味噌」は、葉の香りを楽しむもの。

園内では崖地やその付近に数本があるが、周囲に木が多いために全体像を撮るのは難しい。 また 高く伸びた状態で下枝が少ないために、花を間近に見ることもできない。 ほかの場所で撮影した写真も交えて掲載する。

            @ : 樹 形      2012.4.18
春の芽吹き。 2012年は平年より遅かったと思われる。

2012年6月 台風被害
6月18日夜中の台風で 上の写真 左側上部の幹が折れ、北側のフェンスを直撃した。 

19日 火曜日は臨時休園となって すぐに片付けられ、曲がった金網だけが衝撃を物語っている。

           冬 芽    2012.1.18           開葉準備    2011.4.17
青灰色の鱗片。 長さ 約 8cm。 鱗片が剥けると次は托葉。

             落ちている鱗片を枯れ葉に乗せて                  2012.4.18.
茶色いのが 鱗片の内側。 鱗片も じつは托葉に由来するもの。 先端が2つに割れているのが それを暗示しており、短い葉柄もある。 葉身は退化していることが多いが、はっきりとした 落ち跡がある。

                       薄い托葉                 2011.4.17
托葉は 次の葉とその次の芽を包んでおり、じきに落ちる。 右の写真でいうと、第一葉の托葉 @’は、第二葉 A と A’に包まれた第三葉以降をすべて包んでいた。 鱗片だけは一定期間落ちずに残る。

新葉には白い産毛

               枝の先だけに付く葉         2011.6.16
                    擬 輪 生              2007.5.12
日の光を無駄なく受ける工夫。 9枚の葉が ほとんど重ならずにまるで輪生のように並んでいる。 実際は互生なので、「擬輪生」という。 
           神戸森林植物園で、ちょうど崖下にあった葉を真上から。
              A : お互いを生かす「互生」       2012.5.10
弱った木の根際から生えているひこばえの葉。 葉の数は6枚。

               A : 葉の裏は青白い          2012.5.30

               A : 震災記念碑近くのホオノキ          2011.6.11
ほとんど枯れた幹の他に、2本ある。

        B : 下の段のホオノキ   2012.5.16
島池の右側を通る 40番通り。 標識45番の手前右側に 紅葉が美しいメグスリノキがあるのだが、その隣に生えている。 この木に花が咲いていたが、はるか高い所だった。                               
2012.5.16

                  筑波植物園の花            2011.6.4
直径20cm程度。 日陰に咲いていたもので写真の露出がうまく合わなかった。 
事典によると花弁は 6〜9枚。 この花は8枚。 一番手前のうす茶色のものは 3枚の萼片の一枚。 次の写真では、3枚の萼が垂れ下がっているのが よくわかる。
                    甘いかおり              2007.5.12
神戸森林公園。 同じ属のタイサンボクとの大きな違いは、雌しべが赤い事と、花弁の形が細長く、葉が軟らかくて艶がない。 もちろん葉の形も違う。
参考 : タイサンボク

                若い実 (筑波植物園)          2012.7.7
2011.7.5     若い実                   赤くなってきた実  2002.9.14
左は植物園で落ちていたものをベンチに乗せて撮ったもの。 
右は長野 戸隠植物園で。

                   大きな落ち葉            2010.12.2
落ちても裏は 白のまま。

 
ホオノキ の 位 置
写真@: E11 d
標識51番から上に上る階段の途中、右側
写真A: D6 c 震災記念碑 標識35番から梅林の上に下りるスロープの左側
D7 c 30番通り 標識34番と35番の 中間左側
写真B: E8 b 40番通り 標識45の手前 右手。 メグスリノキの隣

名前の由来 ホオノキ Magnolia ovovata
 
ホオノキ
朴の木 : 
一般には ホウ(包 つつむ)の意味で、大きな葉で食べ物を包んだり 葉に載せたりしたことから。 炊い葉(カシワ)と区別するために、古くは「ホオガシワ(ホホガシワ)」と呼ばれた。

別の説として、花や葉がまだ開かない状態を表す 「ふふむ(含む)、ふふまる、ほほむ」 から 「ホホノキ」となった、がある。

ホオノキは冬芽どころではなく、春に若葉が展開すると同時に 来年の芽が準備され、ほほった状態がほぼ一年間続く。
              展開したばかりの枝先       2012.5.29

ただし、上部の枝あるいは一部のひこばえの枝では、擬輪生の葉が展開した後で 初夏に頂部の芽が伸び出して、さらに枝が伸びる。 この時の葉の付き方は通常の「互生」であることがよくわかる。
                普通の 互生           2012.6.5
                 筑波植物園           2012.7.7
ホオノキは枝分かれが少ないが、ここでは3本の枝が出ている。

種小名 ovovata : 倒卵円形の の意味
先が幅広くなった葉の形による。

モクレン科 Magnoliaceae : 人の名前に由来する
17世紀フランスの植物学者で、地中海に面するモンペリエの植物園園長であった、ピエール・マニョール(1638-1715) を顕彰したものである。
 



植物の分類 APG II 分類による ホオクキ の位置

花の各器官は「葉」が変化したものと考えられている。 モクレン類は 1本の軸の周りに「花弁・雄しべ・雌しべ」が多数付く花の構造が原始的であり、早くに分化した、原始的な植物とされている。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
モクレン目   ニクズク科、モクレン科、バンレイシ科、など
モクレン科   モクレン属、ユリノキ属、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ