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科 名 : | サクラソウ科 Primulaceae | |||
旧科名 : | ヤブコウジ科 Myrsinaceae | |||
属 名 : | ヤブコウジ属 Ardisia Swartz (1788) | |||
中国名: | 朱砂根 zhu sha gen | |||
原産地 : | 本州関東以西、四国、九州、南西諸島 朝鮮半島、台湾、中国、フィリピン、東南アジア諸国、インド |
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用 途 : | 実を観賞するために植えられる。 |
背丈が小さいので夏は目立たないが、赤い実を付ける冬には 園内各所で育っていることに気が付く。 標本園以外には 名札はない。 |
@:モチノキのマンリョウ 2013.1.8. |
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正門をはいってメインスロープを上りだすと、すぐに一度折れ曲がる。その角はソメイヨシノで、その隣のモチノキの足元にマンリョウが生えている。高さ 約70センチ。 |
A: 分類表本園 2014.5.15. |
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林内に生える植物であるため、分類表本園では日除けが付けられている。手前 ヤブコウジ、中央が マンリョウ、奥は イズセンリョウ。 |
幹の様子 |
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幹といっても 径1センチに満たない。地面から直立して、上部で小枝を出す。すぐ脇の地面から新しい茎が伸びてくるが、それぞれの寿命はどれぐらいなのだろうか? |
枝の様子 |
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葉の様子 2011.1.5. |
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上から見たところ。葉は長さ 10センチ程度で、周囲が波打っている。 |
@: 新緑の様子 2014.6.26. |
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主軸と同時に側枝が伸び出す「同時枝」。花序は前年枝の茎頂につき、すでに十分に成長して、つぼみが大きくなっている。 |
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花の様子 2012.7.22. |
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花序はひとつずつつく。花柄の先で線香花火のように分かれる「散形花序」だが、二段階になることもあるので、「複散形花序」である。 (次の写真の▼部分) |
花の詳細 2012.7.22. |
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左下○内に 若い果実ができている。 白山神社で |
マンリョウの実 2011.1.5. |
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「複散形花序」であるため、かたまらずにぶら下がる形がよい。 |
シロミノマンリョウ 白実の万両 Ardisia crenata Sims f. leucocarpa Ohashi |
果実が白いマンリョウ。 名札は表記の通り 「 f. 品種」 となっているが、現在では栽培品種扱いだろう。 (未確認) |
B: シロミノマンリョウ 2014.2.6. |
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針葉樹林に植えられている。幹の太さの割に葉の量が多く、さらに実が付いて 倒れてしまっているものもある。 |
黄味がかった白実 2014.2.6. |
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実の付き方 2014.2.6. |
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直立する一本の幹に付く葉の腋から、花序(果序)が出ている。 |
青い枝 2014.5.15. |
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マンリョウに較べて 枝の色が青い。白花種、白実種には よくある傾向。 |
マンリョウ の位 置 |
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写真@: | F15 a | ● | メインスロープ左側、モチノキの足元 |
写真A: | ● | 分類表本園、井戸側、向かって右手 | |
その他 園内各所 | |||
写真B: | C3 a | ● | シロミノマンリョウ、針葉樹林内 |
名前の由来 マンリョウ Ardisia crenata | |
和名 : マンリョウ 万両 |
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和名 | 別名 | 中国名 | 科名 | 学名 | 備考 |
マンリョウ 万両 | 朱砂根 | ヤブコウジ科 | Ardisia crenata | 本種。 日本、台湾、中国、インド | |
センリョウ 千両 | 草珊瑚 | センリョウ科 | Sarcandra glaber | 日本、台湾、中国、その他熱帯 | |
カラタチバナ | 百両 | 百両金 | ヤブコウジ科 | A. crispa | 日本、台湾、中国中南部 |
ヤブコウジ 藪柑子 | 拾両 | 紫金牛 | ヤブコウジ科 | A. japonica | 日本、台湾、中国 |
アリドオシ 蟻通し | 壱両 | 虎刺 | アカネ科 | Damnacanthus indicus |
日本、台湾、中国、インド |
すべて 日本と中国にも産し、冬に赤い実を付ける という共通点がある。 都合のよい事に、一箇所あたりの実の数は マンリョウが一番多く、次第に少なくなっていく。 |
センリョウ | カラタチバナ |
![]() 千 両 |
![]() 百 両 |
ヤブコウジ | アリドオシ |
![]() 拾 両 |
![]() 壱 両 |
いつ頃から「マンリョウ」と呼ばれるようになったか。 そのひとつの参考となるのが 1827年(文政10年)に出版された『草木奇品家雅見』である。 江戸青山の植木屋 金太が、斑入りなどの珍しい植物を関根雲停らに描かせたもので、3巻からなる。 冒頭の「巻中草木和漢通稱」一覧表に、偶然にも 前表の中の 3種が並んでいた。 (下図、傍点は筆者) |
『草木奇品家雅見』 「巻中草木和漢通稱」の 1ページ目 部分 |
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・ | マンリョウ は 「まん里やう」と書かれており、「万両」ではない。 漢名は「珠砂根」。 同書の他の部分には「万両」の表記もある。 |
・ | カラタチバナ は 「たちばな」、漢名は「百両金」。 |
・ | アリドオシ は 「ありどふし」、漢名は「虎茨」。 |
現在と ほとんど変わりは無い。 |
以下は 勝手な想像だが、あながち間違ってはいないのではないか? |
漢詩や英語の歌詞では「韻を踏む」という文化がある。しかし、同音異義語の多い日本語の方が 「掛詞、語呂合わせ、駄洒落、比喩」といった言葉の遊び心に満ちているのではないだろうか? 園芸品種の栽培熱は、江戸時代の文化・文政期に高まった。タチバナ(カラタチバナ)、ヤブコウジ、マンリョウは、斑入り品種や葉変わり品種に爆発的な人気が集まったことが知られている。 タチバナ(カラタチバナ)の漢名が「百両金」だったため、これに合わせて マンリョウを「万両」、センリョウを「千両」、ヤブコウジを「拾両」とした。 さらにアリドオシを「壱両」として、壱から万までそろえた上で、アリドオシとセンリョウ・マンリョウを寄せ植えにして、正月の飾り物として販売したそうだ。 小判など見たこともない庶民でも、「千両、万両、有りどおし」という 縁起の良い語呂合わせを愛でながら、正月を過ごすという趣向である。 |
種小名 crenata : 鈍鋸歯のある | |
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Ardisia 属 : | |
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ヤブコウジ属 : 藪に生えるコウジ 柑子 の意味 | ||
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ピンクの花柄 | 落下した花 |
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東北大学薬学部 薬用植物園 |
ヤブコウジ科 Myrsinaceae : | |||||
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← タイミンタチバナ 大明橘 Myrsine neriifolia |
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植物の分類 : | APG II 分類による マンリョウ の位置 |
クロンキストノ分類では ツツジ目の中で、ヤブコウジ科は独立していたが、APG分類では サクラソウ科に含められた。 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | ||||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | |||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | |||||||
大葉植物(シダ類) : | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど | |||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | |||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | |||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | |||||||
イチョウ類 : | イチョウ | |||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | |||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | |||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | |||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | |||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など | |||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | |||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | |||||||
バラ目 群 : | ||||||||
バラ亜綱 : | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | |||||||
マメ 群 : | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | |||||||
アオイ群 : | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | |||||||
キク目 群 : | ||||||||
キク亜綱 : | ミズキ、ツツジ、など | |||||||
ツツジ目 | サガリバナ科、ツバキ科、サカキ科、ツツジ科、サクラソウ科、など | |||||||
以前の分類場所 | ヤブコウジ科 | ヤブコウジ属、イズセンリョウ属、タイミンタチバナ属、など | ||||||
サクラソウ科 | ルリハコベ属、ヤブコウジ属、シクラメン属、サクラソウ属、など | |||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | |||||||
↓ | キキョウ群 : | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | ||||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ |