名前の由来 シクンシ Combretum indicus |
シクンシ : 使君子 |
熱帯アジアの原産であり、沖縄には野生化しているとはいえ日本の植物ではない。「シクンシ」の名は中国で付けられた名の音読みである。
中国では古くから漢方で「駆虫薬(虫下し)」として使われていた。
「子」は本来、漢方では種子を指すものだと思うが、シクンシは「実」を利用するようだ。
「使君」は「四方の国に差し遣わされる天子の使者」である。 この名を付けた理由は、シクンシが使いやすい良薬で、まるで「天子が使わす使者のようなありがたい薬」
とでもなるのだろうか。 |
台湾国立 臺南大学のホームページに以下の主旨の由来説明があった。 人名が由来となっている。 |
伝え聞くところによると北宋年間に、四川省の潘州(現在の松潘県)に 郭 使君という医者がいた。 薬の採取で山にはいっていた時、ツル植物に実が生っているのを見付けた。 木樵はそれを「留球子」だと言った。 家に帰って鍋で煎っているとよい香りが立ちこめ、ニオイを嗅ぎつけた子供がそれを4 ・5粒飲んでしまった。 すると何匹もの蛔虫が便に出て、郭 使君は留球子が駆虫効果があることに気がついた。 これが世間に知れ渡り、郭使君は小児科医の称号が与えられ、留球子はやがて「使君子」とよばれるようになった。 |
過去に考えた いろいろな案 |
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熱帯アジアの原産であり、沖縄には野生化しているとはいえ日本の植物ではない。「シクンシ」の名は中国で付けられた名の音読みであろう。 『広辞苑』や『園芸植物大事典』には、中国名として「使君子」があがっているが、その意味は?
まず 中国名を尊重するが、漢字から考え直してみる必要もあろう。
まずは 使 + 君子 花の色が白から赤紫に変わるところに注目した。「白」が召使いあるいは使いであり、「紫」が君子である。 同じ房に、白と紫が同居している、白が紫に変わる、という珍しい花に付けられた名前である。 聖徳太子が定めた「冠位十二階」でも、色の位のトップが「紫」であり、「白」は下から二番目、黒の上である。 ただし、中国で最も高貴な色は、皇帝以外は使えなかった「黄色」であるため、この説には今ひとつ自信がない。
次に 使君 + 子 この説はうまく説明がつかないのだが、このような区切り方もあり得る、という事で挙げておきたい。 「使君」は四方の国に差し遣わされる天子の使者である。 使君に「子」を付けて何を意味するのか、色の変化とどう関係させるのか、未解決である。 さらには 士君子 士と君子の意味で、社会的な地位や学問が有り、身持ちの良い点で世人の模範となる人、のことである。 品の良い、香りの良いシクンシの花になぞらえたものである。
最後に 四君子 中国風の絵で、他の草木よりもずば抜けて気品が高いといわれる、4つの植物 蘭・竹・梅・菊 を「四君子」と呼ぶが、シクンシは白からダーク・カーマインまで、4つの色を持つところから。 これが 私の筆頭候補だった。
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種小名 indicus : 「インド産の」という意味。 |
アメリカ農務省の GRIN によると、インドも原産地に含まれている。
以前の学名 Quisqualis indica だったのが、新しい学名では種小名が indicus となっている。 これは Quisqualis属の性が「女性」だったに対して、Combretum属は「男性」であるために、形容詞である種小名の語尾が変化したもの。
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Combretum シクンシ属 : |
由来は 不明。
綴りからすると conbine と関係がありそうだ。 色を組み合わせる といったところだろうか? しかし、シクンシ属の花が すべて色変わりするわけではないだろう。
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旧属名、Quisqualis シクンシ属 : 誰?何?という意味 |
ラテン語の quis (だれ?なに?どんな?) と qualis (どのような?どんな種類の?) というふたつの疑問詞を並べたもので、花の色が開花中に変化していくことに対する、素朴な驚きにちなむと言われている。 『小学館
園芸植物大事典』による
この属名とシクンシは『植物の種』第二版(1762)に記載されたもので、ほかの多くの属名とは違って 以前から定義されていたものではない。 リンネが一種のユーモアを込めて命名したものだろう。
遺伝子解析に基づく APG分類 では、残念ながら Quisqualis属は統合されたために消滅してしまった。 |
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