ウスギモクセイ 薄黄木犀
Osmanthus fragrans Lour. (1790)
科 名 : モクセイ科 Oleaceae
属 名 : モクセイ属
    Osmanthus Lour. (1790)
異 名 : Osmanthus fragrans Lour. (1790)
  var. thunbergii Makino (1927)
原産地 : 九州南部、東アジアの暖帯
用 途 : 庭園樹
香りの強い キンモクセイ に押されて、植えられる数は少ない。

 2012.10.11 学名を訂正

 
ウスギモクセイ の学名について
 2012年10月 学名を訂正
キンモクセイを書こうと思って GRIN Taxonomy for Plants /アメリカ農務省 を見直したところ、次項 「2011年1月時点」に述べるように、品種となっていたウスギモクセイの学名が 無くなっていた。

代わりに 異名 (正式ではない名前) として、
  Osmanthus fragrans var. thunbergii Makino
    ( = Osmanthus fragrans Lour. )
となっていた。
つまり ウスギモクセイ と ギンモクセイ は同一の学名であり、ウスギモクセイは ’ 栽培品種・園芸品種 ’ ということになった。

キンモクセイほどは色が濃くない 淡黄色の株が発見されて、それが育てられ増やされた結果 という事だろう。

これまで、色 や 形態 などの違いで 変種・品種・亜種などを定義していた。予想されたことではあるが、APG分類では 遺伝子解析による違いがなければ、同一種となってしまう。

今まで細分化の流れだった植物分類学は、統合の方向に向かっている。

 2011年1月時点の記述
植物園の名札は標記のようになっているが、1990年代に入って ウスギモクセイ・キンモクセイ・シロモクセイは、ギンモクセイ Osmanthus fragrans の「変種」ではなく 「品種」という見解が主流となっている。
    Index Kewensis
    朝日百科/植物の世界
    GRIN Taxonomy for Plants /アメリカ農務省
などはこの見解を採用しており、筆者もこれに倣うことにする。
なお、「品種」のランクは変種よりも下で、それぞれの違いがより小さいものに使われる。

ウスギモクセイの学名は 次のようになる。

Osmanthus fragrans Lour. (1790)
       form. thunbergii (Makino) T.Yamazaki (1991)

わかり易い言い方をすれば、ウスギモクセイは ギンモクセイによく似ているが、花の色や葉の形などが 少しだけ違う種類、となる。



小石川植物園では モクセイ科の植物 (レンギョウ、モクセイ、ハシドイ、ヒトツバタゴ など)を、70番通りに沿って植えている。

            @:ウスギモクセイ 樹形       2010.10.8
正門の方を見ている。 高さ 3m強。 70番通りと塀の間に 3本の雌株がある。

            @:塀の外から       2010.10.8
キンモクセイほど 匂いが強くない。 現在は、道路拡張・塀工事のために 大幅に剪定されてしまっている。

            @:満開の雌花       2010.10.8

葉の様子 と 花の付き方
葉のサイズはいろいろだが、大きいもので 15cm。 ギンモクセイ よりも葉の幅が狭い。 
花は葉の付け根に複数が房状にぶら下がる。 (総状花序)

           @:雌花の詳細        2010.10.8
雄しべはあるが、退化して機能していないのであろう。


            A:雄株の列植       2010.10.8
2006年ぐらいに植えられた 6本の雄株。  日当たりも良いので大きくなり、楕円形の樹形が顕著となっている。

              赤い新葉       2011.4.5

              葉の様子        2010.10.8

            A:雄花の詳細       2010.10.8
中心の雌しべが退化している。

            まだ熟さない 果実      2008.12.9
植物園では実が生っているのを見た事がない。 東池袋の児童公園で。 できる実の数は少ない。

 
ウスギモクセイ の 位 置
写真@: F12 bd 70番通り 左側、雌株 3本
写真A: G10 b-d 70番通り 左手 タイミンチクの奥、雄株 計6本

名前の由来 ウスギモクセイ

ウスギモクセイ 薄黄木犀 : 
淡い黄色の花が咲く モクセイの仲間。
 ← モクセイ 木犀
モクセイの中国での名は 桂 あるいは 木犀(mu zi むーしー)と呼ぶ。日本では 木犀を音読みして、モクセイと呼んだ。

木犀は、モクセイの樹皮が動物の「犀 サイ」に似ているところから。
ギンモクセイ
品種名 thunbergii : 人名による
以前は「変種名」であった。 その命名者は牧野富太郎で、日本植物学史上画期的な業績『日本植物誌』 (1784) を残したツュンベリーを顕彰したものである。
 

モクセイの命名の由来は 次のような経緯がある。

和名 名前 刊行物・命名者 備 考
1712  モクセイ Osmanthus asiaticus 『異邦の魅力』
    E. ケンペル
『植物の種』以前のため 無効名
1784  モクセイ Olea fragrans 『植物分類体系』14版
    ムレイ
ツュンベリーの研究を『日本植物誌』
よりも少し前に発表してしまう
1784  モクセイ Olea fragrans 『日本植物誌』
    ツュンベリー
ギンモクセイかどうかはっきりしない
  『異邦の魅力』を参考にしていたツュンベリーが Osmanthus属 を
  採用しなかったのは、恐らく、師リンネがOsmanthus属を定義して
  いなかったため。
1790  ギンモクセイ Osmanthus fragrans 『交趾植物誌』
    ロウレイロ
 正名
1927  ウスギモクセイ Osmanthus fragrans
   var. thunbergii
『植物研究雑誌』
    牧野富太郎
ウスギモクセイをギンモクセイの
 変種とする
  モクセイ(ギンモクセイ)の属名が Osmanthus に変わった事に
  よって、ツュンベリーの名が見えに くくなったために、牧野は
  変種名に採用して 顕彰したのではないだろうか?
1991  ウスギモクセイ Osmanthus fragrans
  form. thunbergii
『植物研究雑誌』
    山崎 敬
品種扱いに訂正

種小名 fragrans :
強い香りのある という意味。  モクセイの花の匂いによる。
Osmanthus 属 :
ギリシア語の osme (匂い)+ anthos (花) に由来。
 
モクセイ科 Oleaceae
モクセイ科の基準属は オリーブ属 Olea である。

オリーブの古いラテン語名による とも、ギリシア語の名前 elaia によるとも言われている。  「油質の」という意味のようだ。
オリーブ

 

植物の分類 APG II 分類による ウスギモクセイ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、など
中核真生双子葉類 ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
  シソ目  モクセイ科、イワタバコ科、ゴマノハグサ科、ゴマ科、
 キツネノマゴ科、クマツヅラ科、ノウゼンカズラ科、
 シソ科、キリ科、など
モクセイ科  トネリコ属、オリーブ属、モクセイ属、ハシドイ属、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ