チークノキ チークの木
Tectona grandis Linn. f. (1782)
科 名: シソ科 Lamiaceae
旧科名:  クマツヅラ科 Verbenaceae
属 名: チーク属 Tectona Linn. f. (1781)
中国名: 柚木 you mu
英 名: teak
原産地: インド、スリランカ、インドシナ、フィリピン、フィジー
用 途: その材は、マホガニー・ウォルナットとともに3大重要木材である。
堅くて耐久性があり、家具・内装仕上げをはじめとして、建築、船舶、特にデッキ材などとして使われる。
撮 影:
小石川温室、ドミニカ共和国
タイ 、インドネシア
シンガポール

建築設計の仕事をしているので、昔からチーク材のことは知っていたし、趣味の日曜大工では、チークの薄板をベニヤの小口に張り付けたりもしていた。
しかし、チークノ木そのものは知らなかったため、初めてドミニカで実物を見ても、名札の無いその木がチークだとはわからなかった。
小石川温室 第2室
温室では鉢植えだが かなり大きく育っており、太さ7cm程度なのに 高さ4m弱。剪定されるとどんどん伸びるのだろうか。


代表的な南洋材だけに、どこの植物園でもチークノキを見ることができる。またタイのチェンマイ市街から、北の方向にあるシリキット女王植物園に向かう途中では、栽培中?のチークの木をたくさん見かけた。
以下は、各地のチークノキ。
なぜか高さは皆同じぐらいで、10~15mだった。

ドミニカ共和国 国立植物園
この2枚の写真は別の角度から撮った同じ木で、左は1月、乾期でちょうど実が生っている時。右は3月、そろそろ乾期も終わりで、落葉が多かった。
素直に育たなかったのか、大きくなりすぎて切られたのか、地面に近いところで枝分かれしている。そのお陰で、低い位置に枝があって、葉や実の写真を撮ることができた。
タイ北部 チェンマイ近郊
左:シリキット女王植物園のものは巨大で、枝振りが良い。
右:タイ北部は自生地の一部だが、道端の木は当然植えられたものだろう。
シンガポール植物園
大きくなると高さ 30~45mになるそうだが成長は遅く、建築材として利用が可能になるまでに、60~80年かかるそうだ。
               『朝日百科/植物の世界』
この木は20m弱だが、その割に幹の直径は35cmぐらいと細い。背が高くなっても、幹の太さが大きくならないようだ。チーク材が高価なのは、ひとえに成長の遅さによるもの。

葉の様子
ドミニカ 2006.1.22
大きなものでは長さ40cmもある。
開花時期ははっきりしないが、開花後に新たに伸びた枝で、葉の付き方は「十字対生」なのに、日光を効率よく受けるために捻れていて、ひと目見ただけではそれとわからない。果実期なのだが、中央の果序には実がついていない。
幼 果
シンガポール
植物園
2009.1.20
茎頂だけでなく多くの葉腋から果序が出て、全体で巨大な円錐花序となる。無数の花が咲いたはずなのに果実の数は少なく、ひとつも生っていない果序さえある。
果 序
ドミニカ 2006.1.22
下枝についた小型の果序。果実は膨らんだ萼に包まれている。逆光で半透明の袋の中に、種子ができているのが見える。
落 葉
ドミニカ 2008.3.8
サント・ドミンゴは11月下旬から翌年3月ぐらいまでが乾燥気味で、乾季の終わりにはかなりの葉が落ちていた。一方で、新緑も見受けられる。


名前の由来 チーク Tectona grandis
.チーク:英語名の読み
.Tectona チーク属:
属名テクトナは、印度南西部マラバル地方、現在のケーララ州でのMalayalam語の名称 「tekka」 あるいは 「thekku」 に由来するという。『Merriam-Webster』によるとその後にポルトガル語で teca となったようだが、それが tectona になるには、途中にもっと変化があっただろう。いずれにせよ、その意味はわからない。
.種小名 grandis:大きな の意味 
まずは 30~40mにもなる木の大きさによるものだろう。また、大きな葉や花序も意味しているのかもしれない。
命名者である Linn. f. (1741-1783)はリンネ(1707-1778)の子供で、名前が同じために小リンネと呼ばれた。「f. 」は 「filius むすこ」の略。
父の死後にその仕事を引き継ぎ『植物の種 補遺』をまとめたが、本種も同書に記載されている。
しかし父の死の5年後、42歳で早世してしまった。
Wikipedia より
.シソ科  Lamiacece または Labiatae:
クロンキストの分類時代は「クマツヅラ科」だったのに、いつの間にか? シソ科に変わっていた・・・。
というのは筆者の認識不足で、タイ シリキット植物園のラベルは、2009年にすでにシソ科になっていた。APG III の発表が2009年なので、すでに II の段階で変更されていたのかもしれない。
シソ科は草本が多かったが、大木のチークが所属したことで、立派な木本所帯となった。
.シソ 紫蘇 :
筆者が参考にしているアメリカ農務省の「植物遺伝資源システム」によると、現在栽培されている シソ Perilla frutescens var. crispa は、栽培品種とされている。
中国原産種は P. frutescens var. purpurascens で、現在の中国名は 野生紫蘇 ye sheng zi su 。
赤紫蘇の花と葉
『語源辞典 植物編 / 吉田金彦』によると、中国では元々「蘇」の一字でシソを意味していたが、後に「紫」を加えて二字化した とある。
Wikipedia より
.蘇 :よみがえる の意
『角川 漢和中辞典』の「蘇」の字義には、植物の「シソ」は無い。結実・落下したシソの種子は9月~3月まで土の中で休眠・越年し、春になると自然に発芽する。
上記のように、何もしなくても毎年「蘇る」シソを「蘇」で表したのだろうか? (推定、未確認事項)
.Lamiacece 科 :
シソ科の基準属である オドリコソウ属 Lamium による。
Lamium は、ギリシア語の laimos(喉のど の意)による。
花筒が長くまた曲がっている形を喉頭部が曲がっている形に喩えたものではないか。
.Labiatae 科 :
シソ科学名の別名。シソ科の花が唇の形になるためで、ラテン語 labea 唇にもとづく。
参考:シソ科 Phlomis fruticosa
チークとは関係がないが、シソ科の花冠の形の説明。5数性の花が横向きに咲き、上下に2深裂する。上唇は2裂。3裂する下唇は中央裂片②b が大きく突き出て、さらに2裂する。



植物の分類 : APG IV 分類による チークノキ の位置
以前は、シソ目クマツヅラ科に分類されていたが、APGではすぐ隣の科、シソ科に変更された。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
基部被子植物 : アンボレラ、スイレン、アウストロバイレア
モクレン類 : カネラ、コショウ、モクレン、クスノキ
 独立系統 : センリョウ
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ
中核真生双子葉類: グンネラ、ビワモドキ
バラ上群 : ユキノシタ
バラ類 : ブドウ
マメ 群 : ハマビシ、マメ、バラ、ウリ、ブナ
 未確定 : ニシキギ、カタバミ、キントラノオ
アオイ群 : フウロソウ、フトモモ、アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク上群 : ナデシコ、ビャクダン、など
キク 類 : ミズキ、ツツジ
シソ 類 : ガリア、リンドウ、ムラサキ、ナス、シソ、など
以前の分類場所  シソ目  クマツヅラ科
 シソ科 チーク属、シソ属、ハッカ属、サルビア属、オドリコソウ属、など
キキョウ類 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物(進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ