ネムノキ 合歓の木
Albizia julibrissin Durazz. (1772)
別 名 : 様々な別名、地方名がある
APG分類: マメ科 Leguminosae
以前の科名:  ネムノキ科 Mimosaceae
異 名 :  Samanea saman
英 名 : mimosa-tree , silk tree
中国名: 合歓 (he huan)、夜合樹
原産地 : 本州以南
イランから南アジア
用 途 : 花木として植えられる
樹皮・花・根は漢方に使われる 

かつて 70番通り中ほどに、高さ10m以上の大木があったのだが、2009年あるいは 2010年に根元から伐採された。幹が傷んで倒壊の恐れがあったためだと思われる。
現在は分類標本園に植えられている。かつては枝葉の位置が高かったため、写真はおもに園外のものとなる。

               切り株        2010.9.20
切断面では半分以上が無くなっていた。

           かつての姿     2007.6.24
ちょうど 花が咲いている時の写真。

                幹の様子          2000.7.1
渋谷区神南

              葉の様子       2010.9.20
植物園。 切り株のすぐ近くに生えていたもの。 羽状2回複葉。

    分類標本園のネムノキ  2012.6.26
勢いが良すぎて 周りにはみ出している。冬には剪定されるだろう。

               花の様子        2000.7.25
アメリカ、ボストン郊外 12:50
ほのかな香りがして大好きな花のひとつであるが、咲き終わると しおれた花が残り、汚くなるのが難点。
              花の詳細        2001.8.19
自宅 13:17。 花弁はあるが目立たない。 丸まっていた雄しべが伸びる。

 2000.10.8             実の様子             2011.1.25
花の数に較べると、結実するサヤの数は少ない。


 
ネムノキが生えていた場所 
現在は 分類標本園にのみ 植えられている。 売店側から10列目、右から2つ目

名前の由来 ネムノキ Albizia julibrissin

ネムノキ : 眠りの木 が略されたもの
ネムノキ属の植物は 夜に小葉が閉じるために、ネムリノキ また 訛って ネブリノキと呼ばれた。

夜だけではなく、春の新芽が出てくるのも極めて遅い。 周囲がすっかり新緑となってから、ようやく芽が出て来るネボスケの木である。

ベランダのネムノキ 昼 と 夜
小葉だけでなく、全体が閉じる。

種小名 julibrissin
『植物学名辞典』/牧野富太郎を見ると、単に「東インド名」となっている。ネムノキの東インドでの呼び名 という意味であろう。

その意味については 不明である。
 
Albizia (または Albizzia ) ネムノキ属 :
18世紀のイタリアの自然科学者アルビッツィ (F. D. Albizzi ) を顕彰して付けたもの。
本来はアルビッツィのスペルから Albizzia とすべきであったが、命名者の Antonio Durazzini (18世紀)が Albizia と記載したため、誤った名前のままこれが正式の属名となってしまった。
 
中国名 合歓 : 
漢字の「合歓」は中国名そのままで、それに和名の「ネム」の読みをあてている。
前掲の写真のように、夜 葉がぴったりと合わさる特徴から、中国では夫婦和合の象徴となり「合歓」という色っぽい名前が付けられた。

これを日本語で音読みすると「ゴウカン」となり、「強姦」を連想してしまうのは別としても、夫婦が同衾するという意味が、ネムノキの花のイメージと合わないこと、甚だしい。

合歓の名前は古くから伝わっていたらしく、万葉集にも詠まれている。
芭蕉の「象潟や 雨に西施が ねぶの花」の句は雨にけむる様子で茫洋とした美しさが出ているが、掛ことばのはいった句の意味は 西施や西湖の予備知識がないとわかりにくい..。
 

中国名の「合歓」から、コウカ・コウカギ・ゴウカン・ネムリコカ・カアカノキ などの別名、方言が生じた。

近縁種の Leucaena leucocephala の場合は、「ギンゴウカン」が標準和名のようで、「ギンネム」が別名 となっている。『園芸植物大事典』



植物の分類 : APG II 分類による ネムノキ の位置
クロンキストの分類で 3科に分けられていたマメ類は、ひとつに統合された。見た目の違いよりも 遺伝子の違いが少なかった結果だろう。
マメ科の中で オジギソウ亜科・ジャケツイバラ亜科・マメ亜科に分けられる。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所  マメ目  ネムノキ科、ジャケツイバラ科、マメ科
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
マメ目  マメ科、スリアナ科、ヒメハギ科、キリャイア科
マメ科  ネムノキ属、ジャケツイバラ属、マメ属、ほか多数
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ