サンシュユ 山茱萸
Cornus officinalis Sieb. & Zucc. (1839)
別 名 : ハルコガネバナ、アキサンゴ
科 名 : ミズキ科 Cornaceae
属 名 : ミズキ属 Cornus Linn. (1737)
漢 名: 山茱萸 shan zhu yu
英 名 : Japanese cornel
原産地 : 中国、朝鮮半島
用 途 : 日本には江戸時代中期に薬用植物として渡来した。庭木、盆栽、生け花の材料として使われる。果実酒にも。
薬効は 滋養強壮・腰痛・めまい・耳鳴り、止血などの収斂剤に。

園内には4本のサンシュユがある。開花は3月上旬で、特に梅園の一本は 紅白のウメとのコントラストが美しい。

         @:樹 形        2011.3.13.
梅園内、山側の中央に。樹高 約8m。

          A:70番通り       2012.11.8.
奥を見ている。 ↑サンシュユ  ↑トイレ
この木も梅園の横にあり、右手が一面の梅の木。

 B:20番通り       2011.3.23.
標識25番の先 左側。ちょうど水飲みの左にある。  タラヨウ ↑
高さ 約9.5m。

枝の先に付く花       2001.2.25.
花序は 2対4枚の芽鱗片 (総苞片) に包まれている。開花後も、芽鱗は一定期間 落ちずに残る。
A:開 花        2000.3.18.
A:満 開         2011.4.1.

花の詳細        2011.3.13.
花弁と雄しべの数は4。萼は小さくて目立たないようだ。

ささくれ立つ樹皮

新 葉      2011.4.1.
越冬した冬芽は 1対の芽鱗片に包まれていた。葉は対生。

葉の様子        2012.11.8.
葉脈部分が凹んでいるので、はっきりとした影ができる。側脈(主脈から分かれた葉脈) はどこまでも平行を保つ。葉の色は少し黄色味を帯びてきている。

同じ属のミズキの葉に似ている、と思って較べてみた。

ミズキ   と   サンシュユ
白いのは葉裏。葉の長さ(葉身)はともに 約14センチだが、葉の形が違うために葉脈の状態も違っている。大きな違いは側脈の数で、ミズキは 10、サンシュユは6。また ミズキの葉柄は長くて元が赤いところも違う。

若い実         2000.7.27.

落ちた実を葉に載せて     2012.11.8.
鮮紅色という言葉がピッタリの 艶やかな実。生で食べられるが極めて酸っぱい味だ。中央に 中から出てきた核が写っている。

漢方薬         2012.1.14.
年を越しても枝に残る実も多い。ここまで来れば 漢方薬の「山茱萸」に近い。リンゴ酸や酒石酸 その他の有機酸が含まれるそうで、滋養・強壮をはじめ 色々な薬効があるという。

 
サンシュユ の 位 置
写真@ : E5 a  ● ショウブ池の右手、梅園の中央
写真A : F6 c   70番通り 左手
B6 b  ● 20番通り 標識25番の手前右手、トキワマンサクの裏
写真B : C5 ac   20番通り 標識25番の先 左側

名前の由来 サンシュユ Cornus officinalis

和名 サンシュユ 山茱萸 : 山に生える 茱萸?
漢名の音読みであるが、意味は確定していない。
「茱萸」は 漢字の字義からも「赤い実」のことなので、山に生える赤い実のなる木 の意味かも知れない。
 
NPO法人「武蔵野自然塾」を主催している 梅田さんの、「山」は地名ではないか、というアドバイスを受けて、サンシュユの原産地を調べてみた。

Flora of China および GRINともに、安徽省、甘粛省、河南省、湖南省、江蘇省、陝西省、山東省、山西省、浙江省 と広範囲にわたっている。印   (図はWikipedia より)

この中で 山西省・ 山省に注目すると「山」は 太行山脈のことであり、河南省も含めてこの山の付近に産する「赤い実:茱萸」、という意味になる。

別名 ハルコガネバナ : 春黄金花
葉が出る前に 真っ黄色の花が咲く様子。
別名 アキサンゴ : 秋珊瑚
秋にたくさんの赤い実をつける様子。
種小名 officinalis : 薬用の、薬効のある の意味 
『花と樹の大事典』には、サンシュユが日本に伝わったのは、「1772年(享保7年)で、小石川の幕府御薬園(現植物園の起源)に播種されて広まったとされる」とあり、ゆかりの植物ということになる。薬用に朝鮮から伝わったものなので、その後盛んに栽培されたのだろう。

シーボルトが来日したのは 約50年後の1823年。漢方薬ということが分かっていて学名を付けたのだから、日本産でない事も調べはついていただろう。

Cornus ミズキ属 : 
ミズキ属のある種に対する ラテン名、 とする説と、ラテン語の「cornu つの」の意味から とする説がある。ところが「ツノ」の由来が 木の硬さにちなむという解説である。少なくともミズキの材は柔らかい。

弓のように湾曲するミズキの枝の付き方が、ツノに見えなくもない・・・。
これは 花序が枝の頂部に付くため、次年の芽は先端にはなく、すぐ近くの脇芽から出た枝が次の「主な枝」となって伸びていくことによる。
 

ミズキ属をさらに細かく分類した時の「狭義の Cornus属」 はサンシュユ属と呼んでいるので、APG分類体系での呼び名を 「Cornus サンシュユ属」とする考え方もある。


植物の分類 : APG II 分類による サンシュユ の位置
ミズキ目 ミズキ科の位置は APG分類で大きく変わった。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 ミズキ目  ウリノキ科、ニッサ科、ミズキ科、ガリア科
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
ミズキ目  ミズキ科、ヌマミズキ科、シレンゲ科、アジサイ科、など
ミズキ科  ウリノキ属(←ウリノキ科 より)、ミズキ属
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ