| 年 | 和 名 | 著 者 |
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備 考 |
❶ |
1828 |
カイドウバラ
サクラバラ |
岩崎灌園 |
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『本草図譜』 |
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岩崎 灌園(1786-1842) は 江戸時代後期の本草学者。本草学を小野蘭山に学び、若い時から本草家として薬草採取を行った。
20年を掛けて準備したという『本草図譜』を 1828(文政11)年に出版した。92巻からなり、2000種の図を、李時珍の『本草綱目』にしたがって配列した。
カイドウバラ と サクラバラは 27巻「蔓草類」に載っている。 |
岩崎灌園 |
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図A:かいどうばら |
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図B:さくらばら |
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かいどうばら の説明文 (図内 左上、部分拡大):
「前略。 初め開く時は白く微かに紅を帯びる。漸く淡紅色の後に深紅色となる。 後略」
さくらばら(左図)の説明文:「葉は大小で五葉。花は単瓣で淡紅色。形は櫻花色の如し」 |
国立公文書館 デジタルアーカイブ より |
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| 年 |
学 名 |
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命名者 |
② | 1895 |
Rosa multiflora var. fl. roceo |
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牧野富太郎 |
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明治
28年 |
| 東大の助手となって間もない頃の投稿。日本植物学会の機関誌『The botanical magazine 植物學雑誌』第9巻 「雑録」の項に「繇條書屋植物雑記」なるタイトルで様々なメモ書きを載せている中のひとつ。 |
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112ページ
●薔薇の諸事
本草図譜所載の かいどうばら(注 図A)はノイバラの一品で、紅弁単輪なるもの。
帝国大学植物園で「さくらばら」と称するものは、この品に属す。是れ ~ なり。
中略
○同書 さくらばら(注 図B) は チョウシュン 即ち コウシンバラの一品なり
後略
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・ノイバラ:Rosa multiflora Thunberg、multiflora:花が多く、小さい ・コウシンバラ:R. chinensis Jacquin、花色:淡桃色 → 紅色 |
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ノイバラ |
コウシンバラ |
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 原種は一重 |
コウシンバラの「花色が変化する」という性質は、灌園の図A「かいどうばら」の説明と共通するところがある。ただし コウシンバラの小葉数は3~5個である。 |
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灌園の図A「かいどうばら」を、植物園に植えられている 本種 カイドウバラ としたのは、どうも納得がいかない。
その理由は、本種は、図Aの説明書きにあるような開花後の花色の変化は無い。また、図中の葉の小葉数は7個だが、本種は通常5個である。そもそも、どう見ても
図Bの方が植物園のバラであり、なぜ図Bとしなかったのかが不思議である。 |
牧野は両者を取り違えたのではないだろうか? 和名は本来、サクラバラ とすべきだった。筆者としては、サクラバラ の名札が コウシンバラ に変わってしまったことを残念に思っている。 |
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年 |
学 名 |
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命名者 |
③ |
1905 |
Rosa multiflora var. Uchiyamana |
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牧野富太郎 |
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明治
38年 |
| その後牧野は『植物學雑誌』で「Observation on the Flora of Japan」というシリーズでの掲載を行っていた。第19巻
151ページ~に カイドウバラの学名を正式に記載し、詳しい説明を載せている。 |

中略、詳しい説明が 約1ページ分ある

和名を カイドウバラとし、変種名は、助手だった当時の植物園の主任園丁 内山富次郎氏に献名したもの、と明記されている。 |
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| 年 | 学 名 | 命名者 |
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備 考 |
④ | 1908 |
Rosa Uchiyamana |
牧野富太郎 |
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| 明治
41年 |
| さらに3年後の『植物學雑誌』第22巻 163ページに、同じタイトル「Observation on the Flora of Japan」の中でカイドウバラの学名を訂正して、種に格上げした。 |

属性についてはすでに③で述べているためか、省略されている。 |
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