テリハボク 照り葉木
Calophyllum inophyllum Linn. (1753)
科 名: テリハボク科 Calophyllaceae
旧科名: フクギ科 Clusiaceae
 ← オトギリソウ科 Hypericaceae
属 名 : テリハボク属 Calophyllum Linn. (1735)
原産地 : 熱帯アジア、温帯アジア(日本では沖縄)、熱帯アフリカ、太平洋諸島 など
英語名 : Alexandria laurel , Indian laurel 他
用 途 : 大木となり材が硬いため、かつて南洋地域で造船材として使われた。
現在は街路樹、庭園樹とされる。
種子や樹皮が薬用に使われる。
撮影地 : 小石川温室・沖縄、ドミニカ共和国
ジャマイカ、シンガポール 、米国
特記以外の撮影は 筆者。

この艶々の葉を見ると育ててみたくなるが、東京では温室がないと難しいだろう。

小石川温室 第4室


樹形 沖縄       2000.10.30.
テリハボクを最初に見たのは沖縄本部の熱帯・亜熱帯都市緑化植物園で、街路樹風に植栽されていた。
樹形 ジャマイカ   2008.4.5.
高さは約 12m。人が小さく見える。花が咲いていたのだが、高いところにしかなく、匂いは嗅げなかった。
樹形 シンガポール植物園      2009.1.21.
南側のメインゲイト近くにある、樹齢100年以上の大木。
ビジターセンターはこの木を避けて配置され、さらに3階の一部は、張り出した枝を残すために建物を凹ませている。
幹 沖縄 幹 ジャマイカ
太くなるにしたがって縦にひび割れるが、太くなっても樹皮が落ちることは少ないようだ。
葉     2000.10.30.
属名や種小名の由来にもなっている 美しい葉。
透ける葉脈 ゴムノキ
温室の1枚の先端がたまたま大きく凹んでいたが、通常は楕円形。中央脈からほぼ直角に出ている側脈は、極めて細くて間隔が狭いために、少し離れるとまったく見えずに緑一色になる。
ついつい (インド)ゴムノキと較べたくなるが、ゴムノキの先端は尖っており、また、新葉は托葉由来の苞に包まれている。
花序 ハワイ       2013.7.6.
新梢の茎頂付近の葉腋に多くの総状花序をつける。各花序の小花の数は、この枝では8〜10個で、全体として枝先に大きな花の塊ができる。この個体の子房は赤い。
花     Wikipedia より
フクギ属と同じ4数性。球状の蕾の時に見えているのは白い萼片で、4枚のうち2枚は小型だが、もう2枚の形やサイズが花弁とほぼ同じであるため、6弁に見える。
果実 沖縄   2000.10.30.
ピンポン玉サイズの果実。種子は1個で、海水に浮かんで散布されるために、海岸林ができるそうだ。この個体では1花序にひとつの果実しか生っていないが、複数の果実がつくこともある。



名前の由来 テリハボク Calophyllum inophyllum
 テリハボク:照り葉木 あるいは 輝り葉木
テリハボクの和名は 科名、属名にも使われている。
『広辞苑』によると、漢字の「照」には、「光を放つ」のほかにも「つやが良い、美しく光る」の意味があるので、照り葉木で間違いではない。
逆に、漢字「輝」には「てる」という訓は無いが、人名として使う時には「てる」も使われる。
筆者としては、きれいに光を反射するテリハボクは「輝り葉木」がよい。
 Calophyllum 属:美しい葉 の意味
ギリシア語の「kalos 美しい」と「phyllon 葉」の合成語。テリハボク属は 約180種もあるそうだ。
 種小名 inophyllum:葉脈が顕著な葉 の意味
ギリシア語の「is(inos) 繊維」と「phyllon 葉」の合成語。
このように、テリハボクは和名、属名、種小名のすべてが葉の美しさにちなんだ名前となっている。しかも葉の量が多く、熱帯の地に木陰を作ってくれる。
 英語名 Alexandria laurel , Indian laurel:
インドは自生地の一つだが、アレクサンドリアは範囲外である。地中海に面する国には自生地が無いため、種子が流れ着いて育つこともできない。植栽したものが野生化する可能性はあるので、そうした木をヨーロッパ人が見て命名したもかもしれない。
そしてどちらにも「ローレル 月桂樹」の名が付いている。
「照り葉」の象徴という意味で使われているのだろうか?
ゲッケイジュの葉はテリハボクとは全く違う。
ゲッケイジュ



植物の分類 : APG IV 分類による テリハボク の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
基部被子植物 : アンボレラ、スイレン、アウストロバイレア
モクレン類 : カネラ、コショウ、モクレン、クスノキ
 独立系統 : センリョウ
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ
中核真生双子葉類: グンネラ、ビワモドキ
バラ上群 : ユキノシタ
バラ類 : ブドウ
マメ 群 : ハマビシ、マメ、バラ、ウリ、ブナ
 未確定 : ニシキギ、カタバミ、キントラノオ
 キントラノオ目 ヒルギ科、フクギ科、テリハボク科、オトギリソウ科、スミレ科など
 テリハボク科  テリハボク属のほかに 14ほどの属がある
アオイ群 : フウロソウ、フトモモ、アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク上群 : ナデシコ、ビャクダン、など
キク 類 : ミズキ、ツツジ
シソ 類 : ガリア、リンドウ、ムラサキ、ナス、シソ、など
キキョウ類 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物(進化した植物 )           

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