ヒョウスイボク 秤錘木
Sinojackia xylocarpa Hu (1928)
科 名: エゴノキ科 Styracaceae
属 名: ヒョウスイボク属 Sinojackia Hu
            (1928)
中国名: 秤錘樹 cheng chui shu
英 名: jack tree
原産地: 中国、江蘇省。標高 500~800mの林縁
絶滅危惧種に指定されている
備 考: 『Flora of China』にはヒョウスイボク属に8種が掲載されており、そのうち5種は中国の固有種とされている。

中国原産の珍しい樹木。和名を聞いただけで漢字を思い起こすのは難しい。国内で見られるのはここだけではないだろうか。

 樹 形    2010.10.11.
撮影は10年以上前だが、大型低木で現在も高さは さほど変わらず、約10m。
株立ちの状態 細かなひび割れ
一番太い幹で、径11センチ。
枝ぶり 冬 芽
エゴノキと同様の落葉樹。それぞれの幹が長く伸び、細かく枝分かれする。枝先の太さは3mmしかない。
冬芽は裸芽で、茎頂が脱落していると考えられるため、右写真の先端は「仮頂芽」(高さ約6mm)。腋芽は丸く小さい。
参考:エゴノキ
エゴノキと較べると、サイズが大きく 少し厚手で全縁、葉脈が縁に向かって流れる。どこかコクサギの葉を思わせる。エゴノキは、同時枝を出しながら小さめの葉を二列互生につける。
満 開        2013.4.23.
花被裂片の幅が少し狭いなどの違いがあるが、下向きに咲くところもエゴノキによく似ている。
落 花        2011.5.13.
雄しべと花弁は基部でついていて、一体で落下する。深く裂けているが合弁花である。
幼 果

2022.6.4

2022.7.9
ほぼ 同スケール。ひと月もするとかなりの長さとなっていた。その1か月後には、先端部は肥大せずに茶色くなっている。萼の落ち痕よりも基部側は少し高さを増したようだ。
左写真の果実の高さは 約24mm、右では 30mm以上あるので、すでに成熟時の大きさとなっている。
次の熟果の写真よりもずっと大きいので、落下して乾燥すると縮むことも考えられる。
熟 果         2011.11.1.
丸い方が基部、尖っている方が雌しべの落ち痕で、サイズは大きいもので長さ3センチ弱。エゴノキとの大きな違いは、果実が木質化して裂開しないこと。
参考:エゴノキの 幼果と種子


 
ヒョウスイボク の 位 置
C6 ab 20番通りの左側


名前の由来 ヒョウスイボク Sinojackia xylocarpa

 ヒョウスイボク 秤錘木:
中国名「秤錘樹」の 樹 を 木 にして音読みしたもの。漢字で書けば意味は一目瞭然だが、なぜこの名なのかは果実を見ないと分からない。
「秤はかり」で使う「錘おもり」といえば、
竿秤さおばかりの分銅 上皿天秤用の分銅
などがあるが、本種の果実は「振り下げ」の錘にも似ている。


 Sinojackia 属:
Sino は「中国の」に間違いないが、jackia がわからない。
Jackia属は異名となったものがいくつかあるのだが、サクラソウ科・アカネ科・ヒメハギ科と、本種とは関係なさそうだ。またオランダ生まれの植物学者 ジャカンは、中国の植物には関与していないと思われる。
ヒョウスイボク属とヒョウスイボクなどを記載したのは、胡先驌 Hu Hsien - Hsu (1894-1968)。
中国の植物を研究した先駆者と言われている
Wikipedia より
 種小名 xylocarpa : 木質果の
核果(石果)は液果の一形態だが、モモのように中果皮が液質ではなく、前掲写真の果実の断面を見ればわかるように、硬くはないが果肉が木質化している。
同じ科のエゴノキ属は、果皮が薄くて乾燥する「乾果」、アサガラ属は「核果」だが果実に翼がある。
 科名 エゴノキ科 Styracaceae
果皮をなめると あくが強いために喉がえぐくなるため。
属名 Styrax の由来は不明。



植物の分類 : APG IV 分類による ヒョウスイボク の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
基部被子植物 : アンボレラ、スイレン、アウストロバイレア
モクレン類 : カネラ、コショウ、モクレン、クスノキ
 独立系統 : センリョウ
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ
中核真生双子葉類: グンネラ、ビワモドキ
バラ上群 : ユキノシタ
バラ類 : ブドウ
マメ 群 : ハマビシ、マメ、バラ、ウリ、ブナ
 未確定 : ニシキギ、カタバミ、キントラノオ
アオイ群 : フウロソウ、フトモモ、アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク上群 : ナデシコ、ビャクダン、など
キク 類 : ミズキ、ツツジ
 ツツジ目 サガリバナ科、ツバキ科、ハイノキ科、エゴノキ科、ツツジ科 など
 エゴノキ科 ヒョウスイボク属、エゴノキ属、アサガラ属 など
シソ 類 : ガリア、リンドウ、ムラサキ、ナス、シソ、など
キキョウ類 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物(進化した植物 )           

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