トベラ 扉 (海 桐)
Pittosporum tobira Aiton ( 1811 )
← Euonymus tobira Thunb. (1780)
科 名 : トベラ科 Pittosporaceae
属 名 : トベラ属 Pittosporum
Banks ex Gaertn. ( 1788 )
中国名 : 海桐
英語名 : Japanese pittosporum , Australian laurel
mock orange
原産地 : 太平洋側では岩手県以南、大西洋側では新潟県以西、海岸近くに生える。
朝鮮半島南部、台湾、中国
用 途 : 庭木、生け垣
 

トベラは分類標本園にしかなかったと思っていたら、精子発見のイチョウの足元にもあった。 低木で 2~3 mにしかならないが、標本園ではそれでも大きすぎるため、剪定されている。  常緑の雌雄異株。

  2000.5.21           ① : 分類標本園               2011.3.1
左の写真のあと、雌雄二本の細い若木に植え替えられた。

三島神社のトベラ

        伸び始めた新葉  2011.2.20         生えそろった新葉  2008.5.5
台北植物園
                   ① : 葉の様子             2011.3.1
往々にして 葉はねじれたり丸まったりする。

                       雄 花              2007.4.7
奄美大島で撮影したもので、東京よりも開花は早い。 雄しべが大きく黄色い。
樹形は悪いが 花は良いにおいがする。

                       雌 花              2009.5.5
雄しべに葯があるが、有効な花粉はできない。  子房には毛がある。
早くに咲いた中央の花は、時間が経って黄みがかっている。

                   若い実と 葉の様子         1999.10.11
箱根プリンス 旧樹木園

             若い実の直径は 大きいもので 15mm    2008.10.5
標本園の雌株に実が生るという事は、二本の内の一本は雄株ということだ・・・。
                   割れた実から赤い種子が          2010.11.27
実はうす黄色に色付き、3つに割れて種子が露出する。 ネバネバした液で くっついていて落ちない。 鳥に食べられて繁殖する。

                    3つに割れた実          2008.1.13
熱海市 伊豆山


普段中まで入らない 精子発見のイチョウの足元に、真っ白の花が咲いていたので気が付いた。 名札がないが、トベラの雄株のようだ。

            ② : 精子発見のイチョウ と 満開のトベラ   2011.5.24
              ↑白い花が
花は白から黄色になる
雄しべが大きいので 雄株だと思ったが、6月になって実が生り、雌株と判明した。 
                    ② : 若い実            2011.6.19

 
トベラの 位 置
写真① :
分類標本園内。 売店から8列目、一番右
雄株雌株 1本ずつが植えられている。
写真② : 雌株。 精子発見のイチョウに向かって 左側

名前の由来 トベラ Pittosporum tobira

トベラ 
花の香りは良いが 葉や枝には独特の臭気があり、鬼除けとして節分の時に 家の「とびら 扉」に挿した、という風習から「とびらの木」が 「トベラ」に転訛した、と言われている。

その「独特の臭気」を言葉で表すのが難しいのだが、耐えられないような悪臭ではない。
 
種小名 tobira : 和名 トベラ あるいは トビラ から
18世紀に日本にやってきたツュンベリーが、日本人から聞いた名前をそのまま学名としてもの。

ただし、ツュンベリーは「ニシキギ科 ニシキギ属」に分類した。 
割れた果実に赤い実が生るところが似ているめであろう。
 
中国名 海桐 : 由来は不明
「海」は トベラが海岸近くに生えるため。 しかし、なぜ 「桐」なのだろうか?  「海桐花」 とするのは間違い・誤用である。
台北植物園の名札
 
英語名 Australian laurel : オーストラリアの月桂樹
日本ではトベラ属が数種あるだけだが、ほかのトベラ科の多くは、オーストラリアのニューカレドニア島やニュージーランドが原生地であるために、「オーストラリア」が付いている。 ローレルは常緑樹の代名詞であろう。
英語名 mock orange : バイカウツギの英名 と同じ
mock は「ニセの」という意味で、バイカウツギの花と香りがオレンジに似ているところから名付けられたというが、花の形は違う。
バイカウツギ
小石川植物園
トベラの方が 花弁が5枚なので、オレンジの花に近いと言えるが、まあ 形ではなくて、香りの良さでしょう。
ダイダイ
牧野植物園
 
Pittosporum トベラ属、トベラ科 : 
ギリシア語の pitta 瀝青 + spora 種子 。
「れきせい」 とは、天然あるいは人造の炭化水素化合物。 タールやアスファルトなどが含まれ、ビチューメン、チャン などとも呼ばれる。
トベラなどの種子が「粘性物質」に包まれていることにちなんでいる。 瀝青というと どうしても黒いイメージであるが、トベラのは透明である。

 


植物の分類 : APG II 分類による トベラ の位置

クロンキスト分類では「バラ亜綱 ・バラ目」に位置づけられていたが、APG分類では、最後に分化したとされる「キキョウ群 ・セリ目」に変更された。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 バラ目  トベラ科、アジサイ科、ベンケイソウ科、バラ科、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
セリ目  ウコギ科、セリ科、トベラ科、など
トベラ科  ビラルディエラ属、トベラ属
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ