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科 名 : | ヒノキ科 Cupressaceae | |||
旧科名 : | スギ科 Taxodiaceae | |||
属 名 : | ヌマスギ属 Taxodium L. Rich. (1810) |
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別 名 : | 植物園の名札:ラクウショウ 落羽松 ニレツバスイショウ 二列葉水松 |
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中国名 : | 落羽松 | |||
英語名 : | bald cypress, swamp cypress | |||
原産地 : | アメリカ北東部、中北部、南東部、中南部 | |||
用 途 : | 庭園・公園の池の周りに植えられる |
以前はスギ科に分類されていたので、別名「ヌマスギ」でよかったが、APG 分類では ヒノキ科にまとめられてしまい、松 でも 杉 でもなくなった。 |
新緑の全景 2011.5.24. |
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西側から。高さ 20m以上、大きな樹形、しかし、その実態は・・・ |
冬の様子 2012.1.28. |
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24m〜20mの ほぼ同じ高さの太い4本の木と、実生から育ったものか、低い木が3本ある。高い木は、いずれも高い所で 主幹が2本に分かれている。 |
幹の様子 2012.2.7. |
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シダレヤナギの大木があるので筆者が名付けた 「ヤナギ池」の北端に植えられている。前年に落ちた赤い葉が周囲にいつまでも残っていて、一見 陸続きのように見えるが、気根の一種「膝根 しっこん」が生えている所が水際。脚を踏み入れると泥沼なので、注意が必要。 |
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湿地に生えているので 根は地下水レベル以下となる。木が大きくなってくると、地中で横に伸びる根から膝根を立ち上げる。特殊な通気組織があって「呼吸」をしているそうだ。ヌマスギの場合は横に伸びる根の ところどころが大きくなるが、パンヤノキなどの「板根」は根の背面全体が立ち上がる。 |
陸側から 2012.11.16. |
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この木が一番太く、目通り 約 95センチ。 幹の基部は線状に太って凹凸ができる。11月のこの時期では まだ落葉していない。 左側の緑の葉は、ヌマスギの間に植えられた 同属の 「メキシコラクウショウ」。 |
地上部から出た膝根 2010.1.11. |
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熱帯のクワ科などの植物は枝から「気根」を垂らすが、ヌマスギは地下から伸ばすということ。 |
沼畔に育つ実生 | 幼木の幹 2013.2.6. |
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同じヤナギ池のほとりで、奥の太い木々から30mほどの位置に、5年くらい経った実生の幼木がある。手前の幼木のさらに奥にも、もっと若いものが4本ある。すべて
水際に生えている。 右の写真は幼木の主幹。どんどん太くなっていく様子が伺える。 |
2012.1.28 枝の様子 2012.5.5 | |
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葉の付き方は互生で、見た目には枝の出方に規則性はない。また、木が隣り合っている所など、日がまったく当たらない枝は、じきになくなってしまう。 ヌマスギの枝には 近縁のメタセコイアと同じように、長枝 と 短枝(仮称 落枝) の二種類がある。左の写真、冬の姿として残っているのが「長枝」で、葉は主に長枝から出る短枝に付くが、毎年 短枝ごと落ちてしまう。 |
恐らく国内で一番太いのは新宿御苑のラクウショウで、並木となっている。膝根の高さは 約1m。 2013.4.7 |
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長枝 と 短枝(仮称 落枝) |
樹形を形作るのが長枝、短枝は長枝から出て、一見 羽状複葉のような葉を付けるが、冬には枝ごと落ちてしまうため、落枝と呼ぶ。 |
本当に枝か? 2012.9.27. |
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垂直の「長枝」から出た枝から さらに側枝が出ている。もし長枝から出る羽状複葉のようなものが「葉」だったら、このようなことにはならない。 |
二種類の葉 2012.8.9. |
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一年目の長枝には、短か目の葉 あるいはごく短い針のような葉があり、さらにその葉腋から短枝を出す。短枝の細長い葉も螺旋状に生えるが、日を受けるために両側に並んで二列互生状になる。 |
2013.3.19 前年枝からの芽生え 2012.4.9 | |
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前年枝(昨年伸びた枝)の葉腋から初めて出る短枝 (葉芽)。一年目に短枝が出たところ ▼ からは芽が出ない。枝によって成長の早い遅いがある。 |
三年枝からの芽生え 2013.3.12. |
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三年枝(一昨年に伸びた枝)および それ以上の枝では、昨年の短枝が落ちた跡 ▼のすぐ脇から芽が出る。 |
2013.4.4. |
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葉の様子 2012.9.27. |
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筑波植物園の観察会で拾った種子からの実生。写っている枝葉は、すべて一年の間に伸びたもの。斜め30度に伸びたこの側枝は、長枝として残った。垂直の主幹に、針のような小さな葉が付いている。 |
落花した枝 2012.12.9. |
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左は 短枝からさらに側枝が出たが、元から落ちたもの。中央二本は通常の短枝。右は先端で来年の雄花を付けていたものだが、落下ではなくて 風で折れたのかもしれない。 縁石の幅は 12センチ。 |
花 と 実 |
針葉樹のヌマスギは 初春に花を咲かせる。 |
まだ硬い 雄花 2013.1.8. |
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▼以降が 昨年に伸びた枝。先端附近の葉腋にこの枝では雄花だけが付いている。 |
膨らんできた 雄花(左) と 雌花(右) 2012.2.21. | |
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左の写真では 雄花は短い側枝の先 あるいは 側枝の葉腋に付いている。 |
垂れ下がる雄花群 2012.2.21. |
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先端は枝が細いために 垂れ下がる。 |
雄花 と 雌花 2013.3.8. |
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雄花は前年に伸びた(二次)側枝に付き、雌花は前年に伸びた主軸の先端附近に付く。この写真は、2本の枝を交差させたもの。 次の写真のように同じ枝に雌雄両方の花が付くことも多い。 |
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ひとつ前の写真と同じ日の撮影だが、花粉が出ているようだ。2012 年は寒く、逆に2013年は暖かくてサクラの開花が半月早かった。 |
遅かった 2012年 2012.3.30. |
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少し膨らんだ球果 2012.5.16. |
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裸子植物の果実は「球果」と呼ぶ。 |
いきなり大きく 2013.6.26. |
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1ヶ月あまりで すでに直径 2センチ。途中経過は 別途観察予定。 |
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▼あたりが頂部。亀甲模様となるのは「種鱗」が肥大するためで、各 中央に若い時の突起が残っている。 |
なかなか落下しない 2012.11.16. |
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種 子 2012.12.9. |
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球果の中の赤茶色のものが種子で、各 種鱗に2個ずつ付いている。 |
光る脂 2013.3.12. |
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年を越して長く残るものもあり、中に溜まっていたヤニが表面に吹き出す事も。 |
黄色 から 赤茶 へ 2012.11.16. | |
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2012.12.5 |
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12月にはいっても葉がまったく落ちていない。このため 全体が みごとな赤毛色となる。 |
ヌマスギの実生 |
『園芸植物大事典/小学館』のヌマスギの項に「実生1年で高さ80cm あまりになり 樹齢30年で樹高25m、幹周囲150cmに育成する。」とある。 一年でそんなに伸びるものかと実際に育ててみたくなり、筑波植物園の観察会で、落ちている種子を分けてもらってプランターに蒔いた。 結果は 1メートル 33センチ だった! |
2012.4.18 | 2012.4.23 |
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最初に付く葉も成葉とほぼ同じ形・サイズだが、輪生となる。 途中経過は 残念ながら 熱心に観察しなかった。 |
伸びが止まった状態 2012.9.27. | |
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落下せずに残った長枝は 6本。 |
半年で14ミリまで太くなった根元 2012.9.27. |
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太っても 針状の最初の葉が残っている。地面から5センチの位置から 短枝(落枝)を出している。 |
ヌマスギ(ラクウショウ) の 位 置 |
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F8 d | ★ | 70番通り左側、ヤナギ池の北端。計 5本 |
名前の由来 ラクウショウ Taxodium distichum | ||
別名 ヌマスギ 沼杉 : 湿地に生えるため |
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ラクウショウ 落羽松 : | ||||
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英語名 bald cypress : 禿げ杉 の意味 | |
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別名 ニレツバ スイショウ 二列葉水松 : | |
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ヌマスギ | スイショウ |
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種小名 distichum : 二列生の | |
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リンネが記載した学名 | 和 名 | 種小名の意味 | 現在の学名 | |
@ | Cupressus sempervirens | イトスギ | 常緑の | 同 正名 |
A | C. disticha 本種 | ヌマスギ | 二列性の | Taxodium distichum |
B | C. Thyoides | ヌマヒノキ | 不 明 | Chamaecyparis thyoides |
@ イトスギ | B ヌマヒノキ | |
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以下、メタセコイアの項と 記述が重複する。 | ||||
Taxodium 属 : 旧 スギ科は Taxodiaceae | ||||
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ヒノキ科 Cupressaceae : | |||||
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ヒノキの葉と球果 | ヒノキの雄花 |
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杉 ?、松 ? |
名前に「スギ」と「マツ」が混在し、APG分類で「ヒノキ科」にまとめられた 旧スギ科の植物。代表的な属名と代表樹木名を一覧にしてみた。 |
科名 / 属名 | 属名の和名 | 代表種の和名 | 漢字 | 備考 |
ヒノキ科 | ||||
Chamaecyparis | ヒノキ属 | ヒノキ | 檜 | |
Cyptomeria | スギ(以下 属は略) | スギ | 杉 | 旧スギ科 |
Cunninghamia | コウヨウザン | コウヨウザン | 広葉杉 | 旧スギ科 |
Glyptostrobus | スイショウ | スイショウ | 水松 | 旧スギ科 |
Metasequoia | アケボノスギ | アケボノスギ (メタセコイア) |
曙 杉 | 旧スギ科 |
Sequoia | イチイモドキ | セコイアメスギ | セコイア雌杉 | 旧スギ科 |
Sequoiadendron | セコイアデンドロン | セコイアオスギ | セコイア雄杉 | 旧スギ科 |
Taiwania | タイワンスギ | タイワンスギ | 台湾杉 | 旧スギ科 |
Taxodium | ラクウショウ | ラクウショウ | 落羽松 | 旧スギ科 |
マツ科 | ||||
Cedrus | ヒマラヤスギ | ヒマラヤスギ | ヒマラヤ杉 | |
Pinus | マツ | クロマツ | 黒 松 | |
ナンヨウスギ科 | ||||
Araucaria | ナンヨウスギ | ナンヨウスギ | 南洋杉 | |
松も 杉も 大好きな?日本人だけに、ヒマラヤスギ や レバノンスギ のように マツ科の植物にまで、スギの名を付けてしまっている。 |
植物の分類 : | APG II 分類による ヌマスギ の位置 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
以前の分類位置 | スギ科 | ||||||
ヒノキ科 | ヒノキ属、スギ属、コウヨウザン属、セコイア属、ヌマスギ属、他 | ||||||
ヌマスギ属 | ヌマスギ、メキシコラクウショウ | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | ||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群 : | |||||||
バラ亜綱: | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | ||||||
マメ 群: | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
アオイ群: | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群 : | |||||||
キク亜綱: | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ |