ツリガネカズラ 釣鐘蔓
Bignonia capreolata Linn. (1753)
科 名 : ノウゼンガズラ科 Bignoniaceae
属 名 : ツリガネカズラ属 Bignonia L. (1735)
別 名 : カレーカズラ
英 名 : cross vine, quarter vine,
trumpet flower
原産地 : アメリカ合衆国東南部
用 途 : 観賞用
東京でも地植えで越冬できる

有名な「メンデルのブドウ」のところ。 管理地との仕切りである低い金網に絡まっている。

               柵に絡まるツリガネカズラ         2012.1.25

葉の様子
3枚がひと組の「三出複葉」なのだが、中央の小葉は巻きひげとなっていて2枚のように見える。
観察できていないが、蔓の先が吸盤になって吸い付くので、ワイヤなどがないコンクリートの壁でも壁面緑化に使えるそうだ。

                      花               2007.5.13
京都植物園のパーゴラ。 花付きは良いが、好き嫌いがあるだろう。

花は昨年の枝から出る。 外側には細かな毛が生えており、色が濃い。 先端は5つに分かれ、内側は黄色い部分が多い。 この色が「カレー・カズラ」の所以だろう。 カレーの香りがするわけではない。 
果実はまだ見たことがない。


 
ツリガネカズラ の位置
C13 ab 10番通り右側、メンデルのブドウ のところ、 フェンス

名前の由来  Bignonia capreolata Linn.

ツリガネカズラ 釣鐘蔓 : 釣り鐘型の花が咲くつる植物
花の形は確かに鐘の形ではあるが、花の付き方がを向いているので、「釣り鐘」の命名はふさわしくない。

種小名 capreolata : 「巻き鬚のある」という意味。
巻き鬚はツリガネカズラだけではないが、800種ほどあるノウゼンカズラ科の中で、15種程度のようだ。 リンネ以前に Brey が、「アメリカ産の巻き鬚のあるビグノニア」と記載していた。 1753年 またそれ以前には、ほかに巻き髭付きがなかった可能性がある。

ツリガネガズラ属、 Bignonia属 :
ノウゼンカズラ科の基準属。
リンネは『植物の種』(1753)で、ツリガネカズラ以外に、19種の植物を Bignonia属として分類したが、その後の研究で別の属に細分化され、残っているのはツリガネカズラ 1種のみとなってしまった。

Bignonia の名は、フランス ルイ14世の司書 ビニョン (A. J. P. Bignon 1662-1743) にちなんで名付けられたというが、ビニョンについての詳しいことはわからない。 規約上の命名者はリンネだが、実際の命名者は同時代にパリの植物学者であった トゥルヌフォール(1656-1708)。 ビニョンと親交があったのかも知れない。

英語名 cross vine, quarter vine
cross 十字の、 quarter 4分割の」 は、恐らく対生する葉の葉柄が、つるから直角に出るためだろう。 そのぐらいしか由来が思いあたらない。 葉が変化した髭は さらに葉柄に90度の角度で付く。

英語名 trumpet flower
トランペットと名が付く花はほかにもあるが、横向きに咲き、内部の黄色が金色のラッパらしい。

 
ノウゼンカズラ科 : Bignoniaceae
主として熱帯、亜熱帯に約120属800種がある。 ほとんどが直立高木、低木あるいはつる性の樹木である。
左右対称(線対称)の鐘状・筒状・漏斗状の花に特徴がある。
 
ノウゼンガズラ(凌霄花) : Campsis grandiflora K.Schum. (1894)
Bignonia grandiflora Thunberug (1784)
ノウゼンカズラも、チュンベリーが命名した時は Bignonia ツリガネカズラ属に分類した。
中国原産で、日本には古く平安時代に渡来したという。
ノウゼンガズラ Campsis 属にはこのほかに アメリカノウゼンガズラだけで、2種のみである。 属名はギリシア語kampeに由来し、「曲がっている」という意味である。 これは雄しべが湾曲していることによるということだ。 

種小名 grandiflora は「大きな花」。

東京豊島区 向原
ノウゼンガズラは古くは「ノショウ」「ノショウカズラ」と呼ばれていた。ノショウが転じてノウゼンとなったということであるが、どうも納得がいかない。

中国名の「凌霄花」の漢字を漢和辞典で引くと、「凌」の音は「リョウ」、訓は「しのぐ」で、意味は「ふるえる、しのぐ」である。
次の「霄」の音は「ショウ」、訓は「そら」で、意味は「雨交じりの雪」の字の形から「消える」、また「遠い空」「かすみ」である。

併せて凌霄花は「大空をもしのぐ花」という意味になる。木々に絡みついて高々と成長した蔓、真夏の青い空をバックにして橙色の花がたくさん咲いている様子である。 古くには、空をもしのぐ高い意志をさして「凌霄(リョウショウ)の志」という言葉があった、 とか...
 
「リョウ」が転じて「ノウ」になるのは自然である。「ゼン」はやはり「ショウ」が転化したものなのであろう。

 
 参 考

アメリカノウゼンガズラ(アメリカ凌霄花) :
Campsis radicans Seem. (1867) ← Bignonia radicans L. (1753)
北アメリカ東南部に分布するノウゼンガズラ。 ただし、ツリガネカズラと分布域は同じ。
種小名 radicans は「根着の」という意味で、気根を出して木などに絡みつき10m以上に伸びることから。 花のサイズはノウゼンガズラよりも少し小さく、細長く密集して咲く。
小石川植物園 2000.6.18 以前はパーゴラ仕立てだった。

ヒメノウゼンガズラ(姫凌霄花) :
 Tecomaria capensis Spach (1840) ←Tecoma c. Lindl. (1827頃)
                    ← Bignonia c. Thunb. (1800?)
南アフリカ原産で、花の大きさは3.5cmぐらいと小さいために「姫」の名が付いている。花の形が縦長であるところもノウゼンガズラとは違う。
テコマリア属はテコマ属に極めて近く、学名もテコマ属にちなんで名付けられたが、現在でも本属をテコマ属に含める学者がいる。

種小名 capensis は「岬の」という意味で、南アフリカ喜望峰を指す。チュンベリーが探検して採取し、ツリガネカズラ属として命名したものが、初めである。

通常は紅橙色であるが、写真は黄色の園芸品種 アウレア。


新宿御苑 温室



植物の分類 APG II 分類による ツリガネカズラ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
以前の分類場所 ゴマノハグサ目  モクセイ科、ゴマノハグサ科、キツネノマゴ科、ゴマ科、
ノウゼンカズラ科、など。  APGではシソ目に統合された。
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
 シソ目  モクセイ科、イワタバコ科、ゴマノハグサ科、キツネノマゴ科、
 ゴマ科、クマツヅラ科、ノウゼンカズラ科、シソ科、キリ科、など
ノウゼンカズラ科  ツリガネカズラ属、キササゲ属、キリモドキ属、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ