オドリコソウ 踊り子草
Lamium album Linn. (1753)
var. barbatum Franch. & Savat.
科 名 : シソ科 Labiatae
属 名 : オドリコソウ属 Lamium Linn. (1735)
英語名 : dead-nettle
原産地 : 日本。
朝鮮半島、中国
用 途 : 庭木などの下草として植えられる事もあるが、通常は茂みの中や林縁に生える。

草本であるが、春の植物園の主役「サクラ」を引き継いで植物園を賑わせる、オオアマナ、セリバヒエンソウ とともに、目立つ脇役なので取り上げる。
(実際は、純粋に「オ」で始まる樹木がなくなってきたため・・・)

                    オドリコソウの群落             2011.4.26
2 ・3本ということはなく、園内いたる所で群落を作って咲く。 背の高さはせいぜい 40cm。 葉は対生で、大きさ・形・感触まで 「シソの葉」そっくりである。

                   輪 舞            2011.5.4
つぼみの時は段違いに付いているのに、咲きそろうと円形になる。(輪散花序)
長年の稽古の成果であろう・・・。 
この花の数は非常に多く、14もある。 それぞれの葉腋に7個ずつということだ。
5つに尖った萼が特徴。 花序の基部は黒い。  

花の詳細を見てみよう。

                    花のアップ              2011.7.8
花は合弁花で、大きくは2つに分かれており(2唇形)、上(上唇)は帽子状で、これが踊り子の「笠」に当たる部分。 その周囲には毛が多い。
 
                 まれに 白花もある           2008.5.6
花弁の下部(下唇)は大きく3つに分かれ、飛び出した中央がさらに2つに割れている。 両側(側裂片)にはそれぞれ、小さな尖った角(つの)が1本。(写真印 : 歯)

                   下から覗く             2011.5.4
とがった萼が際立つ。 雌しべと4本の雄しべは上唇に沿っているため、上から見ると隠れて見えない。 茎は四角形となるが、これはシソ科の特徴である。


名前の由来 オドリコソウ Lamium album var. barbatum

オドリコソウ 踊り子草 : 
ひとつの花に注目すると、笠を被って踊る人のように見えるところから。
そう思って見れば、確かに・・・・。

英語名 dead-nettle : 
直訳すると 死んだイラクサ。 イラクサに触るとかぶれたような皮膚炎を起こすが、萼などのトゲが目立つオドリコソウは触っても問題ない。
つまり dead は「効力のない」の意味で、「イラクサモドキ」といったところだろう。
和名に較べると 趣を欠くこと甚だしく、これでは庭に植える気にもならない。

変種名 var. barbatum : ヒゲのある、細い刺のある の意味
本種は Lamium album の「変種」である。 基準種に較べて、萼の長さが長くて目立つためだと思われる。 Wikipedia に 基準種 Lamium album の写真があった。 album の意味は「白の」。

基準種 Lamium album


ヨーロッパから西アジア原産。
尖った萼の長さが短い。



Wikipedia より

Lamium 属 オドリコソウ属 : 
ギリシア語の 「laimos 喉」 に由来する。 本属の花が筒状に伸びているためというが、シソ科には似たような花が多く、際立った特徴ではない。

シソ科 : Labiatae
漢名「紫蘇」の音読み。 蘇 には「草」の意味があり、「紫色の草」の意。

Labiatae は、ラテン語の 「labea くちびる」による。 
基準属であるオドリコソウ属に由来する Lamiaceae も使われる。

世界に 約 200属、約 3,500種 があるそうだ。


植物の分類 APG II 分類による オドリコソウ の位置

シソ類は双子葉植物の中でも 最後の方に分化した植物である。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
シソ目   ゴマノハグサ科、キツネノマゴ科、ゴマ科、シソ科など
シソ科   ムラサキシキブ属、ラベンダー属、ハッカ属、シソ属など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

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