カラスザンショウ 烏山椒
Zanthoxylum ailanthoides
Sieb. & Zucc. (1845)
科 名 : ミカン科 Rutaceae
属 名 : サンショウ属 Zanthoxylum
         Linn. (1737)
中国名 : 椿葉花椒 chun ye hua jiao
原産地 : 本州、四国、九州、沖縄諸島
韓国、台湾、中国、フィリピン
用 途 : 黄白色の軟らかい材を 下駄や細工物に利用する

崖線に何本かが生えているが、普段が歩く道からは目立たない。平地では職員宿舎の先に 名札が付いていないものがある。雌雄異株だということに最近気付いた!ので、雌雄が未確認の木がある。
伊豆地方で、崖下に生えている雌株を上から撮れる場所があり、そこでの写真も多用する。(タイトルの地が 黒 のもの)

@:樹 形   2015.3.22. B:樹 形   2012.1.18.
@の木はまだよく見える方で、ほかの崖地の木は 混んでいるために全形は撮れない。平地に植えられたBの木は縦長の逆三角形をしているが、独立樹ではもっと平たい傘型になる。

F:小石川山 山頂付近の大木

「ふもと」から見上げる

山頂から見下ろす
標識34番の先に、園内の最高地点となる小さな丘 「小石川山」がある。そこへ登る途中にある大木。目通りは約40センチ。全体像は写せない。根が斜面を這っている。

D:幹の様子       2012.1.18.
傾斜地に生えているために 幹が斜めになっている。現在この付近は、立ち入りができない。幹が太くなっても 刺が生えていた部分のいぼ状の突起が消えない。

2005.8.6              枝振り             2007.1.21
茎頂に花を付けるため、腋芽が代わりに伸び出して主軸となる。

垂直に近い枝の様子       2015.2.21.
花序の落ち跡  のすぐ下の腋芽から出る枝は、そこで屈折するために一年間の伸びが明瞭となる。外へ外へと伸びて 8年分の枝がわかる。
茎頂から少し離れた芽が伸びることもある。

新 緑         2013.5.2.
葉は 奇数羽状複葉。

枝の刺              2013.5.2.
伸び出したばかりの緑のトゲは まだ軟らかい。右は 丁度 一年経ったトゲ。中央は葉の落ち跡。

葉の様子       2014.6.21.
小葉のサイズは 10センチ程度。葉はV字型になっている。また葉軸(中央の軸)に対して60度ぐらいの角度で付いている。
葉の裏は白い。花序が伸び出しているが、この木は雌株。

小葉の付き方
平面的に角度が付いているだけでなく、葉軸の上側にV字型に付き、すぐに湾曲している。

小葉の詳細
この木の小葉柄は短いが、2センチになる個体もあるそうだ。小葉基部の葉軸(中央の軸)側 (部)は、軸にぶつからないように 数ミリ短く、葉は非対称形となっている。

大きくなった花序(雌花)  2012.7.10.
まだ つぼみは固い。

B:開花中(雄花)     2012.7.31.
西側の道路から。
花の詳細写真は、雌雄がはっきりしていないので 保留。

B:開花中(雄花)     2011.7.24.
早くも黄変している葉がある。

若い実        2009.8.29.

熟してピンク色になった実   2013.11.18.
まだ 弾けてはいない。

ひとつの花に3つの果実   2010.11.27.
中の種子は1個ずつ。

B:黄 葉       2011.11.4.
一部の葉が真っ黄色になるのが美しい。
B:本格的に  2013.12.4.

伊豆の黄葉      2010.11.27.
果序は重みで垂れ下がる。黄色くなった小葉が落ち 赤い葉軸が残るが、やがて落下する。

冬の花        2015.2.21.
果軸まで赤くなった果序は、落ちるものと遅くまで枝に残るものがある。


 
カラスザンショウの 位 置
@: E13 c どろんこ坂右側、雌株
A: F12 a コクサギ坂中程 右側斜面、雌雄未確認
B: G10 c 職員宿舎の先、雄株
C: E9 b 標識52番の角、恐らく雄株
D: E9ac 標識52番の先、恐らく雄株
E: D7ac 小山の頂上付近、恐らく雌株

名前の由来 カラスザンショウ
Zanthoxylum ailanthoides

和名 カラスザンショウ 烏山椒 :
カラスザンショウの実は鳥が好んで食べる。事典にはカラスも食べるので和名の由来となった、とある。
カラスザンショウ サンショウ  2003.8.30.
私見で別の説を。 カラスザンショウの実は サンショウほどの良い香りがしない。イヌザンショウとしたいところだが、別種 Z. schinifolium で使われてしまっているので、やむなく カラスの名前を付けた。カラスにでも食わせるような出来の悪いサンショウ、の意味。

← サンショウ 山椒 :
「椒」だけでも サンショウを指すが、意味は「香しい(もの)、良い匂い(のもの)」である。良い香りの葉・実を付け、日本全国の山野に生える木、の意味である。
サンショウ   2003.7.21.
サンショウは中国には自生していないため、漢名・中国名に「山椒」はない。中国にもサンショウの植物は何種もあり、属名は「花椒属 hua jiao shu」である。

種小名 ailanthoides : ニワウルシ属に似た
大きな複葉のカラスザンショウの葉の様子が、ニガキ科のニワウルシ属 Ailanthus属 に似ているため。

シーボルト(1796-1866) またはツッカリーニ がニワウルシ属の植物を知っていなければ、この種小名が付けられることはないわけだが、丁度 シーボルトが生まれた頃に インド原産の、Ailanthus excelsa が命名されていた。
その写真は無いので、近年になって命名されたニワウルシで代用する。
カラスザンショウ ニワウルシ
枝先付近に付く 羽状複葉という点では一致しているが、ニワウルシは 小葉柄が長いという違いがある。
サンショウの葉も複葉だが、サイズがまるで違う。

西暦 学名 和名 命名者 備考
1737  Zanthoxylum  サンショウ属  リンネ
1789  Ailanthus  ニワウルシ属  デスフォンテイン
1795  A. excelsa   なし  ロクスボロー
1825  A. malabalica   なし  ドゥカンドール
1845  Z. ailanthoides  本 種  シーボルト
1916  A. altissima  ニワウルシ  スウィングル  元 Toxicodendron altissimum

中国名 椿葉花椒 :
中国での「椿」は チャンチンをさす。これも羽状複葉。
「花椒」は サンショウのことで、チャンチンの葉に似たサンショウ類、の意味である。
2010.2.22            チャンチン           2003.5.17

Zanthoxylum属 : 材の色から
材の実物、断面は見たことがないが、ギリシア語の xanthos 黄色 + xylon 材 の合成。カラスザンショウは 下駄や細工物に利用されるそうだ。

ミカン科 Rutaceae :
科名として ミカンの名が付いているが、基準となる属 Ruta属は「ヘンルーダ属」である。

『園芸植物大事典』によると Ruta は、次の写真「ヘンルーダ」の古代ラテン名に由来する とあるが、Rutaの意味は不明である。
ヘンルーダ 花の詳細

小石川植物園

撮影は5月27日

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ