シナマンサク 支那満作
Hamamelis mollis Oliver (1888)
科 名: マンサク科 Hamamelidaceae
属 名: マンサク属 Hamamelis Linn. (1737)
中国名: 金縷梅 jin lu mei
英 名: Chinese witch hazel
原産地: 中国中部 (安徽省・湖北省・湖南省・江西省・四川省・浙江省 など)
特 徴: 枯れた葉が開花時まで残る。
用 途: 公園樹、庭園樹

正門を入ってすぐの、大きな案内地図の横に枝が伸び出していて、その裏には4・5本が植えられている。ロウバイと共に早々と開花し、冬の来場者の目を楽しませている。
園内の上の段にある 日本のマンサクとも較べたい。なお、古くに撮った写真が多い。

葉が残るのが特徴      2002.1.14.
マンサク   2002.2.23.
花が咲き終わる頃まで葉が落ちないことが多いが、枝によっては、トップの写真のようにきれいに無くなってしまうこともある。
マンサクの開花開始はシナマンサクよりも遅い。花梗が長めで、花弁と萼片の色がうすい。


冬芽 と 花序   2011.1.11.
蕾が動き出したところ。前年枝(から上)は4節伸び、二ヵ所の葉腋に頭状花序をつけた。小花の数は3〜4個。冬芽は托葉芽鱗で、頂芽と腋芽がひとつずつ。
花弁が伸びる       2011.2.8.
4個の細長い花弁は内巻きで収納されている。萼の外側は毛で覆われており、葉とともに種小名 mollis(軟毛のある)の由来となっている。
典型的な短枝の開花例     2011.2.8.
多くの側枝では前年の伸びで2葉をつけ、その葉腋に花序をつけた例。
花(両生花)の詳細     2012.2.4.
4数性。雄しべの基部に小さな「仮雄ずい」があるそうだが、未確認。中央に先が2裂した柱頭が見える。萼の内側は毛が無く、光っている。
生育良好       2016.3.4.
この側枝では前年枝に5個もの花序がついていた。
樹 形          2022.3.1.
低木で株立ちとなる。開花中で枯葉がついたまま。冬芽はまだ伸び出していない。
樹 皮        2012.2.4.
筑波植物園。太いので約7センチ。太くなるにしたがって皮目が目立ってくる。
側枝の頂芽の伸長     2012.4.24.
開花終了後に伸び出す。側枝では頂芽だけのことが多い。
偽短枝につく新葉          2007.4.10.
葉裏は軟毛で埋め尽くされる。托葉・葉柄・枝にも毛が生える。
葉の基部は左右が非対称。側枝では毎年2〜数葉をつけ、短枝*1)ほどではないが、節間が短く、短枝化した小枝を偽短枝*2) と呼ぶ。
*1) 短枝:節間の成長が無く、葉が束生する側枝 『植物用語事典』
*2) 偽短枝:『樹木生活史図鑑』
.2016.4.6 伸び出した冬芽 長枝の伸長   2025.4.21.
左:頂芽と頂側芽。托葉芽鱗で、自身の葉身と次の芽を包んでいる。 右:順次開葉していく。托葉はじきに脱落する。
新 緑        2025.5.10.
前掲写真と同じ場所。茶色い葉は新葉で、何が原因で枯れたのかかはわからない。この左側にも2株がある。
長枝の伸び方      2025.5.10.
が年枝境。前年枝は4節伸び、今年も4節伸びている。前年枝のすべての腋芽が伸びている。まだ明確な蕾はできていない。写っている一番大きな葉で 13cm。
葉 裏                 2025.5.11.
葉裏はかなり白い。触ると両面ともザラザラしているが、肉眼では(特に老眼では) その状態がわからない。
葉裏 葉表
拡大率10倍のルーペを当てて撮ると、星状毛が葉表にもたくさん残っているのがわかった。数字は1mmを示す。

幼 果        2011.6.3.
よく結実する。表面にも毛が残るために、埃や黄砂などが溜まりやすい。
幼果の詳細
マンサク   2011.5.8.
子房は2室でほぼ上位。柱頭は残っているが、折れ曲がって茶色くなっているために、目立たない。
(小石川植物園の)マンサクの結実はごく少ない。成長度合いが違うが、ピンとした赤い柱頭が際立つ。
熟した種子の写真が無い。
黄葉したマンサク 2001.11.24.


 
シナマンサク の 位 置
F15 ●● メインスロープの上り始め 右側、5・6株

名前の由来 シナマンサク Hamamelis mollis
 和名 シナマンサク :
中国原産のマンサク。
マンサク H. japonica は日本固有種。
マンサクの由来には2つあって、
    @ まず咲く の意味
    A 満作 の意味
と、まるで異なる説である。
@は、開花が現在の暦で2月〜3月、つまり旧暦では正月を迎えてから「真っ先に咲く」、あるいは 葉が出る前に「まず 咲く」ところから名付けられた、というもの。
花に関しては ウメ の方が 早いように思うのだが・・・。
Aの 満作 説は農民の「忌み言葉」によるものである。
春の山に早くから咲く花は美しいが、ほとんどの花は実を付けないために「シイナ花」とも呼ばれた。皆無ではなく少しは果実が生るのだが、咲く花の数からすると小石川の個体では1%もなさそうだ。
「シイナ・粃」は実の入らないモミのことで、「凶作」に通じることから嫌われて、反対の言葉である「満作」になった、というものである。マンサクの黄色い花が、黄金色に実った稲穂を連想させることも関係しているだろう。
「アシ」が「悪し」に通じることから「ヨシ」という別名が付けられている例もあるので、あり得ることである。
 中国名:金縷梅
シナマンサク および 中国での「マンサク属」の名に使われている。従って、マンサクに当てると誤用となる。
「縷」は、やっと目に見えるほどの細い糸のことで、マンサクの花弁を「金の糸」としたものである。
「梅」は早い時期に咲く花の代表、よい?香りがするので名付けたものだろう。
 Hamamelis マンサク属 : 
ギリシア語 hama (ともに、ギリシア語 同時) + melon または melo (ギリシア語 リンゴ・果実) の合成語。花と果実が同時につくことに由来するとのこと。
朔果が割れると、黒く 尖った楕円形の種子は、ほとんどが落下してしまう。
2室の各室にひとつずつの種子ができる。目立たなかった柱頭が、鋭く曲がった状態で残っている()。
 マンサク科 Hamamelidaceae :
以前に含まれていた Liquidambar フウ属や Altingia 蕈樹属は、フウ科として独立した。
マンサク属のほかに、トサミズキ属、マルバノキ属、イスノキ属、トキワマンサク属などがある。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ