ケラマツツジ 慶良間躑躅
Rhododendron scabrum G. Don
             (1834)
科 名 : ツツジ科 Ericaceae
属 名 : ツツジ属 Rhododendron Linn.
(1753)
原産地 : 沖縄諸島
用 途 : 庭木
備 考 : 江戸時代には沖縄から本土に渡来していた。やや 耐寒性が弱い

ツツジ園には無く、70番通りの メタセコイア林の足元に植えられている。

冬の様子       2015.2.24.
左側に2株。右側のまばらなものが「采咲き種」で、後半で取り上げる。左奥にメタセコイアの木が見える。
前掲写真の少し先に3株。2014年の冬に剪定されたもの。
常緑の低木で、原産地の自然状態では大きくなるそうだが、植物園では 約1.5 m。一見 普通のツツジと変わりがないが、左端に写っている「ハンノウツツジの品種」と較べると、葉が大きくて色が濃いことが判る。

幹の様子        2015.2.24.
ツツジにしては太く、径 約4センチ。

冬の葉 と つぼみ      2015.2.24.

つぼみの状態         2011.4.29.
なりのツツジは満開だが、ケラマツツジは まだつぼみ。

開花間近のものも     2011.4.29..
花と葉は 同時に出てくる。新芽・若枝・萼などには毛がある。

花         2013.4.28.
花は赤く大きく 見栄えがする。ヒラドツツジとしてポピュラーな園芸種「オオムラサキ」の片親となっているそうだ。


ケラマツツジ 采咲き種

「サイ」は 昔 鷹匠が合図に使った道具といわれ、戦国時代の「采」「采配」(右図)と同じような物だと考えられる。
図はWikipedia より

「サイ咲き」「采咲き」(さいざき)は、細長く変化した花弁を 采配の「房」に見立てたもので、「紙垂」「四手」(しで)と同じである。

隣り合わせの采咲き種    2015.2.24.
本家よりも背が低く、葉の色がさえない。

咲き始めから全開まで    2011.4.29.

へら型の花弁       2011.4.29.
珍しいので栽培されるが、色もうすめで見栄えはしない。


 
ケラマツツジ の 位 置
F 13 d 70番通り メタセコイアの足元

名前の由来 ケラマツツジ Rhododendron scabrum

ケラマツツジ 慶良間躑躅 :
『園芸植物大事典/小学館』にも GRIN にも、原産地は沖縄地方としか書かれていないが、慶良間諸島で採取されたためと考えるのが穏当だろう。


種小名 scabrum
scabridus には「粗い、ざざらした」という意味がある。ケラマツツジの革質の葉を表したものか?

命名者はスコットランドの植物学者 George Don (1798- 1856)で、1834年に自著である『A General History of the Dichlamydeous Plants』第3巻に記載した。
その846ページを見てみると、葉の記述として「下面はうねりがあり、」という表現がある (次の文の緑のアンダーライン)。
BHL「Biodinersity Heritage Library」より
最後の行にある英語名も scabrous Rhododemdron となっているので「ザラザラ躑躅」の意味であることは間違いない。
なお、本のタイトル Dichlamydeous Plants は「2輪性の植物」 で、本種の文中にも usually twin とあるが、ケラマツツジはひとつの花序に 2~4個の花が付き、3個以上のことが多い。

Ericaceae :
ツツジ科の基準となる属が Erica属で、科名は Ericaceae である。
erica の由来は、ギリシア語の ereiko 破る ということだが、ツツジ類で「破る、破れる」といえば、果実だろうか?
なお、中国のツツジ科は 杜鵑花科である。「杜鵑 du juan」 はホトトギスで、5月頃「ホトトギスが鳴くころに咲く花」の意味。



植物の分類 : APG II 分類による ケラマツツジ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所  ツツジ目  キリラ科、ツツジ科、リョウブ科、イチヤクソウ科、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、カキノキ科、ツツジ科、エゴノキ科、など
ツツジ科  ホツツジ属、エリカ属、ネジキ属、アセビ属、ツツジ属、など多数
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ