オオモクゲンジ 大木欒子
フクロミモクゲンジ 袋実木欒子
Koelreuteria bipinnata Franch. (1886)
別 名: マルバモクゲンジ
     『朝日百科/植物の世界』、
フクワバモクゲンジ『園芸植物大事典』
異 名: Koelreuteria integrifoliola Merr. (1922)
科 名: ムクロジ科 Sapindaceae
属 名: モクゲンジ属
    Koelreuteria Laxm. (1772)
中国名:
原産地: 中国雲南省
用 途:  

園内には複数の木があるが、正門を入った坂道のすぐ右手、4本の大きな木が 毎年9月に黄色い花でいっぱいになると、よく目立つ。
英語名は golden-rain tree (黄金色の雨)である。

            ①:樹 形       2010.9.20


1999年11月 撮影 2001年10月 撮影 2007年3月
昔は左の写真のように手の届くところに枝があり、実の写真も撮れたのだが、一度下枝がバッサリと切られ (写真 中)、花や実は はるか彼方となってしまった。
10年近く経ったが状況はあまり変わっていない。

ここは通路でもないのだから少しは枝を残せないものか...。

台風被害    2011.10.6.
2011年9月21日の台風で 高い方が大きな被害を受けたが、一年を経て回復してきた。また左の木の下枝が伸びてきて、花が近くなってきた。


幹の様子

直径35cm

太くなると剥がれてくる。
直径 50cm
②:枝振り 落葉樹である

葉の様子 長さ 60 cm
裏返えしてあるのは別の葉だが、画面の端から端までで一枚の「2回羽状複葉」。
花序の様子 9月15日 御殿坂の眺め
よく見ると、黄色に赤い点が混じっているのがわかる。 地下鉄「白山」から正門へ向かう道。

花序の様子           012.9.19.

               花の詳細 落ちていた雄花         2010.9.15
花は、雌しべのない「雄花」と 雌しべがあって雄しべが不完全な「雌花」とが同じ花序に付く「雑居性」で、ここに写っているのはすべて雄花

花弁の長さは 7mm程度。反り返って咲く4枚の花弁の基部に「付属体」と呼ばれる突起があり、それが朱色になっている。

                 落ちてきた 雌花           2010.9.20
結実しなかった雌花が落ちてきた。雌しべの周りにある雄しべは退化していて、役に立たないようだ。
花の写真を撮っていると、サクラのように大量ではないものの、後からあとから 黄色いものが降ってくる。
英語名の「golden-rain」の意味はこれなんだ! と実感できた。

               ③:10番通り 背の高い木          2010.10.11
10番通りの2本は 下の木よりも花が遅め。


ピンクに色付く      2012.10.3.
袋が急速に大きくなり、初めに赤く色付く。

              実の 様子        1999.10.23.
やがて 色が褪せてゆく。

         若い実   1999.10.23       落ちた実を並べて 2008.1.19
果実は紙状の袋となる。左の果実はまだ成熟していない。
子房は3つあり、それぞれに2つの胚珠(種子のもと)があって、計6個の種子ができる。サイズは 約7mm。

側膜胎座 胞背裂開
3心皮の複合子房で、胚珠が心皮の縁辺に1個ずつ付き、心皮の背側が裂けてバラバラになるために、前掲右写真の形状となる。
福岡教育大学 福原先生の元図に加筆。利用許可 取得済み。


 
位 置
写真①②: F15 c 正門前の坂右手 計 6本
写真③: B8 bd 10番通り 左側、ムクロジの横
B7 b 10番通り 左側
F15 b 70番通り 左側、守衛所の裏

名前の由来 フクロミモクゲンジ Koelreuteria bipinnata

フクロミモクゲンジ 袋実木欒子 : 
モクゲンジの一種で 実が袋状になるため ではあるが、モクゲンジもほぼ同じような形の実を付けるため、適切な名前とは言い難い。

さらに、各種事典や植物園の名札を見ても「フクロミモクゲンジ」の名が見あたらない。モクゲンジ(K. panicurata
10~12m)よりも大きくなるところから、オオモクゲンジの名前が多かった。
植物園の名札も ひとつは オオモクゲンジ に取り替えられた。

種小名 bipinnata : 2回羽状の という意味
モクゲンジが1回羽状複葉なのに対して、フクロミモクゲンジは2回偶数羽状複葉である。

属名 Koelreuteria : 人名に由来する
ドイツ カールスルーエ 大学の植物学教授の ケールロイター J. G. Köelreuter (1733-1806) を顕彰して名付けられた。
命名者は同世代のロシアの博物学者 ラックスマン (1737- 1796) である。

中国で布教活動していたイエズス会の宣教師から、1747年に送られたモクゲンジの種子をもとに分類記載されたとのこと。(Wiki. Eng.)
モクゲンジ属 : → 以下の モクゲンジ 参照

ムクロジ科 Sapindaceae : → 別項 ムクロジ 参照

 
オオモクゲンジ ・ フクロミモクゲンジ
 ← モクゲンジ Koelreuteria paniculata Laxm. (1772)
同じムクロジ科 ・モクゲンジ属。小石川植物園には無い。

原産地は中国、朝鮮半島南部であるが、古くから日本に伝わり、寺院の庭に植えられていた。中国名は「欒樹」であり、現在和名に当てている漢字「木欒子」は、欒樹の種子を指す。

種小名 paniculata は円錐花序の という意味で、花の付き方に由来するが、モクゲンジ固有の特徴ではない。
今から200年以上前、モクゲンジ属の初めての命名なので、いたしかたのないことである。

モクゲンジ モクゲンジの花と葉

オオモクゲンジと同じような黄色い花を咲かせる。違いは葉が複葉で鋸歯が有ること。

  ボストン アーノルド樹木園

モクゲンジの名の由来を 『日本大百科全書』を参考に調べて見た。
それによると 同じ科のムクロジと間違えて その中国名「木患子」を充てたため、その読み「モクカンシ」が モクゲンジ に転訛したということである。

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ