ツクシカイドウ 筑紫(?)海棠
Malus hupehensis Rehd. (1933)
← Pyrus hupehensis Pamp. (1910)
科 名 : バラ科 Rosaceae
属 名 : リンゴ属 Malus Miller (1754)
英 名 : Chinese crab apple, Hupeh crab, tea crab apple
中国名 : 湖北海棠 hu bei hai tang
原産地 : 中国 湖北省ほか 各地。台湾
用 途 :
若葉を 茶の代用品として使う、あるいは 使った。

以前は並んで二本あったが、一本は枯れて伐採された。

樹 形     2009.4.19.
高さ 約7m。
2007.4.29          幹の様子         2012.11.27
リンゴ系の幹。均一に剥げずにまだら模様となる。

葉と花の様子       2008.4.27.
柔らかな葉、真っ白の花。最初の命名者は「ナシ属」としてしまった。

秋の紅葉       2012.11.27.
2012年は 果実が皆無だった。

鈴なりの実             2013.10.10.
2012年に生らなかった分 2013年の実の数はすごかった。

枝ごと落ちた実       2013.10.10.
植物園では枝を折ったりするのは厳禁だが、ちょうど枝ごと落ちた実が朽ちかけていた。これならいいだろうと、実を切ってみた。

種子と果実の断面
当然のことだが、リンゴを小さくした状態。ただし 萼の跡は残っていない。
2007.12.23         冬の実の様子        2011.12.28
赤い実がいつまでも残る。鳥は実を食べないようだ。酸っぱいからか?

いつまでも実が残る様子       2008.1.4.


2012年に根元で伐採された もう一本
左の写真で 奥に枝を広げているのが、健在の木。芯が腐ったのに加えて 葉の食害が影響してか、上部が完全に枯れてしまったために伐採された。


 
ツクシカイドウ の 位 置
写真@: C5 d

標識25 と 36 の中間

名前の由来 ツクシカイドウ Malus hupehensis

ツクシカイドウ : ツクシ の漢字・由来は未確認
「筑紫」カイドウ で、てっきり 日本にも自生するカイドウの一種だと思っていたのだが、原産地は中国・台湾のみだった。筑紫だとすれば、福岡に渡来して栽培されてこの名が付いた ということだろう。

 ← カイドウ(ミカイドウ 実海棠):
学名は Malus X micromalus Makino (1908)。
Xは雑種に付けられる記号。以前から雑種起源という見解があり、遺伝子解析で確定的となったようだ。
中国名は 西府海棠 xi fu hai tangで、古くから食用と観賞用として栽培されていたそうだ。
カイドウ
2009.5.10
牧野植物園
M. spectabilis ホンカイドウ と M. baccata シベリアコリンゴ の雑種と推定されている。花の写真がない。

なお「ハナカイドウ M. halliana」は 別種。

種小名 hupehensis : 湖北省の という意味
アメリカ農務省のデータベース『 GRIN 』によると、中国の中部・南部を中心に 湖北省(英語:Hubei)を含めた 17の省があがっている。

中国名 湖北海棠 hu bei hai tang :
種小名と同じで、湖北省に産する 海棠。

Malus 属 :
・ リンゴのラテン名に由来する。  『園芸植物大事典』
・ ギリシア語の「リンゴ malon あるいは malos」に由来
  する。
    『花と樹の大事典』、『植物学名事典/牧野 ほか』

バラ科 Rosaceae :
ケルト語の 「赤色 rhod あるいは rhodd」 を語源として、古代にバラのラテン名となっていた。
バラ科の中は次の3つのグループ(亜科)に分けられる。
主な属として、
  ・ シモツケ亜科 :シモツケ属
  ・ サクラ亜科 :サクラ属、バラ属、キイチゴ属、
          ヤマブキ属
  ・ ナシ亜科 : セイヨウカリン属、ビワ属、ナシ属、
          リンゴ属 Malus 、ボケ属


植物の分類 : APG II 分類による ツクシカイドウ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所  バラ目 トベラ科、アジサイ科、ベンケイソウ科、ユキノシタ科、バラ科、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
バラ目  バラ科、グミ科、ニレ科、アサ科、クワ科、イラクサ科、など
バラ科  カナメモチ属、サクラ属、ボケ属、リンゴ属、ビワ属、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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