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科 名 : | ブナ科 Fagaceae | ||
属 名 : | シイ属 Castanopsis Spach (1842) | |||
異 名 : | Castanopsis cuspidata var. sieboldii | |||
別 名 : | イタジイ、ナガジイ、シイ | |||
原産地 : | 本州の中部以南から 沖縄、韓国南部 | |||
用 途 : | 庭木、公園樹として植えられる。 果実は生食もできるぐらいに渋みが無く、煎るとさらにおいしい。太古から食用にされていた。材は建築材、器具材、シイタケのほだ木とする。樹皮にはタンニンが含まれ、染色に使われる。 |
ブナ科の樹木には和名に統一が無く、カシ 樫 の名が、色々な属にまたがって付けられている。たとえば、マテバシイ属の Lithocarpus glaber
に「シリブカガシ」の和名が付いている。 ブナ科の 和名 比較一覧表は 別項で掲載した。 |
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以前スダジイは、ツブラジイ(コジイ) Castanopsis cuspidata の変種 あるいは同種と考えられていたが、近年に両者は別種とされ、APG分類でも別種の見解が支持されている。 園内のスダジイのほとんどは 傾斜地に生えている。古くからの自生(実生更新)のものか、植えられたものかは未確認。 |
スダジイ の 位 置 |
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@:メインスロープの左 2013.10.19. |
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@:新緑の様子 2011.5.15. |
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葉はこの後 次第に濃くなってゆく。 |
秋の様子 2013.10.19. |
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少し登った所から。 |
@:幹 2013.10.19. | |
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斜面の下部に 斜めに生えている。代表的な「陰樹」のひとつ。 樹皮の残り具合は中程度で、縦の裂け目がランダムにできるので、網の目状になる。 |
A:コクサギ坂のスダジイ | |
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標識62番から始まる 変則的な50番通り。その始まりの(仮称)コクサギ坂右手斜面に生えている。斜面の下側の土が流れ出してしまい、かなり根が露出している。 |
B:シイノキ坂の老木(左) | C:シイノキ坂右手 2012.4.24. |
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![]() 写真では ともに 坂の下 (園の奥) から見返している。 シイノキ坂は 震災記念碑のある標識35番から、マツ林上部に下りていくスロープで、コンクリートで整備された緩やかな坂である。 山側にBの大木があり、谷側に3本が並んでいる。 |
B:老木の幹の様子 | 幼木の幹 | |
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初めは縦に少しの割れ目ができる。太くなるまでは縦の割れ目が目立つが、やがて不規則な網の目状になる。 |
新梢の伸び 2013.4.23. |
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先年枝の先端とその附近から、複数の枝が伸び出す。葉は 早落性の托葉に包まれている。 |
花序が伸び出す 2007.4.7 奄美. |
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新しく伸びた枝の、先端附近を除くすべての葉腋から、主に雄花の花序が出る。 さすがに奄美大島は伸び出す時期が早い。 |
満開の雄花 2013.5.15. |
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蕾の状態では直立していた花序は マテバシイやクリよりも軸が細いために、先端部は垂れる。独特の香りで虫を引き寄せる。 |
雌花序の位置 2007.4.7 奄美. |
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先端寄りの葉腋から 雌花が出る。雄花ばかりで 雌花が付かない枝もある。 マテバシイやクリでは雄花序の下の方に雌花が付くが、スダジイでは雌花だけの花序となることが多い。 |
雌 花 2013.5.15. | 雌花の詳細 |
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撮影:福岡教育大学 福原教授、植物形態学テキストより↑ |
アップの写真がうまく撮れていないので、福原先生の詳細写真をお借りする。 通常花はひとつずつで、苞の中に まれに2、3花がある事があるそうだが、見たことがない。 子房が3室であるために、雌しべが3裂しているが、ひとつだけが1年半掛かって熟す。ごく希に ひとつの穀斗(かくと)に2、3個の果実ができるそうだが、これも見たことがない。 |
↓雌花序 と 雄花序 2013.5.15. | 雄花の詳細 2011.5.15. |
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雄しべばかりが目立つが、雄花には6裂した花被片がある。 |
落下した雄花 2011.5.22. |
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雄花の滓がワタのように積もる。サツキの上にあるのは落ち葉。 |
葉の様子 2013.10.19. |
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葉は皮質で細長い。葉の先端半分に浅い鋸歯があることが多いが、小さな葉などでは完全に「全縁」の葉▼もある。 |
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葉 裏 |
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新緑時はもっと白いが、成長すると淡褐色に。 |
初秋の実 2013.10.19. |
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鹿の角のような今年の果実序。花の時と大きさは変わらず、このまま越冬する。実が大きくなるのは来年の花が咲き終わる 初夏以降。 一方で、左に写っているのが昨年の果実。 |
若い果実 2013.8.8. |
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夏からぐんぐんと大きくなる。初めは花序の多くの果実が大きくなり出すが、いくつかは途中で落ちてしまう。無受精のものだろうか。 実を包んでいるのは苞(総苞)が変化した「穀斗(かくと)」である。クリのイガに相当する鱗片は同心円状だが、波打っていたり不揃いだったりする。 |
顔見せ 2013.10.19. |
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果実が生長すると穀斗は3つに(あるいは不規則に)割れる。果軸ごと、穀斗付き または 実だけ、と 様々な落ち方をする。 |
シイノキ坂はドングリだらけに 2011.11.15. |
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タンニン分が少ないため、生でも食べられる。煎るとクリのような甘みも出て、近年までは子供たちのおやつだったという。 |
冬 芽 2013.10.30. |
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夏前にできていた冬芽は、秋までに大きくなる。 |
スダジイ の 位 置 |
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写真@: | E14 d | ● | メインスロープ左側 |
写真A: | F12 a | ● | 50番通り、コクサギ坂右側 |
写真B: | D5 c | ● | 震災記念碑(標識35)から下るスロープの 右側 |
写真C: | D5 ab | ● | 同 上 スロープの左側 斜面 3本 |
名前の由来 スダジイ Castanopsis sieboldii |
和名 スダジイ : 由来は不詳 |
← シイ 椎 : 強いる から | |
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シイの名は『古事記』(712)、『日本書紀』(720)、『万葉集』(8世紀?) にも登場して「椎」の字を使っているが、新井白石が『東雅』で述べているように、わが国の初めに
樹名 シヒ を漢字音から転じたとは考えられない。 シイの材は固くて強さが求められる用具に使われた。舟を漕ぐ、刑罰として叩く、枷に使うなど 強引に行う・強要する行為が シフ(強)で、その活用形のひとつが シヒ(強)の具として用いられた。万葉の歌でも、誣(し)いられる人の心情を シヒ(椎)に掛けた用例が多い。 和語 シヒ(強)が樹名となり、漢字音が似ている「椎 スイ」を漢字とした、と思う。 |
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種小名 sieboldii : 人名による | |
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命名年 | 学名 | 和名 | 命名者 | 備考 |
@1784 | Quercus cuspidata | ツブラジイ | ツュンベリー | ex Murray |
1835 | Quercus cuspidata | ツブラジイ | シーボルト 解説※ | スダジイに付けてしまった |
A1866 | Pasania cuspidata | ツブラジイ | A. S. Oersted | @の属名を変更 |
B1909 | Pasania cuspidata var. sieboldii |
スダジイ | 牧野富太郎 | スダジイを ツブラジイAの変種とした |
1912 | Castanopsis cuspidata | ツブラジイ | Schottky | Aの属名を変更 |
1939 | Castanopsis cuspidata var. sieboldii |
スダジイ | 中井猛之進 | Bの属名を変更 近年までこれが使われていた |
1971 | Castanopsis sieboldii | スダジイ | 初島住彦 | 変種から「種」に格上げ |
変種名を種小名とした | ||||
解説 ※: | |
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属名 シイ属 Castanopsis : クリに似た の意味 | |
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ブナ科 Fagaceae : | |
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植物の分類 : | APG II 分類による スダジイ の位置 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | ||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
以前の分類位置 | ブナ目 | バラノプス科、ブナ科、ナンキョクブナ科、カバノキ科、など | |||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群 : | |||||||
バラ亜綱: | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | ||||||
マメ 群: | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
ブナ目 | ナンキョクブナ科、ブナ科、ヤマモモ科、カバノキ科、クルミ科、など | ||||||
ブナ科 | クリ属、シイ属、ブナ属、マテバシイ属、コナラ属 | ||||||
アオイ群: | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群 : | |||||||
キク亜綱: | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ |