マンサク 満作
Hamamelis japonica Sieb. et Zucc. (1843)
科 名 : マンサク科 Hamamelidaceae
属 名 : マンサク属 Hamamelis Linn. (1737)
中国名: 金縷梅 属 jin lu mei
英 名 : witch hazel
原産地 : 北海道から九州まで
用 途 : 公園樹、庭園樹



正門を入ってすぐの シナマンサク はよく目立つが、国産の「マンサク」は人目に付きにくい。場所は ユリノキの 少し奥。
上の段で奥に向かう時、多くの人はメインストリートである 20番通りを歩くために、マンサクのある 10番通りは人が少ないためである。

            花期のマンサク      2011.3.20


花弁 萼 ともに4枚。
萼が赤い。

開花前の花弁は
巻き物状に丸まっていて、伸びた後も皺がある。
シナマンサクに較べると、花弁が細く 色も薄い。

幹 の 様子
高さは 3 〜 5mにしかならないが、樹勢は強くて株立ち状となる。

 2011.4.14  伸び出した葉        大きくなった葉  2011.5.8

          @:斜めに広がる 樹形     2011.5.3
新緑の様子。左側の株立ちの木がマンサクである。高さは 約 4m。
ここから奥は「秘密の10番通り」である。
別に秘密でも何でもないのだが、とにかく人通りが少ない。

 2011.4.14          数えるほどしかない実           2011.5.8
子房は2室あって、通常 各室に1個の種子ができる。

黄葉したマンサク      2013.12.4.


 
マンサク の 位 置
写真@ : B6 d 10番通り 左側
 分類標本園 売店側から 9列目、右から2番目

名前の由来 マンサク Hamamelis japonica

和名 マンサク :
マンサクの由来には2つあって、
    @ まず咲く の意味
    A 満作 の意味
と、まるで異なる説である。
まず咲く」説は、開花が現在の暦で2月〜3月、つまり旧暦では正月を迎えてから「真っ先に咲く」、あるいは 葉が出る前に「まず 咲く」ところから名付けられた、というものである。
花に関しては「ウメ」の方が 早いように思うのだが・・・。
満作」説は農民の「忌み言葉」によるものである。

春の山に早くから咲く花は美しいが、ほとんどの花は実を付けないために「シイナ花」とも呼ばれた。皆無ではなく少しは果実が生り黒い種子ができるのだが、咲く花の数からすると 1%もなさそうだ。

「シイナ・粃」は実の入らないモミのことで、「凶作」に通じるということから嫌われて、反対の言葉である「満作」になった、というものである。マンサクの黄色い花が、黄金色に実った稲穂を連想させることも 関係しているのかも知れない。
イネとは直接関係がないが、「アシ」が「悪し」に通じることから、「ヨシ」という別名が付けられている例もあるので、あり得ることである。

中国名 : 金縷梅
「シナマンサク」 および 中国での「マンサク属」の名に使われている。
マンサクに当てると 誤用となる。

「縷」 はやっと目に見えるほどの細い糸のことで、マンサクの花弁を「金の糸」としたものである。梅 は早い時期に咲く花の代表として名付けたものだろう。

種小名 japonica : 日本の の意味 
原産地を表す。

Hamamelis マンサク属 : 
ギリシア語 hama ともに + melon リンゴ・果実 の合成。
花 と 果実が同時に付くことに由来する とのことである。

マンサクでは観察したことがないが、シナマンサクでの観察結果では、種子のほとんどは落下してしまう。まれに、真上を向いて開いた果実では 開花時まで種子が残っていることがある。
シナマンサク
果実には2個の種子ができるが、裂開する「朔果」であるため、ほとんどが落ちてしまう。

マンサク科 Hamamelidaceae
花の形や実の形が異なる属が含まれる科で、フウ属、マンサク属のほかに、トサミズキ属、マルバノキ属、イスノキ属などがある。


植物の分類 : APG II 分類による マンサク の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
以前の分類場所 マンサク目  カツラ科、フサザクラ科、スズカケノキ科、マンサク科、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
ユキノシタ目  ボタン科、カツラ科、マンサク科、ユズリハ科、ユキノシタ科、など
マンサク科  トサミズキ属、マルバノキ属、イスノキ属、マンサク属、フウ属など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ