ロウバイ 蝋 梅
Chimonanthus praecox Link (1822)
← Calycanthus praecox Linn. (1762)
科 名 : ロウバイ科 Calycanthaceae
属 名 : ロウバイ属 Chimonanthus (1819)
Lindl. nom.cons
英 名 : wintersweet , Japanese allspice
中国名 : 蝋梅
原産地 : 中国中部に広く分布する 
用 途 :

庭園樹として植えられる。
日本には江戸時代の初めに渡来したという。

正門をはいり、正面の坂を上り始めるとすぐにクランクになっているが、その右手に ロウバイの仲間が何本も植えられている。

 2011.6.21                ロウバイ ↓


            中央の花弁は赤紫     2008.2.10
京都植物園。 京都は寒いので2月になってからが満開だったが、小石川では 早い時には暮れから咲き出す。サクラのように一斉に開くのではなく、順次咲いて開花期間が長い。これは 強い寒気で一部の花が萎れても、ほかの花で種子を残せるように という備えである。
葉が出る前に咲く。

             花の様子        2011.1.5
周囲の黄土色の薄皮「総苞」から「花被片」へと順次大きくなっていく。雄しべも含めて螺旋状に付いているそうだ。

             花の詳細        2012.1.8
落ちいてた花。
花弁の半分を取り除いた状態で、紫の花弁は斑模様だ。中央にある尖ったものが、葯が退化した不完全な雄しべ (仮雄蘂) で、その外側にある 白い葯を付けているのが 完全な雄しべ。

             @:樹 形       2011.6.21

               株立ちの幹の様子        2011.6.21
幹には横長の模様(皮目 ひもく)ができる。

         葉の様子   2001.5.18
葉は薄手で光沢はない。 大きいものは 長さ20cm。

 2011.6.21          芋虫のような 実の様子          2007.4.29
この実 (正確には偽果) を初めて見た時には ビックリしたものだ。これは、花弁や雄しべが付いていた「花床」が発達したもので、種子のように見える果実は 中にある。

干からびた偽果 と 果実
木にぶら下がっていると昔の蓑虫を思い出す。先端が開いて果実が落下するが、中に残っていることも多い。種子の長さ 14mm。

芽を出したロウバイ      2013.1.5.
筑波実験植物園

つぼみの様子       2011.11.1.

 
突起 の 謎

果実の先端には最後まで突起が残っている。この突起が何に由来するのか (どこが突起になるのか) ? 2013年に観察した結果を以下に示す。ただし 同じ果実を継続的に撮影したわけではない。
また 偽果のサイズは測定しておらず、ノンスケール。

結論は「主に 仮雄しべ + 雄しべの落ち跡」。「花糸 あるいは 花糸の基部」が肥大したものだった。

花被片の落ち跡には印を付けた。中央に多数ある仮雄しべには 印を付けていない。

2013.3.17 2013.3.22
には まだ雄しべ(花糸と葯) が
付いている
仮雄しべの枯れた先端は残っているが、基部は初めから円錐形に肥大している
はっきりとした 雄しべの落ち跡
   ↓
2013.4.3
実の長さが長くなってきたもの
でも、花弁や雄しべが残っている
左に較べると実は短い
仮雄しべの先端は より鋭角に
2013.4.8
雄しべの落ち跡は短いながらも当初よりも尖っている。雄しべの 花糸 あるいは 花糸の基部 が肥大した結果だ。雄しべの跡と花弁の落ち跡の間隔が広がって、先端部が一体化したイメージに。
果実全体が膨らんで 下部の大きな花弁の落ち跡に段ができ、目立つようになった。
2013.4.13
一部の実が 下を向き出した。成熟時に種子を落下させるためだろう
2013.4.18
全ての実が下を向き出した。仮雄しべの花糸の一部が 黒くなっている。
突起はやはり「仮雄しべ」が目立ち、雄しべの落ち跡は 周囲の飾り程度のサイズだ。

2013.4.28
偽果の色が濃くなってきた。仮雄しべは外側に反り返っている。先端に付いていた「干からびた部分」はなくなった。
偽果全体の太さが増したので、相対的に花被片の落ち跡 と雄しべの落ち跡 の間隔が縮まったように見える。

 
ロウバイ の 位 置
@ : E15 d

坂の右手
F15 c @の近く
標本園 売店側から7列目 右から2つ目

名前の由来 ロウバイ Chimonanthus praecox

ロウバイ 蝋梅 : 中国語の音読み
以下の要素が重なって ロウバイになったものと思われる。
 蝋: ・花が蝋細工のような半透明
    ・花の色が蜜蝋のような淡い黄色
    ・12月(臘月)に咲く ←こちらは偏が 「にくづき」
 梅: ・香りが梅に似ている
    ・丸いつぼみが 梅に似ている
    ・開花が梅と同じく早春である
臘月のいわれ :
「臘」とは 冬至の後、三回目の戌の日に行う祭りのことで、先祖百神を合わせて祀り、猟の獲物を供える。
             『広辞苑』および『漢和中辞典』

ここから、陰暦十二月を 「臘月」と呼ぶようになった。

「臘梅」の字が使われる頻度は少ないが、文学方面で使われる事が多いそうだ。 『花木ウォッチング100/菱山忠三郎』

種小名 praecox : 早期の という意味
花が、冬の終わり 春の初めに早く咲くことから。

Chimonanthus ロウバイ属 :
ギリシア語の cheimon 冬 + anthos 花 で、冬咲きの花。

種小名と合わせて 学名版 「冬にまず咲く マンサク」である。

ロウバイ科 Calycanthaceae
ギリシア語の kalyx 萼 + anthos 花 で、萼にも同じ色が付き花弁のように見えるところから。実際、どこからが花弁か わからない。
クロバナロウバイ Calycanthus属は ロウバイ属よりも早くから知られていて、基準属となっている。
クロバナロウバイ
別名
アメリカロウバイ
小石川植物園
分類標本園
 



植物の分類 : APG II 分類による ロウバイ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
クスノキ目  ロウバイ科、モミニア科、クスノキ科、ハスノハギリ科、など
ロウバイ科  ロウバイ属、クロバナロウバイ属
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ