イワガラミ 岩絡
Schizophragma hydrangeoides
Sieb. et Zucc. (1835)
APG分類: ミズキ目 アジサイ科 Hydrangeaceae
 旧 分類 :ユキノシタ目アジサイ科 Hydrangeaceae
属 名 : イワガラミ属 Schizophragma
          Sieb. et Zucc. (1835)
英語名: climbing-hydrangea ,
Japanese-hydrangea
原産地 : 北海道から九州までの山地、 韓国南部
用 途 : 欧米では造園材料として生産されているそうだ

分類標本園だけに植栽されている。

茎から気根を出して岩やほかの樹木によじ登るの様子を、実際に 木に絡ませて育てた方が 実態がわかってよいと思う。 何本も同じ木があるもの、例えば針葉樹林のスギなどだったら可能であろう。 
そうしないのは、ほっておくと繁殖して収拾が付かなくなるためかもしれない。

                 柱に絡ませた様子          2011.5.31
柱の高さは 1m70。

東大付属植物園 日光分園では、玉石を積んで作った正門の親柱にイワガラミを絡ませていて、とても雰囲気が出ている。
           日光分園正門     2000.5.2

                    葉の様子             2008.5.26
秋田植物園。 長い葉柄、尖った卵形の葉には鋸歯がある。

                    開花の様子             2008.6.1
ガクアジサイを見慣れた目には、装飾花の萼片が1枚だけというのがなんともユニークに映る。 装飾過多でない所がいい。


園内の位置は 分類標本園

名前の由来 イワガラミ Schizophragma hydrangeoides

イワガラミ
 岩絡 : 
岩や木に絡みついて大きくなるところから。 幹は径が8cmにもなるそうだ。
種小名 hydrangeoides :
アジサイ属に類する、アジサイに似ている  という意味。
 
Schizophragma属 イワガラミ属 :
ギリシア語の 「schizo 裂ける」 と 「phragma 隔壁」 の合成。
実(朔果)が乾燥して割れる様子を表しているという。 実際の実はまだ見たことがない。 宿題とする。
 
アジサイ科 : Hydrangeaseae
アジサイ属、イワガラミ属、ウツギ属、バイカウツギ属、その他が含まれる。 詳しい説明は 後日 アジサイ の項で。
 
日本植物誌 Flora Japonica 』 (1835) シーボルト、ツッカリーニ
シーボルトが日本からの帰国後刊行した本書には、2葉のイワガラミが掲載されている。 京都大学のデジタルアーカイブは「リンク自由」となっているので、ご覧いただきたい。

   ・ 第26図 イワガラミ
   ・ 第100図 イワガラミ以外の詳細図を含む

日本植物誌の図版は すべてにおいて各植物の特徴をよく捉えている。
 
旧 ユキノシタ科 :
エングラーによる分類ではユキノシタ科だった。
科を代表する名前「ユキノシタ」には数説があるが、多年草で、冬の雪に埋もれても、緑の葉が見え隠れするところから 「雪の下」、という説が良さそうだ。

5枚の白い花弁のうち 下側の大きい2枚を「雪の舌」 などというのは論外である。
ユキノシタ Saxifraga stolonifera
kasuga@mue.biglobe.ne.jp
ユキノシタは花の写真がないので、春日健二さんの『日本の植物たち』からお借りした。 
茎や葉には 赤褐色の粗い毛がある。
葉柄の毛


撮影:高橋俊一

旧ユキノシタ科には、形態は似ているが よくわからない様々な植物が分類されていて、いうなればメチャクチャだった。

遺伝子分析によってユキノシタ目の混迷状態が明らかになり、アジサイ科はミズキ目に分類された。 (下記、植物の分類 一覧表を参照)
 


 植物の分類  APG分類による イワガラミ の位置

エングラーの分類までは、アジサイ科の各属は ユキノシタ科に含まれていた。
クロンキストの分類では、基本的に草本はユキノシタ科に、木本を「アジサイ科」として独立させたが、大きなグループ 「目 もく」としては「バラ目」のままだった。

APG分類による 新しいアジサイ科はまったく違う位置 ミズキ目となった。 花の構造などの見た目だけでは騙される、というわけだ。

原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 バラ目   トベラ科、スグリ科、ベンケイソウ科、バラ科、ユキノシタ科、
  など アジサイ科( ミズキ目に移された↓)
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
ミズキ目   ミズキ科、ヌマミズキ科、アジサイ科
アジサイ科   ウツギ属、アジサイ属、バイカウツギ属、イワガラミ属
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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