トウダイグサ 灯台草
Euphorbia helioscopia Linn. (1753)
科 名 : トウダイグサ科 Euphorbiaceae
属 名 : トウダイグサ属 Euphorbia Linn. (1737)
中国名: 澤漆 ze qi
英語名: spurge , sun spurge
原産地 : アフリカ、アジア温帯・熱帯、ヨーロッパ全般
用 途 : 昔は 殺虫剤、解熱剤、利尿薬などに利用された


二年生の雑草で 園内いたるところにありそうな気がするが、生えているのは本館前、案内板の足元。 背丈はせいぜい30cm。 トウダイグサ科の説明のために 取り上げたい。

                 ハナニラには負ける           2012.4.13
寒かった2012年は ご多分に洩れず、開花が1ヶ月程遅かった。 以下の写真の撮影は すべて 2012.4.13。

花序の様子
花は4段階に分かれて付く。 茎の先端は 5つに分かれ、花序全体の直径で 約20cmとなる。 もちろん大小はある。 その中央にまず ひとつ目の花序が付く。 この写真ではすでに落ちてしまっているので、次の写真を参照。 
 ① : 中央の花             2012.4.13
基本的には三数性の植物なのに、まず 「5つ」に分かれるところがユニーク! この花はすでに結実済みで、3つの子房が膨らみつつある。 この様子から、「鈴振り花」 という別名がある。

次に各「枝」は3つに分かれるが、その腋(分かれ目)に 二段階目の花が付く。
三つ又の中央に付いた 二段階目の花序

それぞれの花の位置 ①~④
この個体では、四段目の花はまだ見えていない。 ④は位置を示す。

三段階目の花序 ③
3つに分かれた先に 2~3枚の総苞が付き、枝分かれの腋に三段階目の花序が付く。  横向きに振り出された子房、ダイヤモンドのようにキラリと光る腺体と黄色い雄しべが見える。 腺体は蜜を出して虫を集める。 次は 部分拡大写真。
盃状花序というそうだ。  各花序に雌花は一つずつ。 この次の段階の花序も 本来 三個出るのだが、ここでは2つしかない。

四段階目の花序
最後の花序の雌しべが 丁度 開花成熟期の状態であった。 子房もまだ上向きである。

 
トウダイグサの 位 置
D13 c 本館向かい側、案内図付近


名前の由来 トウダイグサ Euphorbia helioscopia

トウダイグサ 灯台草 : 昔の明かり 灯台に見立てたもの
菊灯台
上部に皿を載せ、灯芯に火を灯す。

写真のように菊の花のデザインを施したものを「菊灯台」と呼ぶ。
高さは不明。 プロポーションから 数十センチと思われる。
国立科学博物館の
コレクションより
トウダイグサ?
植物園の背丈では 灯台 のイメージが湧かないが、宝塚のシーズンズ・ガーデンで見たものは 50cm 以上あり、灯台にぴったりだ。 

これは別種 「タカトウダイ」 Euphorbia lasiocaula の可能性が高い。 育つ場所によっては 1 ~ 2m になるそうだ。

5つの花序が油皿で、黄色く色付いたところが炎である。

種小名 helioscopia : 向日性の という意味
本館前のトウダイグサは 確かに南側に傾いている。 反対側がヒマラヤスギの葉で暗いので、当然かもしれない。 一緒に咲いているハナニラも同様なので、「向日性」の証にはならない。

Euphorbia 属 : 人名による
紀元前のギリシア人医師 Euphorbus を顕彰したもの。 
エウフォルブスはアフリカ北部の古代王国 ヌミディア、および マウレタニアの王であった ヌバ二世(紀元前50年頃-紀元23)の侍医であった。 サボテンに似たユーホルビア植物が強力な下剤となることを発見した。

リンネは『植物の属』(1735)に Euphorbia 属を記載した。 すでにそれまでに 何人かの先人が Euphorbium あるいは Euphorbia の名称は使っていたものである。

英語名 spurge : 下剤 から
中世の英語・古いフランス語の 「espurge 不要なものを取り除く、きれいにする」に由来する。 トウダイグサ あるいはトウダイグサ科の植物が下剤として使われたことによる。

sun spurge も使われるようで、「向日性」の種小名が関係しているのかもしれない。



植物の分類 APG II 分類による トウダイグサ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 トウダイグサ目  ツゲ科、、シムモンドシア科、パンダ科、トウダイグサ科
トウダイグサ科  アカギ属、コミカンソウ属、トウダイグサ属、アブラギリ属など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
 キントラノオ目  ヤナギ科、スミレ科、トケイソウ科、トウダイグサ科、など
トウダイグサ科  トウダイグサ属、シラキ属、トウゴマ属、ナンキンハゼ属、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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