カラタチ 唐橘
Poncirus trifoliana Rafin. (1838)
← Citrus trifoliana Linn. (1763)
科 名: ミカン科 Rutaceae
属 名: カラタチ属 Poncirus L. (1735)
別 名: キコク
中国名: 枳 zhi、 枸桔
漢 名: 枳殻、枸橘
原産地: 中国大陸 揚子江上流とされる
用 途: 昔は泥棒よけのために、生け垣に使用された。温州ミカンやネーブルなどの台木とされる。

精子発見のイチョウの右奥にあるトイレの手前、分類表本園ともう一箇所、売店近くに植えられている。

@:イチョウのトイレ横
精子発見のイチョウの横のカラタチは 周囲の木と一体になっていて、樹形を表すような写真を撮ることができない。右奥の白い壁がトイレである。

A:売店近くのカラタチ          2015.8.15.
売店から西方向に崖線を下りる階段のところ。木の後ろに生えているため、よっぽど注意していないと気が付かない。ただし、名札なし。

分類表本園の樹形 2012.4.24.
分類標本園なので 当然剪定されているが、それでも通路にはみ出した枝のトゲは鋭く、注意が必要。

.2002.3.21   幹の様子 枝の様子  2013.10.30.
一年目は真っ青だった枝は、太くなるに従って表皮に縦筋ができて、薄茶色に変化していく。更に太くなっても割れることはなく、古い部分が濃い色のまま。

密集する枝   2015.8.15.
トイレ横の株は 真夏だというのに葉がほとんど無く、実も付いていなかった。少数だが 新たに芽が出ていた。


刺は何が変化したものか?

2015.4.9.             枝の刺            2013.10.30.


出芽と同時に 葉の腋に大きなトゲが出ている。このために まずは枝が変化したもの と考えてしまう。ところが秋になると、トゲの腋(枝側)に冬芽が生じ、翌年には 花が咲くか、左の写真のような枝が出る。このため トゲは、翌年に出る枝の「第1葉」が変化したもの、とされている。

強いて別案を考えるなら これらは「複芽」で、一年目の芽は刺となり、二年目にふたつめの芽が伸びる となろうか。

葉の様子             2015.8.15.
毎年のことだが 葉は虫に食われてまともなものが無いが、「トゲ」は食われることがない。固く変身したのはそのためだったのか? 葉緑素はあるので 光合成をしているはずだ。
葉はミカン類にはない「三出複葉」。

花         2012.4.24.
前年のトゲの腋に ひとつ、まれに2花を付ける。
花芽の場合もトゲは「第1葉」ということになる。この様子を見ると「複芽説」も一概に否定できなくなる。

開 花                2012.4.24.


 へら型の花弁が 通常5枚。
 時に 7・8枚にも。

子房には初めから毛がある    2012.4.24.

短い果柄        2011.5.4.
花柱は短期間で落下する。実が大きくなると 果柄はほとんど見えなくなり、まるでトゲに刺さっているように見える。

青い実        2015.8.15.
2015年はトイレ横の木にひとつも実が生っていなかったが、売店近くの木にはある程度 付いていた。毛が生えているため、実の周りが白く見える。

黄色い実       2012.10.11.
トイレ横のカラタチ。概して実の付きは良い。成熟しても毛は付いたまま。
2012.10.31
晩秋になると どんどんと落果する。サイズは 3〜4センチ。

縦横断面       2011.11.5.
筑波植物園観察会で拾った実を。香りは良いが、舐めてみると苦くて酸っぱくて、食用にはならない。種子多数。


 
カラタチの 位 置
@: B9 d トイレの手前(サザンカ園の中)
A: E11bd 標識42の角、木のうしろ
B: 分類表本園、売店から12列目 右側

名前の由来 カラタチ Poncirus trifoliana

和名 カラタチ : カラタチバナ 唐橘 の略形
タチバナを国産と考え、中国産の本種をカラのタチバナとしたものが、短縮された形である。
別名 キコク は、古くに渡来した漢名 枳殻 を音読みしたもの。

種小名 trifoliana : 三枚葉の
本種の特徴である 三出複葉 に由来する。一般的な柑橘類は、ほとんどが「単葉」。

Poncirus 属 :
シトロンの一種に対するフランス名 poncire にちなむ。
             『園芸植物大事典/小学館』
ミカン科ミカン亜科には4つの属がある。その多くがミカン属であり、約150種。キンカン属とゲッキツ属はともに数種で、カラタチ属だけが「カラタチ」一種のみの単型属である。ミカン属との違いを調べてみた。

部位 カラタチ属 ミカン属 備 考
落葉 常緑
 葉柄に翼が
 あることが
 多い
三出複葉 単葉(ユズ)
 右写真は
 ダイダイ
5枚 (4)〜5裂
雄しべ  右写真は
 ユズ
花糸は離生  花糸が合生することがある
子房  右写真は
 ユズ
毛がある 無毛か わずかに有毛
果汁 油脂が含まれる 油は無い


ミカン科 Rutaceae :
科名として ミカンの名が付いているが、基準となる属 Ruta 属は「ヘンルーダ属」である。

『園芸植物大事典』によると Ruta は、下の写真「ヘンルーダ」の古代ラテン名に由来する とあるが、Ruta の意味は不明である。
ヘンルーダ 花の詳細

小石川植物園

撮影は5月27日

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ