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科 名: | バラ科 Rosaceae | |||
属 名: | バラ属 Rosa Linn. | |||
異 名: | R. cherokeensis Donn ex Small | |||
中国名: | 金桜子 jin ying zi | |||
英語名: | Cherokee rose | |||
原産地: | 中国中南部、台湾 | |||
用 途: | 生け垣、庭木に使われた |
その名から てっきり国産だと思っていたが、モッコウバラなどと同じく、中国原産だった。 以前は売店横に植えられていたが、現在は分類表本園の中間部分に移植されている。白で一重と 筆者の好きな花であり、知人に分けてもらって自分でも育てている。 |
在りし日の姿 2011.5.3. |
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左側が売店で、薬草園の低い垣根を覆うほどの勢いだった。 |
現在の場所 2013.6.4. |
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分類表本園の中ほどにある、水槽か何かの遺構の脇に移植された。 |
植物園近くの家の生け垣 2014.4.23. |
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生け垣の例。何百という花が咲く見事なものだ。 ナニワイバラの花期は短いが、これだけ花があると、ある程度の期間 楽しめる。しかし 蔓がよく伸びるので、道路側に張り出しており、剪定に苦労しているようだ。 『園芸植物大事典/小学館』(1988)には 以下の記述がある。 |
花も葉も美しく 病気や害虫も少ないので、関西以西ではよく生け垣に使われていたが、株が大きくなりすぎ また花期が短いために、最近は敬遠されている。 |
筆者が分けてもらった知人の家が まさにその通りで、二階まで伸びて一杯になった株は、ある時、根こそぎ "伐採" されてしまった。「花期が短い」理由は、ほぼ一斉に咲くことと、園芸種に較べてひとつひとつの開花期間が短かく、丸3日もすると散ってしまうため。しかも 秋咲きは 無しである。 |
2015.3.17 新 芽 2015.3.31 | |
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多くの園芸バラと違って「常緑」。自宅のものは冬芽も赤味がかかることが多い。古い葉は春から初夏に黄葉して、順次落ちていく。 |
トゲの様子 | ||
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→ 枝先 |
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新しく伸びて 半年が経った枝。枝には通常のトゲが付く(少し下向きに曲がっている)。伸び始めの枝は緑だが、冬に赤くなる。 |
植物園 2015.4.1. |
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移植後 数年経って、勢いが出てきた。太さ 1センチ強。 |
自宅の葉 2015.3.31. |
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複葉の小葉は3個。左から低出葉、初生葉、成葉、黄味が増した2年生葉。托葉は長く尖っており、古くなると落下する。 |
2014.4.23 つぼみの状態 2012.5.2 | |
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側枝・花柄・萼筒・萼片には細い刺が密生する。細いからといって 侮れない。萼の上部は葉の形となり、トゲはない。 |
満 開 2001.4.28. |
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薬草園の竹垣時代。花弁は5枚、幅広で互いに重なっている。 直径 6〜8センチ。匂いも良い。 |
花 後 2015.4.27. |
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このスターなら いつまででも楽しめるが、自宅の鉢植えでは、負担を減らすために摘んでしまう。 |
赤い枝 2015.2.16. |
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アメリカ農務省のデータベース GRIN (Germplasm Resources Information Network) の、「経済的な重要性」の項に ”染料”があった。自宅の枝を剪定した時に、表面だけでなく内部まで赤い色があったので、これに違いないと感じた。 |
実の様子 2015.3.29. |
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春までほっておいた果実(萼筒が肥大したもの)。『園芸植物大事典』によると「種子はほとんどできない」そうだが、内部に種子(正確には果実)があった。一応 撒いてみたが、採取が遅すぎで乾燥していたため、発芽するかどうかはわからない。 |
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ナニワイバラ の 位 置 |
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写真@: | E10 c | ● | 分類表本園内 |
名前の由来 ナニワイバラ Rosa laevigata |
和名 ナニワイバラ 難波茨 : | |
中国原産で、18世紀初めに日本に渡来したものを、大坂の植木屋が広めたためといわれている。 別名 ナニワバラ 浪速薔薇。 |
← バラ 薔薇 : | ||
いばら うばら 茨 が省略されたもの。 茨には「かや」の訓があって くさぶきの意味もあるが、現在はもっぱらトゲのある灌木の総称として使われる。 似ているが少し違う説として、「うまら」が転訛したもの がある。万葉集に「うまら」が詠まれており、これが →「まら」→「ばら」となったという説である。 |
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漢字の薔薇 がバラを表すことになった由来は不明。漢名からきているのだろうが、別々になると「薔」が ミズタデ、「薇」はゼンマイの意味であるのが不思議。 薔薇の音「そうび」は平安時代の『古今和歌集』、『源氏物語』、『枕草子』にも見られるという。薔薇 は 襲 (かさね)の色目にもなっており、表は”紅”、裏は”紫”。 |
種小名 laevigata : 平滑な の意味 | |
落葉の一般的なバラの葉は 葉脈が目立ち、薄手で軟らかい。常緑のナニワイバラは厚手、平滑でツヤがあるところから。 |
ナニワイバラ | 原種 ロサ・ガリカ |
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中国原産 | 柔らかな葉の例、コーカサス地方原産 |
中国名 金櫻子 jin ying zi : | |
漢方で ナニワイバラの 実・種子などを「金櫻子」と呼び、それが植物名ともなっている。由来は不明。 中国原産のバラ属は多いが、『Flora of China』によると現代の名称は「○○薔薇」がほとんどで、「子」の付いているものは本種だけである。 |
英語名 Cherokee rose : | |
異 名 Rosa cherokeensis Donn ex Small : | |
チェロキー・インディアンのバラ の意味で、合衆国ジョージア州の州花となっている。中国原産のバラが なぜアメリカで州花となっているのか? 原住民の迫害の歴史が関係しているようだ。 |
西 暦 | 事 柄 |
1780頃 | ナニワイバラがアメリカ東南部に移入され、ほどなく野生化する |
1803 | ナニワイバラの学名 R. laevigata が記載される。現在の正名 |
1807 | J. Donn が「R. cherokeensis」を記載するも、必要な様式を 満たしていなかった |
1829 | ジョージア州で金鉱が発見され、ゴールドラッシュで 白人が インディアンの土地に立ち入るようになる |
1838 | チェロキー族の強制移住が実施される。疫病などで、多くの人が 亡くなる。歩いたルートは「涙の道」と呼ばれている |
1903 | Small が改めて Donn の学名を正式に記載。しかし正名ではない |
ナニワイバラが なぜ チェロキー族と結びつけられたかは判らない。ジョージア州のインディアンの居留地に、ナニワイバラが繁茂していたのだろうか。 命名は強制移住の30年も前なので、直接の関連はないかもしれない。現在では、その白い花弁は チェロキー族の女性の涙を、黄色い雄しべは チェロキー族が奪われた金を象徴しているとされる。 ジョージア州がナニワイバラを州花としたのは、過去の過ちを忘れないようにするためかも知れない。 とにかく ナニワイバラは 不明なことだらけだ。 |
Rosa 属 : | |
ギリシア語の rhodon バラ に由来し、さらにその語源は ケルト語の rhodd 赤 に由来する。 |
植物の分類 : | APG III 分類による ナニワイバラ の位置 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、アウストロバイレア、センリョウ | ||||||
モクレン亜綱: | カネラ、コショウ、モクレン、クスノキ | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群: | |||||||
バラ亜綱: | ブドウ | ||||||
以前の分類場所 | バラ目 | トベラ科、ベンケイソウ科、ユキノシタ科、バラ科、など | |||||
マメ 群: | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
バラ目 | バラ科、グミ科、ニレ科、アサ科、クワ科、イラクサ科、など | ||||||
バラ科 | モモ属、サクラ属、リンゴ属、カリン属、バラ属、キイチゴ属、など | ||||||
アオイ群: | フウロソウ、フトモモ、アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群: | |||||||
キク亜綱: | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) | ||
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