カ リ ン 花 櫚
Pseudocydonia sinensis C.K. Schneid. (1906)
← Chaenomeles sinensis Koehne (1890)
← Pyrus sinensis Spreng. (1816)
← Cydonia sinensis Thouin (1812)
科 名 : バラ科 Rosaceae
属 名 : カリン属 Pseudocydonia 
C.K. Schneid. (1906)
中国名 : 木瓜 mu gua
原産地 : 中国北部、湖北省・浙江省
用 途 :


庭木として栽培される。
実は生では食べられないが、ジャム・ゼリー・砂糖漬けにされ、焼酎でカリン酒を作る。
風邪や咳によいとして、のど飴に使われる。

材は床柱・家具に使われる。 果実はそのまま室内に置いて香りを楽しめる。

独特の幹の形と樹皮。 植物園の奥にあるカリン林は、ほかとは違う雰囲気がある。 本数が多く木が大きい。 生る実の数も膨大で 近年は正門でお持ち帰り用に箱に山積みされる。 2011〜12年は特にたくさん生った。

               @ : 春のカリン林 花が咲いている          2007.3.31

   2007.12.1                      樹 形                       2007.3.18  
落葉樹だが、12月になっても葉が残っている。  右は芽吹き始めた頃。
木の高さは どれも 6〜7m ぐらい。

  2008.1.4               幹の様子             2010.11.21
まだら模様は 緑や銀灰色など変化に富み、とても美しい。 部分的に茶色くなったものが、5月下旬に剥がれ落ちる。 色の違いから判断すると、同じ場所は4年に一度ぐらい剥がれるようだ。   次の写真の黄緑のところが 落ちた部分。
                    剥がれ落ちる樹皮           2011.5.27

若い枝にはトゲ状の枝? が

  2015.3.21                     つぼみ と 花                      2005.4.9
花芽は 膨らむ前からピンクに色付く。 この年は遅めの開花だった。
                  花          2005.4.9
花のサイズは 3cm弱で小さく、満開でも遠くからは目立たない。

                     カリンの実             2008.1.4
早くに落ちるものから いつまでも落ちないものまで様々だが、カラスに食われたり落ちた時の打ち身があったりで、きれいなものはほとんどない。

植物園の植物や実はいっさい採取禁止だが、以前はカリンに限って 正門に籠を用意して来園者に持ち帰ってもらっていた。

今は 植物園の整備を進めるための ライフィングリーン計画の一環で、東京大学 「植物園のど飴」の原料として使うために、毎朝収穫されている。

植物園のど飴
カリンのほかに、イチョウユズが使われており、3色飴となっている。
園内の売店で販売中。

実の断面
もらって帰った実を切ったもの。 直径は 左 8cm、右 7cm。
果肉は硬く、水分も少ない。 種子は リンゴに似ているが、数が凄い。


 
カリン の 位 置
写真@ : B3 d
20番通り突き当たり、標識26番の奥

名前の由来 カリン Pseudocydonia sinensis

カリン
 : 別の植物名の転用
木目が、建築用材として重用されている マメ科のカリンに似ているため。
『園芸植物大事典』
園芸植物大事典では似ているというその種を Ormosia henryi としているが、『朝日百科/植物の世界』 と Wikipedia では Pterocarpus indicus インドシタン としている。
ここでは 後者とし、後日 詳しい記述を掲載したい。

種小名 sinensis : 中国の という意味
原産国を表している。

Pseudocydonia
属 : マルメロ属に似た という意味
pseudo は「ニセの」、cydonia はマルメロ属 で、本種がマルメロ属によく似ているが いくつかの違いがあるため、別属としたもの。
その違いは、
  ・ カリンの果実には毛が無い
  ・ カリンには葉の裏に毛が無い
  ・ 果実の形が違う
  ・ カリンの樹皮は剥離する         などである。

マルメロ属あるいは ボケ属 Chenomeles属 に含める見解もある。

マルメロの実 マルメロの図







図は Wikipedia より



植物の分類 APG II 分類による カリン の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所  バラ目  トベラ科、ベンケイソウ科、ユキノシタ科、バラ科、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
 バラ目  バラ科、グミ科、ニレ科、アサ科、クワ科、イラクサ科、など
バラ科  モモ属、サクラ属、リンゴ属、カリン属、バラ属、キイチゴ属、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ