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科 名: | マメ科 Fabaceae | ||
旧科名: | ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae | |||
亜 科: | デタリウム亜科 Detarioideae | |||
属 名: | タマリンド属 Tamarindus Tourn. ex Linn. (1735) |
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別 名: | チョウセンモダマ 朝鮮藻玉 | |||
英 名: | Indian date, tamarind-tree, tamarind | |||
中国名: | 酸豆、別名:酸角・酸梅 | |||
原産地: | GRINによると:広範囲のアフリカ諸国、イエメン | |||
用 途: | あらゆる部位が利用される有用種で、街路樹、日陰樹としても使われる。 | |||
観察地:小石川温室、セネガル、ガイアナ協同共和国、中国 |
有用種だけに古くから世界中で栽培されているが、日本には「生の果実」は輸入されていないようである。加工されたものは数多く見られるが、中にはダイエット食品などまである。 甘い果実がなる栽培品種もあるそうだが、通常の果肉はとても酸っぱくて、カレー料理をはじめとして酸味料として使われる。中国名「酸豆」は端的にこれを表している。 種子、葉、花、若い莢などを食用にするほかに、下剤、金属の研磨剤、染料、木工材料、薪炭材としても利用される。 |
小石川温室 第2室 |
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メインエントランスの第3室からの左隣の区画に入ってすぐの棚にある。高さは1m強。こんなに小さく細い木なのに、花が咲いていた! |
茎頂につく花序 2022.7.30. |
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多くの小花が落下した後、今咲いている黄色い花も終わりに近いようだ。最後の蕾は半透明の白い萼に包まれている。 |
ドゥ・アン公園 入り口付近 | 幹の様子 |
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看板の後ろに2本あるうちの 左側。看板は動物園や森林公園の案内板で、植物園はその一画にある。 |
適地で成長すると 25mにもなるそうだが、まだ小さな木で、太さは20cmぐらい。植物園にはほとんど名札が無いのだが、タマリンドには付いていた。 |
根元に立て札 | 現地名 Dakkar |
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名札の中央にある現地名はなんと「ダカール」である! セネガルは自生地のひとつだが、ダカールを代表する木のようだ。それにしては街中ではほとんど見かけなかった。 |
芽吹き と 展葉 2012.6.21. | |
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ハワイ島のとある農園で。芽吹き時には 数枚の低出葉の中から、フレッシュピンク色の複数の葉が一斉に伸び出してくる。 |
花 2005.11.18. |
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南米ガイアナの首都ジョージ・タウンで見たもの。残念ながら高い所に咲いていたため、アップの写真は撮れなかった。 赤色の部分は小苞で、開花前に脱落してしまう。 |
タマリンドはタマリンド属に1種しかない単型属で、その特殊性は花の構造にある。 |
花 序 2023.7.13. |
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前掲写真の翌年に ベストの状態を撮影できた。 花序は下降して小花は「そのまま」咲くので、ジャケツイバラなどとは上下が逆、旗弁が下向きの状態となっている。赤茶色の小苞が脱落する様子がよくわかる。 |
花 (蕾 ~ 開花) |
![]() flickr / creative commons / by Mark Yokoyama 2022.6.27 |
詳細を説明するために、ヨコヤマさんの素晴らしい写真をお借りする。文字は筆者が加筆したもの。 |
前掲写真の部分拡大。 本来5個の花弁のうち 2個は退化。また本来10個ある雄しべも、7個は退化して刺状になっており、写真では3つが見えている。雄しべ群は基部で合着。 |
リンネは『植物の種』に、雄しべの本数によって「Triandria 雄しべ3本、Mnogynia 雌しべ1本」の章に記載した。 マメ科は通常10本なので、ほかの種はまったく違う場所になってしまう。このようなリンネ分類は、「二名法」で記載したことを除いては、現在は受け入れられていない。 |
果 実 2003.10.4. |
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セネガルのもの。10月の初めだったが まだ完熟ではなく、落ちていたものはなかった。ただ、落ちたものは誰かがすぐに拾うだろう。 |
路上販売 2008.7.15. |
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中国雲南省 地方の村で。熟果を乾燥したもの(だと思う)。 |
果 肉 | 種子 と 莢のスジ |
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落花生にはもっと多くのスジがあるが、タマリンドの薄い殻と可食部を取り除くと、4本程度の まるで根のような形が残る。 |
ジュース | |
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左 ドミニカのホテルの朝食(中央)、右は中国。砂糖などで味付けしてあるので酸味は弱い。 |
名前の由来 Tamarindus indica | |
タマリンド Tamarindus属: | |
本種のアラビア名 Tamar-Hindi あるいは Tamr-Hindiy 「インドのナツメヤシ」に由来する。リンネ以前にトゥルヌフォール(1656-1708)が提唱していた。 | |
樹木そのものに対してではなく、インドから交易品としてアラビア地区にもたらされた果肉が、ナツメヤシから作られたものと信じられていたからだそうだ。しかし「ナツメヤシのようなもの」であって、ナツメヤシの一種と考えたわけではない可能性もあるだろう。 |
ナツメヤシ | |
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筑波実験植物園 サバンナ温室。果実のサイズは 20~52mm。 30年間の栽培の後に大きくなりすぎたために、2016年頃に伐採された。 |
種小名 indica:インドの という意味 | |
タマリンドの原産地は熱帯アフリカといわれている。 有用種だけに古くから各地に伝えられて栽培が広がり、それがまた野生化することが考えられる。何百年か後になってそれを「発見」したプラントハンターにとっては、原産地かどうかの判断が難しかったことだろう。 |
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学名の元となっているリンネの『植物の種』(1753) にはアフリカは無く、インドのほかに アメリカ、エジプト、アラビアが記載されている。 | |
属名と種小名で表す植物名は「インドのインドナツメヤシ」となってしまい、誤情報の「インド」が重複してしまっていて、よろしくない。 | |
参考文献の Hendrik van Rheede(1636-1691)による『Hortus Indicus Malabaricus』第1巻(1678-79) p.39 図23 を見ると次の図版があり、丁度 温室で撮ったのと同じような終わりに近い花序(中央 下)が描かれていた。 |
![]() Biodiversity Heritage Library より |
マラバル地方の現地名は Balàm-Pullì。 |
デタリウム亜科 Detarioideae: | |
マメ科の下位 亜科の構成が変わり、 ジャケツイバラ亜科、ハナズオウ亜科、デタリウム亜科、ディアリウム亜科、デュパルクエティア亜科、マメ亜科 の6亜科で、これまでのネムノキ亜科はジャケツイバラ亜科のなかの「節」となった。 |
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本種が位置する デタリウム亜科には 84もの属があり、筆者が見たことがある属としては、バイキアエア属、ブロウネア属、キノメトラ属、ヒメナエア属、マニルトア属、サラカ属、そしてタマリンド属があった。 デタリウム属の名は もちろん初耳である。 |
別名 チョウセンモダマ : 朝鮮のモダマ? | |
以前は学名の属名 あるいは英語名の「タマリンド」しか知らなかったが、今回事典を調べて「チョウセンモダマ」という和名があることがわかった。しかし.... 朝鮮人参とは違い、「チョウセンモダマ」を単純に「朝鮮のモダマ」とするのは不自然である。 |
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まず、タマリンドは熱帯・亜熱帯の植物であるから、原産地ではないため。 次に「モダマ」だが、藻玉は屋久島や沖縄にも自生しているマメ科の蔓植物で、1m以上にもなる長い大きな莢(サヤ)を付ける。これに比べるとタマリンドの莢はきわめて小さい。月とスッポン、大人と赤ん坊ほどの違いがあり、莢や豆の形もかなり異なる。つまり「モダマ」に似ているために名付けられたものではない。 |
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上記を考えると、「チョウセン」は今でいう「差別語」で「イヌ~」と同じように「劣った」という意味で使われたのではないだろうか。 |
チョウセンモダマ ← モダマ (藻玉): Entada phaseoloides Merrill (1914) |
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木に纏わりつく蔓 | |||||||
![]() 2007.4.9 |
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小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ |