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科 名 : | イチイ科 Taxaceae | |||
属 名 : | カヤ属 Torreya Arn (1738), nom.cons. |
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中国名: | 日本榧樹 ri ben fei shu | |||
英語名: | Japanese totteya | |||
原産地: | 本州は山形県・宮城県以南、四国、九州 | |||
用 途: | 庭木、建築材、桶、特に碁盤材として有名。 種子を食用、採油、薬用とする |
日本特産の針葉樹で、雌雄異株。小石川植物園には 針葉樹林に雌雄のペアがあり、そのほかにも雌株が一本、不明が一本ある。 |
①:60番通りのカヤ 2013.9.5. |
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61番の標識から ほんの15mほどの右手。この写真では木が多くてわかりにくいが、真下に行けば名札もよく見え、手に取れる所に枝も枝垂れている。 ところが、見た範囲では実が生っておらず、雄花もできていないので、雌雄は不明。雌株のような気がするが・・・・。 |
②:30番通り左側の雌株 |
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標識35番 震災記念碑から日本庭園に下りていく緩やかな坂(スダジイ坂)から撮ったもの。木の右側が 30番通りで、これは雌株。 |
③:奥の雌株 2013.8.20. |
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30番通りを奥へと進み、標識37番から見ると正面に見える。幹は中央に白い名札があるところ。高さ 約16m。左側にモッコクの枝が張り出してきている。右手前はガビハナミズキ。 |
針葉樹林の2本 2012.8.9. |
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↑ ④:雄株 ③:雌株 ↑ 奥から振り返って見たもの。雄株の方は 高さ 約20m。両方ともに 下枝が枝垂れているので、観察ができる。 |
④ 雄株 幹の様子 ③ 雌株 2012.5.8. | |
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左の写真、苔むした雄株の奥に見えるのが 雌株。雌株は 根元を踏みつけられないように、周囲に生け垣がある。 カヤの実は 受粉から1年半掛けて大きくなる。大きくなるのは2年目に入ってからだが、一年間の様子を同時進行で見ていこう。 2012年と13年 両方の写真があるので、日付はあくまで参考に。 |
③ 雌株:葉の様子 2013.3.8. |
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葉はほぼ十字対生するが、ほとんど長さのない葉柄部分でねじれて、日を受けるために水平に並ぶ。葉は同じ属のイチイやイヌガヤよりも硬く、先端が尖って少し痛い。長さは 2~3センチ。 |
④ 雄株:葉の裏側 2013.3.8. |
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裏には2本の白い気孔帯がある。昨年の枝の葉腋にたくさん付いているのは、大きくなってきた雄花序。 |
③ 芽鱗に包まれた冬芽 2013.3.22. |
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④ 膨らんできた雄花序 2013.4.3. |
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総苞を押し広げて 雄しべのかたまりが顔を出してくる。 |
④ 成長して花粉を出し始めた雄花 2011.4.26. |
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葯が開くと 黒っぽい色となる。 |
④ 満開の雄花 2013.4.23. |
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③ 新芽とともに成熟した雌花が 2013.4.23. |
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雌花は新しい枝の基部に付く。裸子植物特有の「受粉滴」を出しているのが見えた。種子植物では雌しべの柱頭が湿っているものがあるが、それと同じ働きをする。 |
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裸子植物は一般に風媒花で、花粉は雌花から飛び出している滴に付着する。受粉滴は、ある時期に中に吸い込まれると考えられる。 各葉腋に2個ずつ付く胚珠のうち、種子として大きくなるのはどちらか片方だけ。 |
③ 伸び出した今年の枝 2012.5.8. |
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昨年受粉した種子▼は、少しだけ大きくなってきた。3年目の枝↑は赤茶色に変化している。 |
③ 大きくなってきた実 2012.5.31. |
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種子は初めから仮種皮(かしゅひ)に包まれたまま成長する。その基部に数枚の鱗片葉がある。 仮種皮は、珠柄(胚珠の付け根あたり) または胎座が肥大して種子を覆うもので、種衣(しゅい)とも呼ぶ。 |
③ ぐんぐん成長する種子 2013.6.18. |
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幅14mm 長さ25mm まで成長した昨年の実。春に受粉した実▲の大きさは ちっとも変わらない。 |
③ その後はあまり変化無し 2013.8.20. |
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もちろん 内部で種子が充実しているはず。 |
④ 雄株では早くも来年の雄花を準備 2013.8.20. |
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とにかく、成長に時間をかける木。緻密な材ができるのも、少しずつしか成長しないためである。 |
③ 仮種皮が裂ける 2008.10.5. |
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種子が成熟しても、仮種皮は緑のままで落下する。 |
③ 仮種皮の様子 2012.10.8. |
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仮種皮は繊維質で、落ちている種子を触ると簡単にくずれる。種子は明るい茶色で硬い種皮に包まれている。 |
種子の様子 | |
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種皮を石で割ってみると 中にもう一枚皮があるので、外種皮ということになろう。内種皮は襞がある。切るだけで油がにじみ出てくる。煎った方がおいしいそうだ。 |
④ 来年の雄花 2012.10.11. |
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8月の時に較べれば、大きくなっている。 |
カ ヤ の 位 置 |
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写真①: | E14ab | ● | 60番通り右側、雌雄不明 |
写真②: | D6 a | ● | 30番通り左側、雌株 |
写真③: | C3 d | ● | 針葉樹林、30番通り右側、雌株 |
写真④: | C3 bd | ● | ③の先、雄株 |
名前の由来 カ ヤ Torreya nucifera | |
カヤ : | |
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榧 : | ||||||
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種小名 nucifera : 堅果のある | |
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Torreya 属 : 人名による | |||||||||
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命名年 | 学名 | 命名者 | 備 考 |
1735 | Cyperus | Linn. | カヤツリグサ属 |
1819 | Torreya | Rafin. | すでに定義されていたカヤツリグサ属に対して Torreya の名を 発表してしまい、この時点で Torreya が無効な名となる |
1838 | Torreya | Arn. | カヤ属 として Torreya taxifolia フロリダガヤ を記載 |
一般に広まったために、属名が「保留名」として認められた |
保留名 とは: |
たとえ イチイ科でなくとも、ある属名が (この場合は Torreya がカヤツリグサ属として) 、無効なものとして使われてしまっている場合には、後から
同じ属名を使うことはできない。 この規約は近年になって決められたものであるため、それまでに普及してしまった多くの属名が、「保留名」として認められている。 なお 種小名は、属が異なっていれば 同じ名を使える。 |
イチイ科 : | ||||||
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植物の分類 : | APG II 分類による カヤ の位置 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
マツ目 | マツ科、ナンヨウスギ科、マキ科、イチイ科、ヒノキ科、など | ||||||
イチイ科 | イヌガヤ属、イチイ属、カヤ属 | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | ||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群 : | |||||||
バラ亜綱: | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | ||||||
マメ 群: | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
アオイ群: | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群 : | |||||||
キク亜綱: | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
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