ニッサボク ニッサ木
Nyssa sinensis Oliver (1891)
科 名 : ヌマミズキ科 Nyssaceae
属 名 : ヌマミズキ属 Nyssa Linn. (1735)
仮 名:  シナヌマミズキ
中国名 : 藍果樹
原産地 : 中国の河南、長江流域の 標高800〜1,400mの林中
用 途 : 街路樹
ヨーロッパでは紅葉を楽しむ庭園樹


普段は目立たないが、晩秋に真っ赤に紅葉している時は人気である。

ニッサボク 樹形
この木のすぐ裏、右後ろに もう1本ある。
10〜18mに成長するということであるが、2本とも 6m程度。

幹の様子

新葉の展開        2012.4.13.
新しい枝の元の方、本葉の手前に花が仕込まれている。葉裏面の葉脈上などに柔らかい毛が生えている。

新 緑      2011.5.3.
冬芽がほころんでから 一ヶ月が経って、花が咲いてきた。花弁がないので「開花」の定義が難しい。

ニッサボクの雄花       2011.5.3.
丸い集合花だが、近縁属のキジュほど 花の数は多くない。
これは雄花で、雌花は別に咲くはずだが 見たことがない。

ヌマミズキ属の花は、事典によると 雌雄同種または異株、ときに雑居生。と、バラエティーに富んでいるようで、ニッサボクの花に関しては特別な記述がない。

花のアップ         2011.5.3.
雄しべはまだ熟していない。花によっては中心に雌しべがあるように見える。ねずみ色の部分に白く光るのは 蜜だろう。観察不足。

            青みがかる 実       2000.7.21
ワシントン樹木園。 小石川植物園では果実を見たことがない。
ヌマミズキ科は雌雄異株のものもあるようなので、植物園のニッサボクは雄株なのかも知れない。
実は青みがかっているために、中国名は「藍果樹」である。

葉の様子          2010.10.4.
葉のサイズは 15cm 前後。 光沢はないがきれいな葉をしている。 カキの葉に似ているが、形が細長い。

紅葉の様子

 
ニッサボク の 位 置
F7 d 70番通り 標識75手前の左手、カジノキの奥。2本

名前の由来 ニッサボク Nyssa sinensis

ニッサボク : 属名による
和名とは言えない。
中国産のヌマミズキということで、「シナヌマミズキ」を提案したい。
中国名 藍果樹 : 果実の色による
果実の色が 藍色になるため。 次の写真はまだ若い実だと思うが、熟すともっと色が濃くなるのかも知れない。
種小名 sinensis : 中国の という意味
本種が中国原産であることに因る。
 
Nyssa 属 : 水の精の名前による
本属の別種 ヌマミズキは湿地に生え、また Nyssa aquatica が沼地に生えることに由来する。
 
ヌマミズキ属 :
ヌマミズキ科 Nyssaceae
水辺に生える種類があり、ミズキ科に近い種類であるために、ヌマミズキという和名が付けられている。
学名のまま、ニッサ科ということも多い。

ヌマミズキ科には、カンレンボク属とヌマミズキ属との2種類しかなく、植物の数も少ない。
『週間朝日百科/植物の世界』は クロンキストの分類に拠っており、ヌマミズキ属はミズキ科として分類されている。

ヌマミズキについては、別項を参照のこと。



植物の分類 : APG II 分類による ニッサボク の位置
ヌマミズキ科、ミズキ科などの位置は APG分類で大きく変わった。 クロンキストの分類では「バラ亜綱」だったが、さらに後になって分化した「キク亜綱」に位置付けられた。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 旧 ミズキ目  ウリノキ科、ヌマミズキ科、ミズキ科、ガリア科
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
新 ミズキ目  ミズキ科、ヌマミズキ科、アジサイ科、など
ヌマミズキ科  ハンカチノキ属、ヌマミズキ属
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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